第5話 俺、自己紹介を促す


「さて、次はお前の番だ」


 あれから数分たち、元チビの五七五への気持ちも収まったので元チビに自己紹介を促す。


「やるのはいいんですけど私は絶対あのテンションじゃやりませんよ」


 元チビの顔には確固たる意志を感じる。


 でも忘れられてそうですが、彼女は今ベットに縛り付けられています。


「うん、いいよ。ホント、いいよいいよ。俺だけが傷ついただけだし、うん。いやー本当に大変だった。でも、うん。大丈夫大丈夫」


 そういった後、チラッ、と元チビの顔を見る。


「いや、やりたくないならいいし、強制ってわけでもないし……」


 もう一度、チラッ、と見る。


「いやーでもやってくれるって言うなら「やりませんよ」」


 元チビは俺の言葉を遮った。


「でもそんなこといっとい「言っときますけど振りじゃないですよ?」」


 また遮られた。


「……じゃあフツーに自己紹介お願いします」


 ちっ、やんないのかよ……やったっていいじゃないかよ……一緒に心の傷を分かち合おうぜ?


「なんで少しふてくされてるんですか。そんなにテンション高い私が見たいんですか?」


「俺と同じように滑ってるお前が見たいんだよ!」


「最低ですね」


 蔑んだ目で見られた。


 一部の人間にはご褒美でも一般人の俺は限界です。


「……」


 俺は何も言えず、目をそらした。


「はあ……フツーに、あくまでもフツーに自己紹介しますね」


 元チビは念を押し、自己紹介を……


「…………なんか改めて言おうとすると少し恥ずかしいですね……」


 始めなかった。


「早くしろよ」


 そんな状態で恥ずかしがってんじゃないよ。


 今以上に恥ずかしいことなんてそうそうないよ。たぶん。


「……わかってますよ」


 元チビは意を決して自己紹介を始め……


「……私は愛と正義の魔法少女! マジカル「はいストーップ!」」


 させません。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る