第6話 作戦開始!
「作戦会議は終わったか?」
俺が避けていると怪物は急に攻撃の手を止め、そんなことを言ってきた。
なぜかは知らないが、どうやら桜とやり取りをしていることがバレていたらしい。
「おかげさまで」
俺は距離を取りながら答えた。
「なるほど。じゃあもう手加減はいいみたいだな……行くぞ!」
そして、戦闘が再開した。
なるほど、怪物の言う通りさっきまでは手加減していたらしい。
スピードもパワーも段違いだ。
でも、それは俺だって同じことだ。
怪物の大振りな一撃を避けつつ蹴りを入れる。
「お前もやっと本気ってわけか! いいねぇ! 燃えるねぇ!」
怪物はそんなことをいいつつしゃがんで避け、俺はそれを見越してかかと落としをするが読まれていたのか怪物は俺の足を払ってきた、しかし、俺はかかと落としを中断し、後ろに飛びのく。
さっきまで俺はテレパシーに集中するためにただただ避けていた。
だが、テレパシーに集中する必要のない今は違う。
すべてを戦いに集中できる。
今度は俺から仕掛ける。
助走を使った跳び蹴りを右に避けられ、俺は腰をひねり、左腕で殴る。
「……ああ、なるほど。その腕輪のか……」
どうやら怪物は何かに気付いたようだ。
が、そんなことはどうでもいい。
俺はそのまま左手で怪物の腕を掴み、引っ張って顎に向けて掌底、しかし、相手がうまく崩れなかったのか怪物からの膝蹴りが来た。しかし、俺はそれを避け、怪物を仰向けに倒し、顔面に一撃入れて離脱した。
「お前のそれはグレートの腕輪だな? そう言えばさっき教えてくれとか言ってたな。いいぜ?教えてやるよ」
しかし、怪物にはダメージが与えられなかったのかそのまま立ち上がった。
「その腕輪にはな? とある力を吸収する能力がある。グレートと戦うとき俺が苦しめられた能力だ」
そう言うと怪物は笑いだした。
「でも……くくくく、そうか……ふ、ふははは……そうかそうか……そうなると……あははははははは!! お前! 分かってるのか!? ただの人間がそれを扱うことのリスクを!」
「さあな! どうでもいいことだ!」
そう答えると怪物は楽しそうに突撃してきた。
俺は怪物の右上段突きを受け止め、顔面に向かって突きを見舞う、しかし、それは受けとめられた。
「その力はな! ヒーローだから扱えるんだよ! でも、でもだ! ただ使えるだけで変身もできないお前が使ったってヒーローにはなれない! じゃあどうなると思う? それはな……俺たちになるんだよ!」
怪物は楽しそうに愉しそうにたのしそうに笑う。
「ぐ……ぅ……」
こいつ……なんて力だ!
「ヒーローと俺たちの力はおんなじもんだ。ただ適合し、体にまとうこと、つまり変身できたものがヒーローになり、適合できず、無理やり体に押し込んだものが怪物になる。お前のそれは俺たちを作る工程と同じだ! お前はそれを使えば使うほど俺たちになるんだよ!」
こいつの言っていることが正しいのなら、結界を腕輪にいれたときにいつもみたいに腕輪の中に入らず、なぜか結界に使われていたエネルギーが俺の体に『吸収』されたってことだろう。
そういえば腕輪の中を片付けるときに遺品として入れていたヒーロー武器がなくなっていたのも俺の体に吸収されたからなのかもしれない。
地上で生活するようになってから身体能力とか回復能力とかが明らかに上がっていたのもそれのせいか?
俺の体はもう人間のそれではないってことか?
なるほど。
それならいろいろと説明はつく。
でも……。
「さっきも言ったが、どうでもいいんだよ!」
俺はわざと力を抜き、頭突きを食らわせる。
「がっ!」
ひるんだところを連続で攻撃していく。
「ヒーローと怪物の力からは同じ?」
腹を殴り、そのままアッパーを顎にいれ、
「俺が怪物になるだって?」
胸にひじ打ちを入れ、裏拳をぶち込む。
「何度も言うが! どうでもいいんだよ!」
そして、足を踏み、
「俺はヒーローなんてどうでもいい!」
殴る!
「ヒーローになりたいわけじゃない!」
殴る殴る殴る!
「俺が俺ならそれでいいんだよ!」
まだだ! まだ足りない!
「生きていけるなら、それでいいんだよ!」
くそっ! まだダメか!? まだ使わないのか!? どうする!? どうすれば……。
『ヒーローと俺たちの力は一緒だ!』
……ああ、なるほど。そうすればいいのか。
「……お前、案外抜けてるんだな?」
「何?」
俺はラッシュを止め、怪物の腕を掴む。
「お前の力、もらうぜ?」
『入れ!』
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