第10話 俺、また怒られる


「へ?」


 謝られた?


「あのとき、ゆっきーさんを見て怖がってすいません!」


 何のことだっけ……? なんかあったっけ? んー……あっ。


「……情報管理室のときの話?」


「はい……すぐに謝ろうとしてたんですけど、ゆっきーさんがあんまりしゃべらないので怒っているのかと……」


「……」


 そうか……そういえば俺もしゃべってなかったな。


 自分から話題振るなんてあまりできなくなったしなぁ。


 ……ん? これはもしかして……


「私、前いたところでぼっちだったので、こういうときどうすればいいのかわからなくて……」


「……ふっ」


 同じこと考えてた?


「ふふふふふっ はははははははは!」


 なんだ! 変に考える必要なかったじゃん!


「え? え? なんで笑ってるんですか!?」


 そう言えばそうだ! 急にぎこちなくなったけどさっきまで普通に、いや、それ以上にしゃべってたじゃん!


「いや、何でもない。とりあえず始めようぜ?」


 俺は少し笑いながらそう言った。


「えーと、とりあえず許してもらえるってことですか?」


「いや、そもそも怒ってなかったんだよ」


「へ? そうなんですか?」


「ああ、俺はお前が怒ってるって思ってたんだよ」


 あー笑った笑った。


「え?」


「いや、ほんとなんでだろうな? あーでも、勘違いだと思うと笑っちまうよな?」


 俺は桜に笑いかけ、そのまま固まった。


「……勘違いではないですよ?」


 その言葉でこの場の空気が変わった。


 桜はさっきまでの無表情とは打って変わってにこやかな顔をしていた。


「確かにさっきまでは怒ってなかったですけど、やっと怒れます」


 でも、違う。にこやかなのは顔だけだ……なんだこの迫力は!?


「いや……なんで?」


「部屋でのことです」


 桜が少しづつ近づいてくる。


「部屋?」


 俺は少しづつ後ずさる。


「はい」


 ヤバい! 壁際に追い詰められた!


「正座!」


「はいっ!」


 はっ! ついやってしまった……!


「私は拘束が解けてからいろいろ聞こうと思ってたんですよ? ゆっきーさんが持ってる変身アイテムとかあの光の柱のこととかなんでそんなに強いのかとか」


 静かに笑顔で桜は話す。


「でも、拘束から抜け出したと思ったら、ゆっきーさんと変な黒服の人たちがの戦いが始まり……」


「いや、あれは予想以上にやつらが来るのがはやくて……」


「だまらっしゃい!」


「はい!」


 なにこれ怖い!


 怪物から逃げる恐怖とは違うけどなんか従わないといけないような怖さがある!


「そもそもあんな風に部屋から脱出するなんて聞いてません! 私、急にいろいろ起こりすぎて驚いたんですから!」


「……はい」


 俺はお前の変わりように驚いてるよ?


「そういえばあの小太りのおじさんは? まさか放置……」


 え? あの幹部のおっさんを置いてきたの気付いてなかったの?


 いや、そんなことより……。


「とりあえず! とりあえずわかったから、ね?」


 このままだとお説教が終わりそうになかったので話を変える。


 静まってくださいお願いします!


「とりあえず……?」


 えっ? まだ続くの? 『とりあえず』って言ったのが悪かったの?


 ごめんなさいごめんなさいごめんなさい……


「まあいいです」


 ほっ。


「さ、さあ何が聞きたい? 何でもとは言わないがある程度は答えるぜ?」


 かっこつけて言おうとしたけど声が震えた。


 それに、俺、正座してるんだぜ? かっこつくわけがなかった。


 自分より年下であろう女の子に怒られて正座させられて……はは、泣けてくる……


「じゃあ、なんで……」


 ビー! ビー! ビー! ビー!


 桜の言葉を遮るように耳をつんざくような音が鳴り響いた。


「な、何ですか!?」


「まさか……!」


 俺は素早く立ち上がり走り出す。


「ゆっきーさん!」


「質疑応答は後だ!」


 クソ!


 どう考えても今のは警報だ!


 怪物が来てるってのか!?


 まさか俺たちが入るのが見られてたのか!?


 いや、周りにはいなかったはず……いったいどうなってやがる!?


 最近怪物との遭遇率が高すぎる!


 この前の施設に光の柱と来てこの施設もか!?

 

 ぁぁぁぁああああ! もう最悪だぁ!

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