第2節 俺はヒーローじゃない
第1話 俺は寝る
怪物の群れに突っ込んでからだいたい三時間。
俺たちは怪物の群れから離れて少ししたところにある地下施設に侵入し、入り口付近の無人の部屋で休息をとっていた。
この施設に侵入したときやこの部屋を勝手に使うときに
『勝手に侵入とかしていいはずありません!』
とか
『まずはこの施設の責任者に話を付けに行きましょう!』
とか元チビがうるさかったが、
『緊急事態だ』
とか
『お前のせいでこんなに疲れているのにまだ働かせるつもりか』
とか適当なことを言ってたらおとなしくなった。
何言っても意味がないと気づいたのかもしれない。
まあそんなこともあったがとりあえず、俺は椅子に座り、元チビはベットに寝転がり、それぞれ舟をこいでいた。
「あーねみー」
「……」
というよりも元チビはもう寝てるな。
この世界に来てすぐにあんなことがあったんだ無理はない。
やっぱり、精神的にも肉体的にもよっぽど疲れてたんだなぁ。
俺もすぐに寝たいがそんなことも言ってられなかった。
俺は外から聞こえる足音に耳を澄ます。
一、二、三……五人か。
施設の入り口に監視カメラがついていたから来るとは思っていたけど、案外遅かったな。
誰が行くかもめてたのか?
まぁどうでもいいか。
そんなことを考えていると勢いよく扉が開き、拳銃を持った男たちが入ってきた。
「手を上げろ!」
入ってきたのは黒い背広に黒ネクタイ、黒い革靴にサングラスをかけた三人の男。
……なんだこの、宇宙人とかを目撃した人たちの前に現れるという謎の組織に所属してそうな恰好は。
本物だったらちょっとわくわくするぞ。
二人が俺に、一人が元チビに銃口を向けている。
他の二人はもしもの時ように外に待機してるってところかな。
それにしてもよほど疲れていたのか元チビは目を覚まさない。
んー、どうするか……すぐに立ち上がって、手前のやつの銃を蹴り上げて……あっめんどくさい。
それに元チビも寝ているしなあ……。
「はい、これでいい?」
俺はいわれた通り手を挙げて降伏した。
その後、両手を手錠で後ろ手にかけられ、両足を縄で椅子の足に縛り付けられた。
元チビは寝たままベットに括りつけられた。
元チビを括りつけようとしたとき、元チビのことを無理やり連れて行こうとしたやつをボコボコにすることで
『俺は降伏してやっただけであり、やろうと思えばお前ら全員やれる』
と知らしめたが、それ以外は特に何も起こらず、男たちは部屋から出て行った。
もう疲れたので俺は寝た。
それからだいたい三時間後。
「……の……お……ださい……」
……何かが聞こえた気がした。
「おきて……さい!」
「ん……んー……」
……やっぱり何か聞こえる……誰の声だろうか?
少し、目を開け、周りを見渡す。
見た覚えのない部屋に、見た覚えのないベット、その上には前髪で目が隠れた黒髪ロングの貧乳美少女が手足を縛られ、ベットに括られている……あれ? 何してたんだっけ? 特殊なプレイ中? いや、さすがにそんなわけないか……。
「あの! 起きてください!」
どうやら聞こえてきたのは縛られた少女の声のようだ。
俺はとりあえず立ち上がろうとしたが手足が縛られているせいでうまく動かない。
……ああ、やっと思い出してきた。
この施設に入って寝ようとしたら捕まったんだった。
見た限りこの施設のやつらはまだ戻ってきてないようだし、また寝るか。
「えっちょっと! 何また寝ようとしてるんですか! おーい! おーい! 起きてください! 状況を説明してください!」
うるさいなぁ……とりあえず適当に返そう……。
「オレ、ツカレタ、ネムイ、ネル、オヤスミ」
「なんで片言になってるんですか! 疲れてるのはわかりますが起きてください!」
「オマエ、ネテタ、オレ、ネル」
「いや、確かに私も寝てましたけど! 本当に私が寝ている間に何があったんですか!」
「オヤスミー」
「あっ!」
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