第二章 -7(period)

 スコン! と軽快な音が鳴って、俺の頭に激痛が走った。

「なッ!? ごっ、ぐおお……!」

「だからあ、何度も言っているだろう那珂湊幸太。私の授業は寝るほどつまらないのか?」

 涙目のまま見上げれば、そこには身長百七十の美人教諭・竜ヶ崎教子のお姿が。

 ヤツの手には縦に構えた図太い教科書の角が光っており、それが俺の脳天に突き刺さった正体だと知った。

「か、角はないっスよ、本気で泣けるもん。つーかなぜ教子センセ? まだ五時間目だろ?」

「……幸太、もう六時間目だよ。理科の時間」

 前の席の磯原稔がひそひそと教えてくれる。

 そうか、俺は五時間目の休み時間を飛び越えて、ぶっ続けで居眠りこいていたということか。どんだけ寝てんだよ俺。つーか誰か起こせ。

「どうしていつも私の授業で寝るかなあ。ひょっとして貴様、わざとやっているのか?」

「い、いやいや! 別に先生の授業がつまらなくて寝てたのではないですよ。なんたって五時間目から寝ていたわけですから、先生の授業の良し悪しには何ら責任はありません!」

「じゃあ、どうして居眠りこいた」

「……あ……悪夢と戦うため、かな?」

 スコン! と二度目の軽快な音が響いて、教室は爆笑の渦に包まれた。

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