第3話 新たな仲間
ウェルは武器を購入し、次の目的地へ進んで行く。
ミナもその後を付いて行き、彼の言っていた目的地へと向かって行った。
ウェルは足を止め、ミナを見てからこう言った。
「着いたぞ」
「着いたぞって? ここが?」
ここはどこからどう見ても普通の食堂屋にしか見えなかった。
しかも、看板には今でもやっていますよと自己主張するように営業中と張り出されていた。
ミナは酒場でまさに強そうな奴が出て来るんじゃと思っていたから少し拍子抜けした。
「ここにその仲間がいるの? とてもいそうに見えないのだけど」
「入ったら分かるよ。 さぁ入ろう」
二人は店の中に入っていく。
店の中は綺麗で木目のテーブルや椅子が並べられており、自然と一体化しているような雰囲気を醸し出している。
ウェルは入口に入ってすぐに、
「すみませ〜ん」
店員を呼んだのだ。
「は〜い」
返事が返ってきて、店員が二人の前に姿を見せる。
その姿を見るなり、ミナは驚く。
その店員はエプロンを着けており、エプロン越しからでも分かる位の筋肉が見えていた。 更に顔に傷が入っており、目の前に立っているのが店員ではなく、歴戦の戦士に見えてしまう程であった。
「いらっしゃいませ〜」
店員はミナの驚く顔を気付かず、笑顔で接客をする。 その笑顔は全く似合っておらず、少し怖さがあるくらいだ。
「わ〜。 似合ってない笑顔〜」
ウェルはその店員の笑顔にケラケラ笑いながら答える。
「ちょっと!」
ミナは慌ててウェルの口を手で塞いだが、今言ったことは丸々店員に聞こえている。
「ふゃっへ〜。ひはっへはいんはほの」
ミナがウェルの口を手で塞いであるにも関わらず、そんなの関係無いと言わんばかりにウェルは手で塞がれたまま言う。
「す、すみません!」
ミナは店員に頭を下げる。
「いいですよ。 よく言われますから。 ウェルからね」
「あれ……お知り合いの方ですか?」
「ウェルはここの常連でもあるからな。 ここに来るって事は何か話があると言う事だろう?」
ウェルはミナの手を払いのけ、
「その通りだ。 だけど、その前に飯食わして。 話はその後でするからさ」
「分かった。 じゃあ、今日は店を閉めるか。 また変な事になりそうだしな」
「へへ。 よろしく」
二人は料理を待ち、椅子に座って待っていた。
すると、すぐに料理が持って来られた。
パスタを三人前で持ってきてたのだ。
「俺、頼んだの二人前じゃなかったか?」
「話を聞くなら一緒に食べながら聞いたほうがいいだろう。 料金はお前持ちな」
「しょうがないな」
ウェルはミナを見て、あっと思い出すような仕草をした。
「ミナ。 こいつの名前はデイグと言うんだ」
「ミナです。 よろしくお願いします」
「よろしくな。 デイグと気軽に呼んでくれればいいからな」
「はい。 ありがとうございます」
ウェルは紹介が終わると同時にパスタに手を付ける。
デイグが開口一番に言葉を発する。
「で、話ってのは何だ?」
「まぁ、その事についてはミナが話すよ」
「私の故郷が今、魔族に支配されているの。 その魔族がこの王国に攻め込むかもしれないの。 そこで、魔族がこの王国に来る前にその町へ行って魔族を全滅させて欲しいの」
「ふむ。 ま、簡単に言うと魔族の討伐だな。 だけど、それは王国でも募集をかけていただろう? 俺も依頼書は一応見たし」
「それは……そうですけど」
デイグの返答にミナは声の力が弱まっていく。
「まぁ、出てあげなよ『鬼』さん」
「『鬼』さん?」
ミナは聞きなれない言葉に首を傾げる。
「こいつはな、数年前の魔族との戦争で『鬼』と呼ばれていたんだ。 こいつの腕がやばすぎてな」
デイグは自分の話をされて顔を赤くしている。
「昔の話だろ。 それにお前も戦争に中心人物として参加してたじゃないか。 忘れたとは言わせんぞ」
「そりゃあ、忘れないさ。 あの魔王の言葉もな……」
ミナはキョトンとしている。
そして、ある疑問が浮かんだのだ。
「あの、一つ聞いていいですか?」
「何だい?」
ウェルは笑顔で答える。
「二人共、魔族との戦争に参加していたんですか!?」
「そうだよ」
「ウェルなんか、魔王を倒したとかで勇者とか言われてたな」
「そういえばそうだっけ?」
「自覚は無しか。 ま、そうでないと呑気に道具屋なんかやってないわな」
二人の会話にミナは椅子から勢いよく立ち上がった。
口をパクパクさせながら指を指し、
「魔族との戦争に参加していた! しかも魔王を倒したって!!」
ミナはあまりの出来事にその言葉を発した後、体が固まっている。
「話してなかったのか?」
ミナの驚き方を見て、デイグはウェルに話しかけた。
「話さなくてもいいかなって思ってた」
ウェルは呑気な言葉をデイグに返し、パスタに手を付ける。
デイグはその対応に呆れている。
「ミナ。 いつまでも立ってないでとりあえず飯を食おう。 早く食わないと冷めちまうぞ」
デイグはミナに話しかけ、ミナは口を開けたまま椅子に再び座る。
ミナはパスタに手を付け、口に入れる。
「美味しい」
あまりの美味しさにミナは口をもらす。
「だろ。 デイグの料理は美味いんだよな。 単体の味を引き出して、それを綺麗に調合させる、まさに料理の調合師だな」
「褒め言葉ありがとよ」
三人はそのまま食事を進め、三人はパスタを平らげる。
「ん〜。 食った食った」
ウェルは満足な顔と共に、声を出す。
「じゃあ、話の本題に入りますね」
「ああ」
ミナの言葉にデイグが頷く。
「さっきも言った通り、魔族が攻めてくるかもしれないので、討伐に参加して欲しいのです。 お願いします」
「それはさっきも言った通り、王国でも募集はかけていたのだろう? 何故わざわざここへ訪ねたのだ?」
「それは……実戦経験を積んでいる者が少ないからなんです。 募集をかけたは良かったのですけど、剣などをろくに扱えない人ばかりが集まって戦力的に問題がありまして……」
「なるほど……。 即戦力になる人が欲しいってわけか。 しかしだな、俺も今は武器を持っていない丸腰の状態だしな。 武器は戦争の時に壊れちまったし。 武器があれば話は別なんだがな」
「武器なら王国の方に頼んですぐに用意させます。 だから」
「いや。 俺が使う武器は剣とか槍とかじゃないんだ」
デイグは握り拳から人差し指と親指を立て、どんな物か分かりやすい様にミナに手を見せる。
「俺の使ってた武器は銃なんだ。 この王国ではあまり出回って無いみたいでな。 使う人物がそれだけ少ないということだろう。 その武器じゃ無いと手に馴染まないんだ」
「あるぜ。 ここにな」
ウェルは先程買った銃をデイグに見せ付け、デイグに渡す。
「準備がいいな」
「丁度、武器屋に行ったら見つけてな。 これならいけるだろ?」
「まぁ、いけるな」
「討伐に出てくれるんですね!」
「そうだな。 これだけ準備してくれたのだからな。 その討伐参加するか」
「ありがとうございます!」
ミナはデイグに頭を下げる。
「いいよいいよ。 では城へ向かうか。 ウェル、お前も来るだろ?」
「ああ、もちろんだ」
三人は席を立ち、店を出た。
「さぁ、城へ向かおう!」
ウェルの気合の入れた声と共に三人は城へ向かった。
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