第3話 俺たち、掃除をする ③
そして、掃除を始めてから約五時間。
「うし! 終わり」
「結構かかりましたね」
ゴミや食糧たちであふれていて、かろうじて足の踏み場があるというような状態だった腕輪の中は綺麗に片付き、真っ白なフローリングが顔を出していた。
うん、いい仕事したな。
一階はきれいになった。
ついでに二階はというと、使わないものやゴミを部屋に適当に押し込んだので大変なことになっている。
まさに魔窟と呼ぶにふさわしい空間となってしまったが、まあ良しとしよう。
収納がないのだから仕方がないのだ。
「ゆっきーさんがゴミとか使わないものとかを残しておかなければここまで大変なことにはなってなかったんですけどね」
「いや、中に入れるようになるとは思わなかったから何も考えてなかったんだよ。しょうがないだろ?」
前までは定期的にゴミを捨てていたが、最近は施設に長くいることもなかったからたまっていたのだ。
食糧が長い間保管できることを考えて缶詰ばかりだったのもゴミが多かった原因だろう。
次の施設に行った時はこっそりと捨てておくとしよう。
「……さて、これからどうしましょう?」
「どうっていわれてもな……」
正直、片付け終わったからこの中でやることはないな。
「俺としては外に出て周辺の怪物の動きの最終確認でもしたいんだが……」
「最終ってことはそれが終われば……」
「ああ、次の施設に行くつもりだ」
「ようやくですか」
ようやくって一週間ぐらいしか地上にいなかったんだがな。
長いときは一ヵ月も二か月も地上にいるから今回は短いほうなのだが……まあ今言ってもしょうがないことか。
「お前は何してるんだ?」
「何しましょうかね? 地上ではちゃんと眠れなかったのっでぐっすり寝るのもいいですし、新しい魔法を考えるのもいいですし……」
眠れなかったって嘘だろ?
しっかりいびきをかいて寝てたじゃないか。
「それならさ、使える魔法のリストアップとかしてくれるとありがたいんだが……」
俺は髪とペンを用意してそういった。
この中に入る前にやったテレパシーみたいに変身しなくてもできることを知っておくことは生きる上で必要なことだ。
「もしかして興味あるんですか!?」
うわぁ急にテンション上がったなぁ……目をキラキラさせやがって。
「ああ、それに知っておいたほうが後で使えるかもしれないしな」
「任せてください!」
うわぁ……楽しそうだな。
俺ちょっと引いてるんだが気づいているか? 気づいてないんだろうなぁ……
「じゃあそこらへんに紙とペンあるから書いといてくれ」
「はい!」
桜は紙とペンをとると勢いよく書き始めた。
「あ、そういえば」
片づけ中に桜に渡そうと思ってポケットに入れておいたやつがあったな。
確かポケットに入れていたはず……あったあった。
「おい、書いてるところ悪いがちょっといいか?」
「……」
んー、やっぱり気づかないか。
分かりやすいところに書置きと一緒に置いとくか。
「と、これでいいか。さて」
外に行きますかね。
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