第2話 俺は逃げる ②


 この世界にいたヒーローはすべて負けた。


 日本のヒーローもアメリカのヒーローも中国もフランスもイタリアもイギリスもドイツも関係なく、すべての国のヒーローが負けた。


 しかし、地下に潜った人間は知らないが、いまだ世界にはヒーローが出現する。


 俺が見たヒーローはこの五年で十は下らない。


 日本の、しかも俺の前で十は下らないとなれば世界中で結構な数のヒーローが現れていることだろう。


 だが、新たなヒーローは出現と同時に付近の怪物にやられてしまう。


 なぜなら、周囲にいる怪物が多すぎるのだ。


 やってきたばかりだとしても一、二体の怪人を相手取ることはできるだろう。


 だが付近の怪物数十体が一斉に集まれば結果は火を見るより明らかだ。


 俺が見ているところで出現したヒーローは一人を除いて出現と同時に何も出来ずに負けてしまった。


 あるヒーローは頭以外残っていなかった。


 あるヒーローは下半身を食べられて苦しんで死んだ。


 あるヒーローは人間の形をしていなかった。


 そして、すべてのヒーローの武器だけが残った。


 俺しか地上にいないのに、俺には何もできなかった。


 あるときは遠目から見ているだけだった。


 あるときは全力で逃げた。


 あるときは見ることも逃げることもできず、ただただ隠れていた。


 俺には何もできなかった。


 ヒーローが勝てない敵に俺が勝てるわけがない。


 今回だって俺にできるのはせいぜい逃げるだけだ。


 やることはやった。


 これが一つの区切りになることを願って、ここから逃げよう。


 これからも生きるために。

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