第3話 友人と幼馴染
学校についた蒼志と穂乃果は下駄箱にて靴を上履きに履き替えてクラスへと向かった。
ガラガラガラ……
「おはよう!みんな!」
穂乃果が教室のドアを開くと元気にクラスのみんなに挨拶を行った。やはり学園のアイドルと言われるだけあって、挨拶を一とすると十帰ってくる。
特に男子からは「可愛い!」「女神だ!」「我らモテない男子にとって癒しの存在だ!」なんてことを言われる。だが彼女はそんな褒め言葉に決して奢らず、謙遜するような娘なのだ。
「じゃあ名瀬さん俺は席こっちだから…。」
「うん、そうだったね。またね?」
同じクラスなのにまたね?というのは少しおかしい気もするが、彼女にそう言ってもらえただけでもありがたいため蒼志は特に気にしていなかった。
席につくと隣の席にいる女子が話をかけてきた。
「あ、相川くん、おはよう。昨日貸した本読んでくれた?」
「おはよう
「えへへ。そんなことないよ?相川くんに合いそうだったたから…。」
蒼志に話しかけてきたのは眼鏡をかけた左に三つ編みをおろした、いかにも文学少女のような娘の
彼女の特徴としては眼鏡とやはり育った胸である。男子から密かに人気があり彼女の笑顔は純心無垢な白い花のようである。
彼女からはよく本を勧められ、その本はどれも面白かった。
「赤司は本当、本が好きだよな。見てて伝ってくるよ。」
「うん、本を読むとね、心が落ち着くんだ。嫌なことがあっても本を読んだらスッキリするの。だから本が好き。」
京妃は蒼志に先ほど言った純心無垢な笑みを見せた。蒼志はその笑顔にドキッとさせられたが、あくまで彼の本命は名瀬穂乃果である。ここで京妃にときめいてしまっては穂乃果を裏切るような気がしてしまった。
そんな中突然会話に割り込むように言葉が発せられた。
「何を朝からイチャイチャしてるの?おい、蒼!お前が好きなのは私だろ?」
突如として2人の穏やか空気は一変してしまった。その声の主は蒼志の背後から聞こえ、彼の首を締めるように抱きついてきた。
「うぉ!?く、くるし……。やめろって!光希!!」
蒼志が必死に首に巻き付いている腕を振りほどこうとするもののなかなか力が強い。後頭部に柔らかい弾力が伝わってくるものの、この場合そんなことを呑気に考えている暇はなかった。
それを見ていた京妃は蒼志を助けようとするが、どうすればいいかわからずあたふたしていた。ようやく引きはがすと蒼志は不機嫌な顔をして後ろを見た。
「よ!
「お前、俺を殺す気か!もろ入ってたぞ!?」
ブラウンのセミロングに泣きボクロにこちらも京妃に負けず劣らず巨乳の女性
ところで、さっきからずっと沈黙を保つ死神の少女のターナはこのカオスな状況をまじまじと見ていた。
それに蒼志に放置されっぱなしのためか不機嫌な顔してジト目で蒼志の方を見ていた。
「なんなの…。蒼志って結構モテるの?どこがいいのか全くわからないけど……。」
普段の蒼志を見ていたターナには彼のいいところなど一つも映っていない。ただ、人間というものは奇妙なモノだと感じれた。
「蒼は私と相思相愛だもんね〜。ということでごめんね?京妃ちゃん。」
「え!?な、何言っているの!?わ、私はそんな…。」
「おい、待て。いつからお前と相思相愛になったんだよ。何年も一緒にいたが、そんな気は一度もないからな?」
なぜ、ここまで光希が蒼志に親密に接して来るのかと言うと、彼女と蒼志は生まれた時からずっと一緒にいる幼馴染である。
さらに彼女の母親と蒼志の母親は姉妹であり、2人は従兄妹の関係である。
彼女は
「ほんと、冷たいわね。従兄妹のなかなんだから、いいじゃない。」
「いや、良くない。そもそも、お前を恋愛対象として見てない。」
小さい時から2人は一緒にいたためか、蒼志は光希のことを従兄妹の幼馴染にしか思えず、恋愛対象からは完全に外れていた。
そんな言葉を受けた光希はあからさまに不機嫌な顔をしており、ジト目で蒼志を睨みつけていた。
「私の純粋な乙女心を踏みにじって…。このバカ!!」
ゴス!!!!
鈍い音が響いた。その音が聞こえた場所というのは蒼志の頭である。あまりの強さに煙が立ち込めて痛々しく見える。
蒼志は拳骨の勢いにより机に突っ伏してしまった。それを見ていた京妃は口を開いて呆然としていた。そして、状況を理解した京妃は蒼志を心配した。
「だ、大丈夫?相川くん?」
「ふん!!蒼が悪いんだよ!!?べー!だ!」
怒った光希はあっかんべーをして捨て台詞を吐きどこかに言ってしまった。
未だに意識の戻らない蒼志を心配そうに見つめてしばらく京妃は病気で寝込んでいる子供を見るような母親の眼差しで見ていた。
「蒼志くんの寝顔可愛いな…。」
「わからんな〜。こんな間抜けな顔のどこがいいんだか…。」
京妃の言葉にずっと一連の流れを見ていたターナは同意せずにむしろ、けなした。
京妃とターナの1人と1体は未だ意識の戻らぬ蒼志をそれぞれ正反対の眼差しで見守っていた。
蒼志という人間はどうも恋というものに疎いようだ。残り一年という余命を彼はどのようにして過ごすのか…。
蒼志の一年という余命は周りの人間たちにもどのような影響を及ぼすのか……。
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