第6話 俺はこいつと逃げる


 俺は魔法少女、ながいからチビでいいや、を地面にたたきつけ、すぐに腕を掴み、引き寄せる。


「くそチビ! 何してやがる! バカか? バカなのか!?」


 チビの足を払った後すぐにしゃがみ、ろくろ首のように首をのばした蛇怪人による攻撃を避ける。


「チ、チビって何ですか! 私はあなたを助けようと……」


 そのままお姫様抱っこをして、前に走る。


「助ける? 俺の話を何にも聞いてなかったのか!?」


 急停止して、全長四メートルはありそうなサイ型の怪獣の突進を避け、


「み、耳鳴りのせいで、ちょっ、よく聞こえなかったんです!」


 チビは避けるときの反動に耐えられないのかところどころ小さい悲鳴を上げている。


 俺はそんなこと気にせずに大型の鷲怪獣の鋭い爪を避けるために横に飛ぶ。


「ちっ」


「『ちっ』って何ですか!? 元はといえば……きゃっ!」


 直地と同時に戻ってきたサイ型の怪獣の攻撃を避け、


「あーあーあーすいませんすいません俺のせいでした。これでいいか?」


 ハエほどの大きさの猛毒を持った怪虫の針をしゃがんで避ける。


「い、いいわけないじゃな……うわあ!」


 鎧武者の上段切りを避けるために右に転がり、


「あー……そんな話は後で聞くから俺の言うとおりにしろ!」


 後ろに跳ぶ、


「というか離してください! 戦えないじゃないですか!」


 ふりをして、前にいるクモ怪人に向かって走る。


「い・い・か・ら・聞・け!」


 俺は怒鳴りながらクモ怪人の吐いた糸を体を縮めることで避け、


「……はい」


 後ろから突っ込んできた犬型の怪獣に当てる。


「よし、すぐにこれに触れて、『出ろ』って思え! それだけでいい!」


 俺は腕についているヒーローの変身アイテムをチビに見せつつ、クモ怪人の横を通り抜ける。


「えっ!? これって……」


 その結果、クモ怪人はサイ型の怪獣の突進で飛んでいった。


「いいから早く!」


「はい!」


 チビが変身アイテムに触れると



“ゴゥ”



 という音とともに俺が拠点にしていた場所から光の柱が出現した。

 

「えっ!? あれは……!」


 俺たちに向かってきていた怪物は足を止め、突然現れた新たな敵の反応に意識を向ける。


「今の内だ! すぐに変身を解け!」


 その間に変身を解かせる。


 このままうまくいけば怪物は俺たちではなく、光の柱に向かう。


 そうすればやっとここから逃げられる。


「えっ?」


「早く!」


「はい!」


 チビは変身を解いた。


 その瞬間、俺の腕にかかっていた負荷が増す。


「うおっ!」


 急な変化に思わず声が漏れ、膝から崩れそうになる。


 確認する余裕はないが、どうやら変身することで小学校高学年ぐらいになっていたようだ。


 身長も体重も急成長を遂げている。


「……しっかり捕まってろよ!」


 急な変化を意地で無視して、周りの状況を確認、逃げるルートを決める。


「えっ? えっ!?」


 怪物たちが俺達には目もくれず、光の柱に向かって歩き出した。


 よし! 成功だ!


「行くぞ!」


 うまく状況がつかめていない元チビを尻目に、俺は光の柱とは反対、怪物の群れの中に飛び込んだ!


「ええぇええぇえぇえぇぇぇぇええええええええええええ!!!」


 地上に元チビの叫び声が響く。



 

 さて、逃げ延びましょうかね!


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