第5話 私たちの作戦会議
「よ、無事か?」
私の背後には怪物を殴り飛ばしたゆっきーさんがいた。
「……なんで……なんで!」
何でここにいるのか、なんで来てしまったのか、なんで逃げなかったのか、なんで怪物を飛ばせたのか、なんで結界の中にいるのか、いろいろなんでが私の中を駆け巡る。
「あー、何に対してのなんでかわかんねぇけど、とりあえず、俺はお前に説教しに来たんだよ」
「え?」
いったいこの状況でこの人はなにをいっているのだろうか?
バカなんだろうか?
「といってもまあ、全部あとだな。あいつをどうにかしないと」
そういってゆっきーさんは怪物が飛んでいった先を指さした。
「おい、お前。ありゃいったいどういうことだ?」
やはり無傷。
すごい勢いで飛ばされた上に完全に不意打ちだったのに無傷。
空間魔法を使うといっていたが、そんなものがなくてもこの堅さは脅威だ。
「さあ? 何のことだ?」
「おいおい、とぼけるんじゃねぇよ。お前、俺を殴り飛ばしたじゃねぇか」
「ああ、それか。実は俺にもよくわかってないんだよ。できればどうしてできたのか教えてほしいもんだね」
ゆっきーさんはおどけたように言った。
地上に出てすぐにこの怪物と出会ったときとは違い、ゆっきーさんには余裕がある。
よほどその力に自信があるのだろうか?
「まあいい。俺は強いやつと戦えればそれでいいんだ。その点、今のお前は合格だ。やっと俺と戦えるぜ?」
「そうかい」
そういうとゆっきーさんは腰を落とし、構える。
それと同時に私に目配せをし、頭を数回トントンと叩いた。
どういうことだろうか?
「準備は出来たか?」
その言葉にハッとする。
怪物にばれないようにすぐゆっきーさんとつなぐ。
――準備完了です!
「はっ! 準備なんて必要ねぇよ!」
私の音と怪物の声が重なった。
怪物はゆっきーさんの襲い掛かる。
――おいおい、どういうことだ? なんでお前の声が聞こえるんだよ。
ゆっきーさんはそんなふうに返しながら怪物の一撃を紙一重で避ける。
――今の私は変身している状態なので送ることもできるんですよ。
――あーなるほど。
ゆっきーさんは私に返答しながら、怪物の動きを読み避け続ける。
改めてこの人のでたらめさを認識させられた。
なぜパワーアップしているかはわからないがでもそれは身体能力と怪物への攻撃が可能になっているだけだ。
それなのに私に返答しながら怪物の動きを何通りも予測して避け続けている。
これは途方もない情報量と頭の回転の速さを持った、どんな魔法でも再現できない、いやリスクがでかすぎて誰も再現しない能力だ。
言ってしまえば超思考能力だろうか。
――俺の作戦を送りつけるだけのはずだったが、これならお前にもいろいろ聞けるな。
ゆっきーさんは怪物の攻撃を避けながら、
――じゃあ作戦会議を始めようか。
そう宣言した。
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