第2話 私は怒りたい
「オヤスミー」
そういって私を助けてくれた名前もわからない彼は本当に寝てしまった。
こんな状況なのに二度寝できるとかどんな精神をしているんだろうか?
もっと慌てふためいても罰は当たらないと思う。
私なんて目が覚めた瞬間、自分の状況が理解できず、
「え? え? 何……? なになになになにこの状況!? え? 何? え? なんで」
と言いながら暴れたり、
「キャー!!」
と叫んだりと混乱に混乱を重ねて慌てふためいてしまった。
少し冷静になってから、椅子に縛られている彼に状況を説明してもらおうとしたらこれだ。
私が結構大きな声で叫んだりしていたときに起きなかったので、もしかしたらこれから当分起きないかもしれない。
……そもそも彼はいったい何者なのだろうか?
私はこの世界に来るときにこの世界の状況を聞いていた(聞いていたものよりもひどかった)が、あんな状況の地上にいることがそもそもおかしい。
彼はどうやって生きていたんだろうか?
どうやって暮らしていたんだろうか?
そもそもなんで施設にこもっていなかったんだろうか?
なんでこの施設に侵入したんだろうか?
もともとはどこの施設にいたんだろうか?
などなど疑問は尽きない。
それに一番気になるのはあの戦場での彼だ。
ただの人間が怪物相手に渡しを抱えたままであんなに立ち回れるなんてあり得ない。
しかも、彼はただ避けているだけではなく、避けた攻撃が別の怪物に当たるように計算していたり、まるで未来が見えているように相手が動く前に避けていたり、後ろに目があるかのように避けていた。
そんなことは私にはできないし、並のヒーローが持っている技術ではないと思う。
いったいどんな経験をすればあんな技術が身につくのだろうか?
そもそもその技術が当たり前に使えている身体能力も異常だ。
私には私と同じくらいの重さのものを持ちながらあんなに軽快に動くことなんてできないし、たぶんここにたどり着く前に体力が底をついてしまうだろう。
それと彼が腕につけていた変身アイテムだ。
見る限り、あれは彼の変身アイテムではない。
なぜ断言できるかというとあれが彼の変身アイテムだとしたら彼は怪物に攻撃していてもおかしくないからだ。
怪物にはただの人間の攻撃がきかない。
それだけではなく、ただの人間は怪物を押すことも引っ張ることもできない。
それができるのは変身前、変身後に関わらずヒーローの力を持った人間だけだ。
もし彼がヒーローであの戦闘技術を持っているんだったら、変身できなくても彼は怪物に対して無双することができるだろう。
以上のことからどう考えても彼はヒーローと遜色ないほどの力を持っているけど、ただの人間だ。
たとえどんなに才能があっても、たとえどんなに努力をしてもたどり着くはずがないヒーローの力。
ただの人間のはずなのにそれと同等の身体能力を持っている彼は、本当に人間なのだろうか?
……どんなに考えてもわかるわけがなかった。
そうだ。
私も寝よう。
そう思い私は目を閉じて、リラックスをしようと……しよう、と…………出来るわけない!
こんな状況で二度寝なんかできるはずがない!
さっきまでは適当なこと考えて今の状況を忘れようと思ったけど……もう無理!
あぁ……どうなっちゃうの?
どうしたらいいの?
うぅぅ……怖いよぉ……早く起きてよぉ……彼が寝ているうちに誰か来たらどうしよう……何かされるかもしれない……怖いよぉ……
……決めた……彼が起きたら絶対に怒る!
怒るんだからぁ!
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