第3話 私は魔法少女


 私は魔法少女だ。


 この前やっと魔法少女見習いから魔法少女になったばかりで経験が浅い、というか今回が初めての仕事だけど、世界のヒーローが負け、悪の組織に支配されているという危機的状況の世界に派遣されるぐらいには優秀な魔法少女だ。


 初の異世界。


 初の転送。


 初めてのことばかりで少し緊張するが、これから私の伝説が始まると思えばなんて言うことはない。


 転送が終わり、光が収まった瞬間、私は伝説の第一歩たる名乗りを上げた!


「私は愛と正義の魔法少女! マジ、カル……」


 しかし、私の魔法少女として初めての名乗りはそこで終わってしまった。


 最初私はその光景に目を疑った。


 次に私は自分が発動できる魔法の中で最も堅い結界を張った。


 ……ありえない……ありえないありえないありえない……!


 右には私よりも圧倒的に大きなクモ型の怪物など多数!


 左には大きさは私とさほど変わらないけどたぶんクモよりも強い鎧武者など多数!


 それだけじゃなく、前にも後ろにも上さえも数えきれないほどの怪物だらけ!


 なんで!? いったいどういうこと!?


 怪物が近くにいるかもしれないというのは聞いていたけど、多くて五体ぐらいだと思ってたのに少なくとも三十体はいる……。


 あれ? 私ここに死にに来たんだっけ? ってそんなこと考えてる場合じゃない!


 何か……何か考えないと……結界が堅いっていってもこの数に攻撃され続けてたらあと三十分もしないで壊される……その間に攻撃魔法を用意しておくとか……?


 いやいや撃ったとしてもこの数じゃ焼け石に水だし……結界に穴をあけてそこから攻撃するとか……?


 いやいやたぶん攻撃する前にそこから穴を広げられる……逃げようにも囲まれてるし……倒そうにも数が多い……転送魔法なんてそんな高度な魔法できるわけないし……こんなの私一人でどうにかできるわけないじゃん……!



 それからいろいろ考えたけどいい案は出ず、その間にも結界は弱まっていった。


 そして私の心は完全に折れていた。



 ごめんなさい……ごめんなさい……私、優秀なんかじゃないんです……だから助けてください……私、本当は落ちこぼれなんです……だから助けてください……こんな世界で仕事が来てからもしかしたら認められてたのかもって思ったけど、ダメでした……だから、助けてください……。



 私は怖くて怖くて仕方がなくって、涙が流れる。



 あぁ……私の人生って、いったい何だったんだろう……?


 小学生の時に魔法少女の適性が出て、魔法少女の学校に通えることになったと思ったら、最終試験で落ちまくって試験に合格したのが十六歳の時。


 それから魔法少女見習いとして四年間の研修が終わってようやく認められたと思ったら、これですか……。


 ……どこかで諦めればよかったのかな……?


 ……そうすれば私は生きていれたのかな……?


 

 ガシャンッッ!


 

 ガラスが割れるような大きな音を立て、ついに結界が壊れた。


 そして、たくさんの怪物が私に襲い掛かる。



 あぁ……魔法少女になんて、ならなければよかった……。



 そんなことを考えながら私はすべてを諦めて、ゆっくりと目を……



 バン!



 閉じれなかった。


 何かの音がしたと思ったら私の視界が真っ白に染まり、耳鳴りもして周りの音が聞こえなくなった。


 そして、いろいろと疑問を持つ前に私はお姫様抱っこをされて連れ去られてしまった。



 ……え?

 何?

 どういうこと?

 何が起こったの?

 あの音は何?

 なんで何も見えないの?

 なんで何も聞こえないの?

 何でお姫様抱っこ?

 なんで生きているの?

 さっきまでいた怪物は?

 そういえばどこに向かってるの?

 なんかすごい動いてるんだけど?

 もういっそシェイクされてるんだけど?

 うぇ気持ち悪い……そういえば私をシェイクしているのは誰?

 あの爆発音はこの人が?

 そもそもなんで助けてくれたの?

 どうやって助けてくれたの?

 というか助けてくれたの?

 そもそも人間?

 ヒーロー?

 ん?

 んん?

 んんん? 


 いったい、どうなっているの……?

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