第5話 私は魔法少女なのだから


 視界が回復して最初に目に入ったのは、ゴーグルをした男性だった。


 どうやら私はこの人に助けられているみたいだ。


 戦い方や逃げ方を見るとどうやら彼はヒーローではなくただの人間……ただの人間?


 ヒーローでも避けられないような攻撃をちょっと信じられないぐらいに当たり前に、そして連続で避けているけど、うん、ただの人間。


 私を抱えて怪物の攻撃を避け続けるぐらいの体力があるけど、うん、ただの人間。


 たとえどんなに人間離れしているんだとしても本当なら私が助けないといけないはずのただの人間だ。


 私はいったい何をやっているんだろうか?


 私は魔法少女だ。


 力があるし、人々を助けたいという思いも持っていた。


 でも、できなかった。


 数えきれない数の怪物に恐怖して、結界にこもり、すべてを諦めた。


 でも、助けられた。


 ただの人間で、戦う力もなく……なく? ないよね……? たぶん怪物の一撃で死んでしまうかもしれない。


 そんな、私よりも圧倒的に弱いはず……うん、弱いはずの人に。


 だから、今度は私の番だ。


 私一人ならさっきみたいに諦めたかもしれない。


 また結界にこもってしまうかもしれない。


 何もせずに逃げようとしたかもしれない。


 でも、助けないといけない人がいるなら、私は戦える。


 だって私は、魔法少女だから。


「…おろしてください」


「――――」


 まだ耳鳴りが止まらないので、彼が何を言っているかはわからない。


 だけど、あんな状態の私を助けようとする人だ、まだ無理だ、とか、やめろ、とか言って私を止めてくれているのかもしれない。


「大丈夫です。私は戦えます」


「――――」


 彼が怪物の攻撃を避けるためにしゃがんだ。


 その瞬間、私を掴んでいた腕の力が弱まる。


「とう!」


 私はすかさず腕から抜け出し、


「――い!」


 口上を、


「私は魔法少女」


「バッカヤロウ!」


 言おうとしたら頭を地面にたたきつけられた。

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