第5話 魔族の討伐

 三人は魔族の討伐のために町へ向かっていった。

 移動に役に立つと王様から言われ、今は馬車の中に乗っている。

「そういえば町の名前って何?」

「町の名前はミナールです。 私の名前もその町の名前から取ったそうです」

「そうか〜。 デイグ、他聞くことある?」

「魔族の規模はどれくらいだ」

「規模的には三十から四十体は調査部隊によって判明されてますね」

 ミナは王から渡されたメモを見ながら答える。

「調査部隊もよく調べたね。 人質とかはいるの?」

「……いません」

「そうか。 なら手っ取り早く済ませるか」

 ウェルが言った後、馬車の揺れが収まり、三人は外を見るために馬車から降りた。

「どうしたの?」

 ミナは馬車の運転手に聞く。

「馬がこの先へ行くのを嫌がっているみたいなんですよ。 すみませんが、ここからは徒歩で向かっていただけますか?」

 馬はこの先には行きたくないとその場で足踏みをしている。

 足踏みをして、逃げ出したい気持ちで一杯なのか、その場で暴れまわっている。

 手綱が無ければ馬はきっと逃げていたであろう。

 その馬の様子を見て、ミナは「分かった」と頷く。

 頷いた後、金を払い、馬車は来た道へ引き返して行った。

 三人は徒歩でミナールの町へ向かった。

 

 徒歩でミナールへ向かって、ミナールの町が見え始めた頃に空から何かが飛んでくる。

 三人は身構えて前を見る。

 その何かは三人の前に止まる。

 目の前にいるのは黒い翼が生えており、口から牙がはみ出て、ヨダレを垂らしている。

 外見は意外と小さく、ミナの腰ほどの体長しかない。

 しかし、禍々しい雰囲気を纏っており、人間ではないのは明らかだった。

「人間だ! 人間だ! ここからは魔族の住処なんだぞ〜。 どうしても通りたいのならば僕を倒して--」

「黙れ。 小悪魔が」

 デイグがそう言って、銃を構えて躊躇なく引き金を引く。

 小悪魔は頭を撃ち抜かれて、頭に風穴ができる。

 小悪魔はそのまま仰向けに倒れて行き、二度と目覚めることが無かった。

「じゃあ、通るか」

 デイグは銃をしまい、そのまま前進する。

「容赦ないね〜。 まぁ、行きますか」

 三人は何事も無かったかのように町へ進んだ。



 町に着くと、おびただしい廃墟が立ち並んでおり、人の住む気配は全く無かった。

 代わりに上空で先程と同じ翼を持った小悪魔が上空を警戒している。

 三人は町から少し離れた所の場所から町の様子を見ている。

「どうやって通るの? 数が多いのだけど」

 ミナは不安そうな声を出し、二人に聞く。

「そんなの決まってるじゃないか。 正面突破だよ」

 ウェルが答える。

「そうだな。 この数ならまだいけるな」

 デイグは笑みを浮かべながらウェルに言う。

 数が多いのに正面突破! たった二人で! そんなの無理に決まってる。

 そう、ミナはそう、口を挟もうとした。

 しかし、二人は行く気は満々なようだ。

 ウェルは剣を構え、デイグは銃を手に持ち、今すぐに行ってもおかしくないような格好になっている。

「ミナはここで待ってて。 すぐ終わらせてあげるから」

 ウェルはニッコリ笑いながら言うと、ミナは頷いた。

 いや、頷くしか無かったのだ。

 ミナが死ぬと報告が出来なくなる。

 そうなって国が滅びる事になったら大変な事なのだ。

「絶対に生き延びてくださいね」

「生き延びるだけじゃない。 成功を取るんだ」

「そうだな。 じゃあ行くか」

 行く前にウェルはバッグの中から双眼鏡をミナに渡した。

「これなら何があるか見やすい方がいいでしょ」

「ありがとう」

「今から討伐に行ってくる〜」

 ウェルとデイグが町へ進み、ミナから遠く離れて行く。

 ミナは心配そうに二人を見送った。


 二人はミナールの町に着くと、魔族達が揃い踏みで町から出て来た。

「人間が来るとはねぇ。 しっかり歓迎してやらないとな」

「ありゃりゃ。 大歓迎されてますよ、デイグさん。 どうします」

「どうするったって、正面から突撃だ。 これしか無いからな」

 ウェルとデイグの言葉に魔族達が高らかに笑う。

「俺達を倒すのか? たった二人で? 笑いが止まらねぇぜ。 人間が調子にのるなよ」

 魔族達が一斉に襲いかかって来る。

 ウェルは剣を薙ぎ払うかのように剣を振った。

 剣の先から衝撃が走る。 それはまるで暴風ともいえる風の強さ。 魔族達はその暴風の衝撃に呑まれて吹き飛ばされていく。

「じゃあ始めよう」

 ウェルはニヤリと笑い、剣を縦に振り下ろす。

 振り下ろすと同時に強風が巻き起こる。

 風は地面を抉り、衝撃波が一匹の魔族を襲う。

 そいつは逃げようとするが、足がすくんで動けない。

「うわぁぁぁ!!」

 恐怖に怯える声は風の衝撃と共に八つ裂きになり消え去っていく。

「まず一つ」

 ウェルは冷静に物を数えるように呟く。

 八つ裂きにされた仲間を見て、目を血走らせ、牙を剥き出し、魔族は怒りを表し、ウェルに襲いかかる。

 ウェルは襲いかかる魔族に対して、剣を構えている。

 ウェルはそのまま剣を薙ぎ払い、魔族達の体を裂いていった。

 一度に複数の魔族の体から血が噴き出る。

 ウェルはその血を浴びて、着ている服が赤く染まる。

 その様子を見て、魔族は動きを止めた。

 この動きは並の冒険者では無い。

 ウェルの動きを見て魔族達は確信したのである。

 こいつはヤバイ奴だと。

 一匹の魔族はその赤く染まった者を見て恐怖を感じ取ったのか後退りをする。

 その後退りをした瞬間、張り詰めた空気を爆発させるかのように一発の銃声が鳴り響いた。

 後退りをした魔族はそのまま倒れこんだ。

 起き上がろうとする気配もなく、倒れた頭には穴が空いている。

 デイグは銃を構えており、

「逃げることは認めない。 俺達を倒すか、ここで死ぬかの選択しか与えないぞ」

 デイグは銃を残りの一匹の魔族に向ける。

 魔族は仲間を失い、今、この場に残っているのは一匹だけである。

 恐怖で顔が歪んでいく。

 目の前に立っている二人には勝てない、そう脳が命令している。

 しかし、逃げることも許されない。

 魔族は顔を歪ませながらウェルとデイグに向かって走った。

「それでいい」

 デイグはそう呟くと、魔族に向かって発砲した。

 銃弾は光となり、魔族の頭を撃ち貫く。

 魔族は頭は穴ができ、そのまま倒れ込んだ。

 ウェルとデイグは武器をしまう。

 周辺に転がっているのは魔族の死体だけであった。

「じゃあ、進もうか。 デイグ」

「ああ」

「魔族を全滅させようか」

 ウェルは悪魔のような笑みを浮かべながら話す。

 二人はミナールの町へ入り込んで行った。

 


 

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