エピローグ -1

 ――というところで、眼が覚めた。

「……うぁ」

 俺はむくりと起き上がる。

 左右と上下を見渡し、ぼやけた眼をごしごし擦る。

 白いベッド、木目の天井、壁に貼られたスタハンのポスターを斜めに見てから、最後に窓へと視線を移した。

 カーテンの隙間から漏れるのは暖かな日差し。スズメもちゅんちゅん鳴いている。

 俺はベッドから這い出すと、そのカーテンを思い切り左右に開いて、窓の外を眺め見た。

 そこには、見慣れた六玖波市の風景が広がっていた。

 すぐ近くに見える商店街の一角も、繁華街に建つDOKONOビルの様相も、何ひとつ変わっていない。まるで、それらが一度消えたことすら覚えていないように、平穏に佇んでいた。

 ――世界は何も変わっていない。

 ただ、俺の中の何かが変わっただけなのだ。

「……目が覚めたのかな、俺」

 ぼそりと呟くと、階下から俺を呼ぶ弟の声。朝メシができたからと、盛大に鍋の底をおたまで叩きまくっている。

 なんとも騒がしい、だけど、いつもと変わらない音色だった。

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