第3話 俺たち、掃除をする
「うわぁ……」
そうつぶやいたのは俺か桜か、俺たちは腕輪の中の惨状につい声が漏れる。
そこは簡単に言うとゴミ屋敷だった。
玄関入ってすぐの廊下にはゴミや食料が錯乱しており、かろうじて足の踏み場がある状態だった。
ここがこうなら他の部屋の中も推して知るべしである。
「なんでこうなってんの?」
俺は目を疑い、近くにあった食糧を手に取る。
……うん、缶詰だし大丈夫かな……ちょっといやだけど……。
「たぶん今まで何もなかった空間、それこそ重力とかもなかった空間に無理やりゆっきーさんのイメージを固定させたので、中に入ってたものがこう、なんといいますか……」
桜も目を疑い、説明に困っている。
「いや、まあ、なんとなくわかった。たぶん、今までは適当に宙に浮いてたけど、重力すらない空間が重力のあるこの家になったからそのまま床に落ちたってことか?」
いや、やっぱりよくわからないな。
「まあとりあえず、これからやることは決まりましたね」
桜は少しいやそうな感じでいい、
「ああ、片付けだな」
俺もいやそうな感じで返した。
これを全部片付けるのに果たしてどれくらいかかることか……はぁ……。
「……ん? そういえば家具とかなくないか?」
俺は下に落ちているものから目を離し、周りを見て思ったことを口に出した。
確か玄関には靴箱があったはずなんだが……。
「そんなのないですよ。何もない空間にゆっきーさんの間取りのイメージを無理やりくっつけただけですからね」
そうか、間取りだけなのか……だからもともとはクリーム色だった壁紙や木のフローリングも真っ白なんだな。
「じゃあ箪笥とかもないよな?」
「ないでしょうね」
……だとしたら、棚や洗濯機、机や椅子、その他もろもろ何もないんだろうな……。
「……これ、どこに片付ける?」
「……とりあえず食糧は食糧、衣類は衣類というようにまとめておきましょうか」
「……そうだな」
俺はこれから始まる掃除に思いをはせつつ、次の施設についたら家具をかっぱらうことを決定した。
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