第6話 俺、あだ名を付ける
「……は?」
……え? 名前……魔法少女……え?
「私の名前は、魔法少女、マジカルチェリーブロッサム、です」
呆然とした俺に対し、今度は俺の顔をしっかり見ながらもう一度名乗った。
どうやら聞き間違いではなかったようだ。
「えーと、魔法少女としての名前……だよな?」
俺は勘違いであってくれと願いながら確認する。
正直、さっきの魔法少女としての名前を言ってはいけないという話よりもこれが本名だとしたらかわいそうだという理由のほうが大きい。
だって、名前に魔法少女ってついてるんだぜ?
「いえ……」
元チビはそういって顔をそらす。
「……本名?」
「……はい」
「それが?」
「……はい」
元チビの反応を見る限り本当にそうらしい。
マジかよ……本当にこうなのかよ……キラキラネームでもこんな名前ないだろ……もしかしてさっきまで考えてたのってこの名前ことか……? だからすごい汗かいてたのか……?
「お前の世界ってだいたいみんなそんな感じ?」
「いえ……」
もう……かわいそうでならない……親はいったい何を考えてこんな名前を付けたというのだろうか?
どんな理由だとしても役所に言って名前を変えることをオススメする。
「……どうする?」
「……どうしましょう?」
「……あだ名とか?」
「それしかないですよね……」
ということで俺たちは元チビのあだ名を考えることになった。
「俺、お前のこと元チビって心の中で呼んでたんだけど……」
「いやです」
ですよね。
俺だってチビとか言われたらキレる自信がある。
それにしても誰かにあだ名を付けるのは久しぶりだ。
それこそこんな世界になる前でもあだ名なんてつけた覚えがない。
俺は足を組んで真剣に考える。
「……まほ子」
「安直すぎです」
そうか安直なのはダメなのか。
「じゃあ、マジー」
「なんかイラッとしました」
安直肌とということで魔法少女、マジカルでマジーって感じで考えたんだがダメか……。
「イタ子」
「イタってどこから持ってきたんですか!」
イタイ子から。
だって名前とか言動とかなんとなくイタくない?
「クロ」
「猫じゃないんですから」
魔法少女って言うか魔女って黒猫連れているイメージだよね。
「ロリババア」
「おい、コラ」
異常なほど鋭い目つきで睨まれた……というか意味わかるの?
「サダコ」
「却下。ホラーじゃないですか」
これも知ってんの? でも少し似てるよ? 顔がよく見えないところとか黒髪ロングとか。
「カヤコ」
「ホラーつながりじゃないですか!」
よくわかるな。いったいどこから情報を仕入れたんだろうか。
「……キャサリン」
「外人じゃないんですから」
そもそも日本人じゃないでしょあなた。
「黒……」
「ノー」
「く……」
「ダメ」
どうやら黒つながりはダメのようだ。
「じゃあ何がいいんだよ!」
俺はもう思いつかなくなり、嫌になってきた。
「いえ、特には」
「この貧乳が!」
俺は椅子から降り、床を殴りつけ、床に向かって叫んだ。
特にないなら何でもいいじゃないか!
「誰がひんにゅ……う? ん? え? いつの間に抜け出したんですか!?」
元チビは怒りの顔から一転、驚きの顔になった。
「結構前だけど?」
名前を考えているときには抜け出してたんだが、気付いてなかったのか。
頭かいたり、足組んだりしてたんだがな。
「じゃあ私も助けてくださいよ!」
「出来るけど名前が先な? あと数分で決まらなかったら置いていくけど」
「え!?」
もう名前考えるの面倒くさくなってきた。
まぁ置いていくってのは嘘だけどこれぐらい言えばなんか出してくれるだろう。
そもそもね?
ベットに縛り付けられてる女の子を助け出すのって男としては大変なんですよ?
なんというか、こう……ね?
分かるでしょ?
「別に連れていくメリットないしな。ヒーローってバレなければここで普通に暮らせるんじゃないか?」
いままでひどい扱いを受けたので、ちょっとした意趣返しってことで冗談ぐらいはいいと思うんですよ。
「でもバレたら大変なことになるんですよね!?」
そうだね。
「えーと、じゃあ……桜! 桜でお願いします!」
「安直だな」
安直はダメだってお前が言ったんじゃないか。
自分発信はいいのか。
「いいじゃないですか!」
そうですか。
さて、そろそろ誰か来そうだし、ここから抜け出しますか!
「それより早く外してください! ゆっきーさん!」
おう!?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます