第7話 俺、バレる
ゴリマッチョが連れていかれてすぐ、救護室から一人の人間がやってきた。
「あの、担架を持ってくるようにと言われたんですけど……」
残念ながら担架が必要だった人間はもう連れていかれてしまった。
「ああ、もう大丈夫だ」
おれが答える前に妙に渋い声をしたゴリマッチョが答えた。
人が近くに集まっている上にほとんどがゴリマッチョなこともあり、熱気がすごい。
「いや、でもそこの人顔赤いですよ?」
ゴリマッチョではない救護室から来た人、白衣も来てるし救護員さんとでも呼ぼうか、が俺を指さしそういった。
いや、大丈夫だよ?
熱気がすごすぎてちょっと熱くなってきただけだよ?
赤くなってるっとしてもほのかに赤くなってるだけだろうし大丈夫大丈夫。
「ん!? こりゃ大変だ! 熱か!?」
「え!? 熱!?」
「うわ! 確かに赤い! 連れてけ連れてけ!」
「おいおい大丈夫か!?」
寄るな寄るな!
余計熱くなるわ!
それとこれだけで騒ぎすぎだろ!?
何!?
ここの施設の人間は病気と無縁すぎてちょっとでも赤くなっただけでも騒いじゃうの!?
「みなさん! 一回下がって!」
その言葉を聞いた瞬間、男たちは『ザッ』という音が聞こえるほど一斉に下がった。
あんたら息ぴったりだな……。
「えーと、熱はないと思いますが一応救護室まで来てください」
救護員さんは簡単に俺の状態を見てそういった。
ちょっと考えれば温度変化のせいと分かると思うんだが、まあ多分この人がすごく真面目なんだろう。
だから一応といっているのだし。
それか……いや、それはないと思おう。
考えても仕方がないことだ。
「ではみなさん。この人のことは私に任せて食事の続きでください。さあ行きましょうか」
救護員さんは俺を簡単に担ぎ、救護室に向かった。
……あの、肩を貸してくれるだけでいいと思うんですけど……担ぐ必要はないですよね?
あと見た目よりも筋肉すごいんですね……。
救護員さんは
「えーと、コーヒーでも飲みますか?」
「あ、お願いします」
救護室の椅子に座り、俺はボーっと周りを眺める。
救護室は地下施設の中で一番といっていいほど超科学的、または超魔法的な部屋だ。
どうやっているかわわからないが、ここで治療を受ければ死んでさえいなければどんな病気も治ってしまう。
しかもそれらも全自動だ。
超科学的だった場合は謎のカプセルに入ればすべて治り、超魔法的だった場合は魔方陣の上に乗ればすべて治る。
そのため地下施設の救護室といえばカプセルがズラーっと並んでいるか大きな魔方陣が描いてあるだけの部屋となっている。
そのことを考えるとこの施設の救護室は変わっている。
超科学的なカプセルはあるが、それ以外にもいろいろな薬品が棚に並び、机や椅子、ベットに冷蔵庫が置かれている。
なんというか学校の保健室を思い出す。
白衣で動き回る助川さんがより保健室っぽさを醸し出している。
あの動きを見る限り、助川さんはここによく来る、またはここをこうした張本人なんだろう。
何か理由があるのかとは思うが、まあどうでもいいことなんだが。
「お待たせしました。砂糖はいくついりますか?」
助川さんがコーヒーのいいにおいを漂わせ近づいてきた。
「あっいらないです」
俺はコーヒーを受け取り、口を付ける。
俺はコーヒーの銘柄とかはわからないが、この苦みが前面に押し出してくる感じ、嫌いじゃない。
俺がコーヒーに舌鼓を打っていると助川さんが話しかけてきた。
「ここの施設の人間がすいません。驚かれたでしょう?」
……なるほど。
どうやら真面目だからここに呼んだわけではないらしい。
顔の赤さを指摘したのはどうやら俺が目的のようだ。
果たしてどこでバレたのだか。
「……まあそうですね」
俺はすぐに肯定し、警戒心を高める。
こうやって接触してきたということは敵対しようと思っているわけではないだろう。
だが、そんなことは関係ない。
敵対しようとしなかろうと俺の不都合になりうるのだったらこれから先絶対に逆らえないようするだけだ。
「ただ皆さん、なんというか、その、女の人より男っていう人ばかりで……」
あまりそういうことを言う耐性がないのか顔を真っ赤にさせながら言う助川さん。
……なんというか何人かに狙われてそうだなこの人。
「ただ無理やりはないので安心してください!」
無理やりはなくとも強引にはきたぞ?
かわいそうな結末をたどったが。
「あー、とそういう話は何となく理解してるんで本題をお願いします」
俺は顔を真っ赤にしながら男同士のあれこれを説明しようとする助川さんを止め、本題を促した。
「あ、はい。あのーなんというか、これも言いにくいことなんですが……」
煮え切らないなぁ。
本題がそれほど大変なのか、それとも真面目そうなこの人のことだから悪いことなのか、それとも俺に頼むのが忍びないのか、それはわからないが、まあでも……時間の問題か。
助川さんの態度は煮え切らないし、口にも出せてない。
でも目が、心が本気だと言っている。
だったらすぐだ。
助川さんは一度大きく息を吸うと、
「重要施設のカギを盗ってきてもらえないでしょうか?」
一息でそういった。
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