第2話 俺は逃げる
あれから数日。
狼男から命からがら逃げきった俺は怪物が
地上は簡単に言うと瓦礫の山と自然だ。
ビルや塔などの高い建物は軒並み倒され、家屋は踏みつぶされている。
場所によっては体長が五十メートルはある怪獣が徘徊しているので、砂利のようになっているところや破壊されすぎて地平線が見えるところもある。
ただ自然だけは残っている。
なぜかは知らないが怪物はあまり自然を壊さない。壊すときは人間の建築物を壊すときにやむを得ずといった時だけだ。
昔はどうして怪物は自然を壊さないのかを真剣に考えたこともあったが、今では自然があるおかげで逃げやすくてラッキーと思うぐらいだ。
さて、そんな地上で俺が拠点にしているのはただの瓦礫の山だ。
ベットもないし、風呂もない。電気もないし、水道もない。
でも雨風しのげるし、この前の施設で食べ物をかっぱらってきたから空腹の心配もない。
ここが日本のどこだかはだいたいしかわからないが、境目になっているので怪物に襲われる心配も少ない。
結構な好条件だ。
境目とは、地上で生きていくにあたって俺が見つけた怪物があまり近寄らない場所のことだ。
怪物のことはよくわからないが、なぜかやつらは境目には近づかない。
人間を追っているときだとしても近づいたらだいたい諦めるし、諦めずに境目に入っていき人間を殺したとしても他の怪物に殺される。
以上のことから悪の組織は実は一つではない、または内部で分裂しており、境目はそれぞれの領地の境目なのではないかと俺は考えている。
境目を超えてしまい殺されるとき、潔く首を差し出している怪物がいたことや境目越しに会釈している怪物がいたことも考えのもとになっている。
さて、今まで境目は怪物に襲われる心配が少ないという話をしたが別に襲われないわけじゃない。
境目の位置や範囲を正確に覚えている怪物が隣の領地にはみ出さないギリギリの攻撃をしてくることもあるし、境目を超えないように遠距離からの攻撃をしてくる怪物もいる。
両方の組織から怪物が来て挟まれたこともある。
なんか怪物同士で話し合ったのか会釈しながら境目を越えてきた怪物もいたな……。
まあ境目だとしても地上は地上。危険であることは変わらないってことだ。
そんな地上で俺がやっていることはただただ見ていることだけだ。
だけど地下で生活できない俺としては、その見ているだけが生きるために最も重要だ。
なぜなら、地上の情報が一つでも多ければ生き残る確率は確実に上がるからだ。
地上の中でも俺が重点的に見るものは四つある。
まずは、怪物。
怪物を観察することで、境目は変わっていないか、周辺の怪物の徘徊ルートはどうなっているか、怪物の種類や行動パターン、攻撃方法や癖などを確認する。
これは怪物と出会わないため、出会ってしまったとしてもどう逃げればいいかを考えるのに重要だ。
次に地形。
もしもの時に逃げ道を探しておくのと地下施設の場所を探すこと、隠れる場所や躓きやすい場所などを確認する。
地下施設はただ見ただけじゃわからないが当たりを付けることはできる。
怪獣の足跡の平らすぎる場所やあまり崩壊していない地面の近く、そのまま残っている山などは要チェックだ。
三つめは人間。
人間は俺以外に地上で生きてはいない。
まあ俺が見たことないだけかもしれないが、とりあえず俺が見るのは怪物に襲われている人間だ。
襲われている人間は前にも話したと思うが大体は自殺志望者だ。
死ぬために地下から出てくる。
そんな人間とあたりを付けた場所を観察することで地下施設の場所を特定しておくのだ。
そして最後は……。
“ゴゥ”
という音と強烈な光とともに俺の拠点から少し行ったところに光の柱が出現した。
それが視界に入ったと同時に俺は周りにいる怪物を確認する。
あの柱がある限り、怪物は俺を襲うこともしなければ気にかけることすらなくなる。
なぜなら怪物は人間なんかに目もくれず、境目の存在も忘れてあの柱へと向かっていくからだ。
あれは怪物の最大の敵がこの世界に現れるときに出現するもの。
あれは地下に潜った人間の希望が現れたときに出現するもの。
そしてあれは、俺が見なくてはならない最後の一つ。
ヒーローの出現だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます