第4話 君は死能力を知っているかな?

 光希からの強烈な拳を頭に浴びせられた蒼志だったが、なんとかHR前には意識を取り戻すことができた。


「いってぇ…。光希の野郎…。」


「ほんとに大丈夫?ものすごい音したけど?」


 意識を取り戻した蒼志に心配そうに京妃は話しかけてきた。

 頭には大きなコブができており、光希の一撃がいかに強かったのが分かった。そんな痛々しいコブを優しくさすり光希にちょっとした恨みのこもった声をたらした。


「あぁ、大丈夫だ。あの怪力バカの拳骨をまともに受けれるのは俺くらいしかいないからな。」


「そ、そうなの?」


「小さい時もよくあいつとは喧嘩とかしたよ。でもあいつ女なのに力強くてな…。よく泣かされたよ。」


 蒼志と光希は幼馴染であり、従兄妹でもあったのでよく小さい頃から遊んでいた。

 当然彼女があのような少し男勝りな性格をしていたので、よく喧嘩をしていた。

 今は思春期なのか身だしなみには気を使っているのだが、それでも性格は変えられないようだ。


 ガラガラ……


「さて、諸君おはよう。HRの時間だ。」


 教室のドアを開いて入ってきたタイトスカートのレディーススーツを着た光希や京妃をも凌ぐ大きさの胸を有したポニーテールの女性 彼女はこのクラスの担任の相川美雨あいかわみうである。

 歳は28歳…嫁の貰い手がなくいき遅れになっているそうだ…。本人はその話をするとキレるので気を付けた方が良い。


「何だ?蒼志。今日はいつにも増して冴えない顔をしているな?義姉さんに心配かけるなよ?」


「冴えないは余計だ。」


 美雨は蒼志の顔を見るや否や少しおちょくるような笑みで話しかけてきた。

 そして、彼女の言った義姉さんという言葉は、誰のことを指しているのかと言うと、蒼志の母親のことを指している。

 名字からもわかるように美雨は、蒼志の父親 誠司の実の妹、つまり蒼志の叔母にあたるのだ。


「そんな顔していたらいつまでも、彼女ができないぞ?」


 蒼志を嘲笑っていた。自分が言えるような立場ではないのに…。

 そんな自分のことを棚にあげる叔母にムッとした蒼志はこちらも嘲笑うかのようにして発言をした。


「そんなこと言って、先生こそ嫁の貰いてなくて困ってるでは?」



「あぁぁ?お前なんつった?」


 触れてはいけない禁句タブー。美雨は鋭く蒼志を睨んだ。その突き刺さる瞳には寒気すら感じた。


「いや、先生ならいい旦那さんが見つかりますよって……。」


 美雨先生の今にも人を殺しそうな眼差しに怖気づき、自分が決して思わないようなことを言ってしまった。

 だが、それくらいになると彼女は目つきが変わるのだ。


「なんだ、わかってるじゃないか?さすが私の甥っ子だ。よく出来てる。」


 薄らと微笑んでいるが、それは蒼志に脅しをかけているようで、傍から見れば若干引くくらいの怖さを感じた。

 顔やスタイルは抜群なのに勿体ないと誰しもが思っているとこである。

 そんなこともあったが、HRは始まり、普段通り学校は始まったのだった……。


 ―――――――――――――――――――――

 放課後特に部活に入っているわけでもなかった蒼志は、鞄を持って帰宅の準備をしていた。

 すると、隣の席の京妃みやびから話しかけられた。


「蒼志くん。あのさ、こ、これから暇かな…?」


「いや、別に。暇っちゃ暇だな…。」


 帰宅部の蒼志には活動というものがなく、学校が終われば帰るというのが普通だった。

 しかし、京妃の方を見ると何か言いたげにしてモジモジとしていた。


「だったら一緒に帰らない?本の話もしたいし…。だめかな?」


「あ、いや、ダメじゃないよ全然!」


「お前女の谷間を見るとは最低だな。しねばいいのに…。」

 京妃の上目遣いと制服からチラッと見える胸の谷間に思わずドキッとした。

 そして、そんな蒼志を見ていた死神の少女ターナは彼にシンプルに毒づいた。

 しかし、今ここで会話するのは不味い感じた蒼志は彼女の言葉を無視した。

 この学校の制服は男女ともブレザーだが、京妃の胸が大きい故にブラウスからチラッと谷間が見えて色っぽく見えるのだ。


「そう?だったら一緒に帰りましょう?」


「おう、わかった。」


 そう返事しつつ、チラッと憧れの存在である穂乃果の方を見た。

 さすが学園のアイドルと言われているだけあって周りの取り巻きがすごかった。四方八方におり、彼女の偉大さを感じた。

 蒼志は彼女に思いを寄せているものの、そのあまりの高嶺の花っぷりに半分諦めかけていた。


「はぁ……。あ、じゃあ行こうか?」


「う、うんそうだね!」


「ちょっとまった!!」


 2人が帰ろうとしているところに突然行く手を阻む声がした。

 2人がほぼ同時に振り向くと、そこにはブラウスのセミロングの髪をなびかせた、京妃と同等の果実の持ち主の光希が腕を組んで立っていた。


「なんだよ光希?」


「何って…私と帰らないのか!?」


「いや、京妃に誘われたし…。」


 突然の意味のわからない発言に蒼志はただその場であったことをいうことしかできなかった。

 しかし、光希は口を膨らませて不機嫌な顔をしていた。


「だからって、幼馴染の私を置いていくなんてひどい!」


「いや、意味わからんわ。」


 確かに、蒼志の言う通り幼馴染であるだけの光希を待つというのは道理に合わない気がする。

 そんな我儘にもとれる光希の発言に冷静な顔で反論する蒼志に、ターナは自分の黒髪をいじりつつ、悪戯な微笑みで3人を見ていた。


「蒼志はモテるのね。そんな顔の癖に、不思議ね。人間って…。」


(ターナの野郎…。後で覚えてろ…。)


 ターナの声が聞こえるのは、蒼志だけである。つまり、彼女のディスりは丸聞こえなのであるのだ。

 そんな蒼志は心の中で、自分をディスった彼女に復讐をしようと誓ったのであった。



 結局、駄々をこねた光希により、蒼志と京妃そして光希の3人で学校から家まで道を一緒に帰ることになった。


「そういえば、蒼〜。今日家に遊びに行ってもいい?」


「ダメに決まってるだろ!?お前俺の部屋すぐに散らかすから!」


 帰り道3人+1体で並んで歩いていると光希が唐突に蒼志の家に遊びに行きたいと言った。

 蒼志の家と光希の家自体はさほど遠くはなく、徒歩10分くらいの距離であった。

 そのためか、光希はよく蒼志の家に遊びに来ている。そして荒らすだけ荒らして帰っていく。それが光希だ。

 当然、そんなことがあったので、蒼志は断った。


「えっ!斎王さんはいつも蒼志くんの家で遊んでるの?」


「うーん。いつもじゃないけど、暇さえあればいるよ?」



 光希の発言に、驚いた京妃は目が点になり、さらに少し眼鏡が下へとずれたようだ。

 ずれた眼鏡を元に戻して、光希の言葉が本当かどうかを確かめるために聞き返した。

 結構真剣な表情で。


「大体はお前が無理やり俺の家に来ているだけだけどな。」


「そ、そうなんだ…。ず、ずるい…。」


 京妃は2人には聞こえないような霞んだ小さな声で最後に何か呟いた。

 聞き取れなかった2人だったが特に気にすることもなく、歩いた。

 しかし、そんな3人のやり取りを見てつまらなそうに見ている約1名の人外。

 黒のドレスが似合う美しい女性だが、背中から黒い翼が生えており、それで飛んでおり、3人の後ろからついて行ったのだ。


「なんか、ハプニングもなくて、つまらないわね…。あ、そうだ…。ふふふ…。」


 3人の姿をつまらなそうに頬づえをついて飛んでいた彼女は何か閃いた顔をした。

 しかし、彼女の黒い笑みは何かイヤなことを引き起こすであろうサインであった。

 蒼志の方は、前にいるため、ターナの姿など見えるわけもなく、ただ2人と話をしていた。


「この娘には悪いけど、面白いからいいよね?」


 ターナはそう言うと、京妃の背後に近づき彼女のスカートの裾を掴んだ。

 そして、ニヤリと笑みを浮かべると、蒼志が京妃の方を見たの見計らって、思いっきりスカートを上へとめくったのだった。


 バサッ!!


「あ…。」


「えっ…。」


 刹那的ではあったが、蒼志の目にはしっかりと彼女の下着のパンツが見えていた。

 純粋彼女には似合わないような、黒色のなんともイヤらしく、大人っぽいものであった。

 そんなものを見てしまった蒼志は声を一言発することしかできなかった。

 だが、京妃の方は、だんだんと顔が深紅に染まり、りんごのように紅く、そして見られたショックから涙目になっていた。


「きゃあ!!蒼志くん!見ないで!!!」


「ご、ごめん!!わざとじゃない!たまたまだって!!」


 蒼志の言う通り、これはたまたまであり、ターナによって意図されたものである。

 よって実際のところは無罪である。だが、ターナは見えない存在。

 だから、傍から見たら風でスカートが煽られパンツがあらわになり、それをがっつりと見た。という構図になるのだ。

 京妃は恥ずかしさのあまりに涙ぐんでおり、顔を手で隠していた。


「この変態が!!京妃ちゃんのを何見てるのよ!?最低!!」


「待てって!!誤解をうむようなことを言うな!!確かに見たっていうか見えたっていうか…。とにかく、わざとじゃない!いってぇ!首締めるなバカ!」


 光希は女の子の恥ずかしいところを見てしまった蒼志に制裁として首絞めを御見舞していた。

 ギブギブと首に絡みついた手を叩いてやめるように言うものの、収まることがなかった。


「もう私…お嫁にいけない…。うぅっ…。」


 涙を流してその場に倒れ込む京妃に何と声をかけていいのかわからなかった。

 今の状態は、本当は被害者と被害者なのだが、普通の人間からは被害者と加害者にしか見えないのだ。


「本当にごめん…。でもわざとじゃないんだ。それだけはわかってくれ…。」


「あんたどうやって責任とるの?私のならまだしも、赤司さんの見るなんて…。浮気者…。」


 光希に鋭い眼差しで見つめられた。というよりも、浮気者という意味が蒼志にはわからないだろう。

 それに自分のパンツは見られてもいいのかよと内心思っていた蒼志であった。

 とにかく、地面に座り込んで泣いている京妃にようやく、首絞め解かれた蒼志は膝を曲げて座り、彼女と同じ目線になるようにした。


「赤司ごめん…。わざとじゃなくてもパンツ見ちゃって、仮にお嫁にいけなくなったら俺が責任とるから。」


「ぐす…。本当?」


 今まで涙を流していた京妃は泣き止んで赤く腫れた眼を蒼志に見せた。

 涙がつたったあとがあるものの、彼女の美しい顔には変わりなかった。

 そんな彼女の顔を見て少し照れくさくなった蒼志は思わず違うところを見た。


「まぁ、男に二言はないからな。」


「何が男に二言はないだ。あなた来年には死んでるかもしれないのに?」


 蒼志の決め台詞のようなものに、的確にターナはつこんだ。

 全くもって彼女の言う通りである。彼女の持つ人物最期帳には来年には死ぬようになっている。

 だから、こんな約束しても守れないかもしれないのだ。


(あ〜。そうだった…。俺来年死ぬであろうということ忘れてた…。)


 ターナの言葉に今更ながら気づいていてしまった。こういう約束はやたらめったらやるものではないと反省をした。

 というよりも、この原因を作ったのはそもそも、ターナであるが…。


「やった…。」


 ボソッ小さな声で京妃は呟いた。


「ちょっ!蒼!あんたには私という人間がいるのに、何勝手な約束してるんだよ!?」


 納得のいかない光希は蒼志の胸ぐらを掴んでブンブン振っていた。

 そして、手を離したあと、光希は自分から蒼志にスカートの中を見せようとめくろうとしていた。

 そんな光希を止めるように必死で手を抑えていた。


「ちょっと離しなさいよ!私のは見たくないの!?」


「そういう問題じゃない!!いいからやめろって!!」


「光希って子面白いわね〜。自分からするなんて大胆〜。」


 必死に光希の行動を止めようとする蒼志に、ターナは楽しそうにふたりを見ていた。

 そして、この状況を作った原因のターナの方を向いて睨んだ。

 でも結局、死神である彼女には何も通用しないため、はぁっとため息をついた。


「とりあえず、光希は落ち着け。赤司は大丈夫か?」


 光希を一旦落ち着かせると、京妃の方を見た。


「蒼志くんと結婚…。ということは、私は蒼志の奥さん…。奥さんということは蒼志の一番…。ふふふ…。」


 京妃の方は何かブツブツと呟いており、少し笑っていた。蒼志は若干引きそうになったが、そこは友達である京妃にそのような態度はいけないと思った。

 そこで我にかえらせるために肩を優しく叩いて気づかせた。


「おーい、赤司大丈夫か?」


「ひゃう!蒼志くん?」


「気づいたか。じゃあこんなところで座ってないで帰ろう?」


 そういうと座っている京妃に手を差し伸べて立ち上がるようにいった。

 京妃は顔が赤くなりながらも、差し伸べられた手を掴んで立ち上がった。

 そして、落ち着きを取り戻した光希とともに再び帰路へとついた。


 ――――――――――――――――――――――――


「それじゃあ私はこちらなので、さようなら蒼志くん斎王さん。」


 途中で京妃と別れて、蒼志と光希だけとなった。

 2人は手があたりそうなくらい密着した距離で歩いていた。

 しかし、さっきの出来事のためか、光希はどこか不機嫌な顔をしていた。


「なぁ、なんで怒ってるんだよ?」


「なんでもない!浮気者!」


「なんでだよ!?」


 まだ、先ほどの出来事を引きずっているようだ。光希の言い分によれば、以前蒼志は光希のパンツをうっかり見てしまったのだが、顔を赤らめることもなく平然としていたのだ。

 にも関わらず、京妃の時はしっかりと顔を赤らめていた。

 そこが、光希は気に食わなかったのだ。


「私の見ても興奮しないくせに…。京妃ちゃんのには興奮するんだ?」


「誤解をうむような言い方はやめろって!?別にそういう訳じゃねぇよ…。」


 不機嫌な顔の光希にどうしたらいいかわからない蒼志である。

 だからといって、光希のパンツを興奮をしていいものなのかと思った。

 光希は蒼志にとっては従妹で幼馴染である。そんな身近な人間に興奮をするのか…。

 そんななか、別れ道が現れた。ここからは互いに違う道に行かなければならない。

 まだ話も終わっていないのに、後味が悪くなってしまった。


「とりあえず、後でいえいくからね?」


「はぁ…。なんかわからんが、気をつけてこいよ。」


 そう言うと、光希は蒼志に軽く手を振って自らの帰路へと向かっていった。


「はぁ…。」


「大変だね。」


 1人+1体となった瞬間、物凄い形相でターナの方を見てきた。

 しかし、ターナの方はと言うと、何?と言いたげな平然とした顔をしていた。


「お前のせいだろ〜!?」


「偉大なる私が、ご褒美をあげたのに礼儀もないの?」


 自分がしたことをむしろ正当化していた。何と都合の良い女いや、女死神なのだろうか。

 これには思わず、蒼志も呆れてため息しか出てこなかった。


「もういいや…。お前と話すと疲れる…。」


「偉大なる私が話してあげてるのよ?意味を履き違えないで貰える?」


 この一言には一瞬とんでもない殺意がターナに対して芽生えた。

 しかし、ターナは死神である。人間には触ることができないし。物理攻撃なども通用しない。

 いつか必ず復讐してやろうと蒼志は心の中で決めていた。

 しばらくと家までの残りの道を歩いていると、川が流れている橋へとやってきた。

 すると、橋で黄昏ている、銀髪のボブカットの同じ年齢くらいの女子がいた。

 しかし、その銀髪女子は橋桁にのると、川へと飛び込んだのだ。


「えぇ!!?なにしてるの!?ちょっ!」


「泳ぎたいのかしら?」


「そんなわけねぇだろ!?助けないと!」


 呑気なことをいうターナを尻目に蒼志は川へと飛び降りた女子を助けるために、川へといった。

 川へと近づいた蒼志はブレザーやネクタイ、靴などを脱いで泳ぎやすくしたら、勢いよく飛び込んだ。

 必死にクロールで流されている彼女の元へと泳いだ。


「大丈夫か!しっかりしろ!」


「うぅ…。」


 溺れている彼女を身体抱き寄せると岸まで懸命に泳いだ。

 幸い水はそれほど飲んでおらず、意識もあった。


「大丈夫?」


「えぇ、なんとか…。」


 意識を持たせるために、話しかけた。言葉に詰まりがあったりしたものの、大丈夫であった。

 しかし、なぜこのようなことには及んだのか、蒼志は彼女に尋ねた。


「どうして飛び込んだりしたの?」


「それにはわけがあって…。実は私……死にたいの…。」


 彼女の口から思わぬ言葉が出てきた。死にたい?ということは、自殺をしようとしていたのか?

 だが、なぜ死にたいのか、蒼志には全くもってわからなかった。いやむしろは腹が立ったのだ。

 自分の命を粗末にしようとした彼女対して。


「どういう理由でやったか知らないけど、死にたいなんて口にするなよ…。君がやっていることは死者への冒涜だぞ?」


 死ぬという言葉に、敏感な蒼志である。それもそのはず、彼の父は亡くなっているのだ。

 幼い少女を殺人鬼から庇ったことによって…。蒼志は父親を尊敬していた。好きだった。

 しかし、もういないのだ。最初は信じられなかったが、何日か経つと分かったのだ。もう父親はいない。死んでいるのだと。

 だからこそ、今こうして生きているのに死にたいという人間が蒼志は大っ嫌いなのだ。


「まぁ、私は死にたいけど、同時に生きたいと思っているのよ。」


「どういうことだ?」


 彼女は濡れた顔で蒼志を見た。その目には何か重いものがのしかかってくるように感じた。

 彼女は何か理由があって、死のうとしていたのだと。

 しかし、生きたいということはどういうことなのか?蒼志は考えてもよくわからなかった。


「ジレンマだよ。死を望むのに、生きたいというと願望を持つ。本当は死にたかったけど、助けてくれてありがとう。私はまた生きることができた。」


「あぁ…。そうか。それならよかったけど…。」


 彼女は冷静な表情をしていたが礼を述べるとニッコリと笑った。

 彼女のその表情に一瞬だけドキッとした。彼女は顔が整っており、胸はそこまでないものの、スタイルはよかった。


「ところで、君。そちらの彼女は何者なのかな?」


「え?あぁ、こいつはターナ。俺に取り憑いた死神だよ。……。うん?」


「まさかあなた偉大なる私が見えるのかしら?」


 蒼志は唖然としていた。自分以外に死神の姿が見えるとは、まさかと思った。

 当然ターナの方も驚いていた。死神が見える人間というのはごくわずかしかいない。

 ではなぜ見えるのか…。


「まぁ、私もある出来事から見えるようになったんだけど…。君はを知っているかな?」


「死能力?」


 彼女の言葉を反復するように口にしたその言葉。

 一体どういうものなのか…。

 そして彼女は一体何者なのだろうか?



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