第1話 俺、腕輪の説明をする ③


「ゆっきーさんゆっきーさん!」


 俺は肩を叩かれ目を覚ました。


「ん? あれ……」


 どうやら寝ていたらしい。


 近くに怪物がいないとはいえ気を抜きすぎだな。


「おはようございます!」


「おお、おはよう……」


 桜のにこやかな顔が目の前に広がる。


 ……近いんだけど。


「大発見です! うまくいけば野宿なんてしなくてよくなります!」


「え?」


 急に何? どういうこと? あー頭働かねぇ。


「この術式を見て分かったんですけど腕輪の中って一軒家ぐらいの広さがあるみたいなんですよ! それでそれでゆっきーさんが描いてくれた魔方陣をうまく使えば私たちも中に入れるようなんです! ねぇ聞いてますかゆっきーさん! ねぇねぇねぇ!」


 すげー目がキラキラしてる。


こういうのが好きなのか? 魔法の研究とか?


 すごいことなのはわかるが、起き抜けのローテンションだとついていけない。


「それでですね! 間取りをゆっきーさんに考えてもらいたいんですよ! 中はどうしてかゆっきーさんしかいじれないようになっているのでよろしくお願いします!」


 こいつ、よく見るとクマができてるな。


 徹夜したからこのハイテンションってことか。


「わかったから一回寝ろ。それから話を聞いてやる」


「いえ! このままじゃ眠れません!」


 ダメだ。


 ハイテンションすぎてこのままじゃ眠ってくれそうにない。


 ……はあ……『出ろ』。


「これ飲んで寝ろ。そんなに強くない睡眠薬だ。たぶん今の状態ならこれですぐに眠れるはずだ。寝てからじゃないと話は聞かん」


「えー……しょうがないですね……おやすみなさーい」


 はあ、魔法関連だとこうなるのか。


 万が一、またこういうことがあったらちゃんと寝かせるようにしよう。


 と俺は決意し、桜が起きるまでだいたい八時間周辺の監視をしていたのが、今までの少し長い経緯である。


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