H3rd Hand スーちゃんスイッチの作り方

ここは世界のどこかのお嬢様女子高

校舎の隅のひそやかな宴


○登場人物


     ☆サクラ

      二年生。ポーカー部部長。天下無敵の魔王閣下。

      得意教科は家庭科。意外な高女子力。

      人種・民族設定:ワイルドカード


     ☆エルネスタ

      二年生。ポーカー部副部長。冷静沈着なポーカー部の頭脳。

      すべての教科が得意なオールラウンダー。

      人種・民族設定:ネグロイド


     ☆グレイス

      二年生。自宅は豪邸のガチセレブ。根は寂しいと死ぬウサギ系。   

      中世から続く家系で自宅が指定文化財。歴史はいやでも必須。

      人種・民族設定:コーカソイド(ケルト系)


     ☆スー

      一年生。いつも朗らかのーてんき。

      美術と技術両方いける。木彫りのテディベアとか作っちゃう。

      人種・民族設定:コーカソイド(ゲルマン系)


     ☆クリス二等兵ザ・プライベート

      一年生。なぜか軍人思考、スーを隊長と慕うど初心者。

      体育! それ以外はアホの子。

      人種・民族設定:モンゴロイド


     ☆ニナ

      一年生。きまじめ一本槍、ポーカー部の良識。

      見た目文学少女なのに文系教科が壊滅的。

      人種・民族設定:コーカソイド(アーリア系)


     ★タンポポ

      ポーカー部顧問。

      何の教科を担当してるか実は誰も知らない。

      人種・民族設定:ワイルドカード



○1


   部室に入っていく2年生組。部室には誰もいない。

サクラ 「あれ? 1年生ズ来てないの?」

グレイス「いつもは先に来て、掃除とかしてくれてるのに……」



エル  「自分たちでやりましょ、いつも頼ってばかりじゃ……あら?」

   タンポポが深刻な表情で登場。



タンポポ「……廃部の危機です」



グレイス「エーッ!?」

サクラ 「まだ第3話だよそういうネタ早くない?!」




○2


エル  「1年生が来てないの、関係ありますか? やめたりしないですよね?」

タンポポ「そこらへんは本人たちに説明させます。みなさん、入りなさい」

   入ってくる1年生組。



タンポポ「こないだの定期試験の結果について説明してください」

クリス 「数学で赤点を取りました!」

サクラ 「嬉しそうに言うな!」

エル  「ポーカー部なのに数学の成績が悪いのはかなり問題なのでは……」



スー  「数学以外全部赤点を取りました!」

サクラ 「もっと問題だよそれは!」

グレイス「メガネっ子なのに成績悪いの?!」



ニナ  「(遠い目で)歴史なんてこの世になければいいのに」

サクラ 「人類の歩み全否定したよこの女!」




○3


タンポポ「ポーカーって、傍目には遊んでいるように見えますから、他の先生方の

     心証があまりよくないのはご存じでしょう。2年生のみなさんの成績な

     ら、そんな悪評はねじふせられるのですが……」



タンポポ「今回の結果は僕にとっても意外で……特に校長先生がカンカンなのをど

     うにも抑えきれず……」

サクラ 「あの美魔女ビマージョ様、そんなにあたしらが嫌いかよ……」



タンポポ「というわけで、追試で、合格ラインの10点増しくらいは取ってくれない

     いと、かなりヤバいです。2年生のみなさん、フォローをお願いできま

     すか?」

クリス 「先輩方ってそんなに成績いいんですか?」



タンポポ「学年のトップ3ですね」

1年生組「えーーっ!」

   フフンと偉そうにする2年生組。




○4


エル  「愚痴っている時間はないわ。追試まで1週間、1年生をマンツーマンで

     教えましょう」



グレイス「歴史と伝統は専門分野よ。ニナはわたくしが教えますわ」

サクラ 「この時期の数学はまだ連立方程式だろ? そのレベルにてこずるのは純

     粋に計算速度が足りないんだ。クリスはあたしが鍛える」



サクラ 「エルはオールラウンドに頭がいいから、スーが全体的にできないってい

     うなら適任だろうな」

エル  「頭が悪そうには見えないんだけどな……」

   エルネスタ、スーを見やる。



スー  「てやんでぃ、おてんとさんとしろいメシは、おいらの目が黒いうちはぐ

     るっとついてくるってんでぇこんちくしょーめ!!」

エル  「(……ご家庭の問題かしら?)」




○5


   3日後。

   2年生組が顔をそろえる。

エル  「中間報告をしましょう。みんな順調?」



   クリスが魂の抜けた顔で、ブツブツつぶやきながらさまよっている。   

クリス 「プリフロップでアウツ8枚の場合ヒットする確率は8/47ニアイコール

     17%ターンとリバーの2回なら34%現在のポットに誰かがポットベット

     した場合自分がコールすると自分のベット1に対しポットは3必要な勝率

     は33%リバーまでいくならオッズは合う」

サクラ 「……(成し遂げた顔)」

エル  「オッズの計算だけできてもしょうがないのよ!」

グレイス「数学の試験勉強は?!」



   ニナがマリー・アントワネットのコスプレをしている。

ニナ  「おーほほほほほ、パンがなければブリオッシュを食べればいいじゃなー

     い!」

グレイス「……(赤面)」

サクラ 「試験範囲まだ古代だよな? ローマ帝国がせいぜいだよな?」

エル  「マリー・アントワネットがそのセリフ言ったって話、もう否定されてる

     んじゃ……」



エル  「それでスーなんだけど……あの子は頭が悪いのではないことがわかった

     わ」




○6


   回想。

試験官 「試験を開始してください」

   ボーっとしているスー。



試験官 「終了10分前です」

   はっと気が付いた様子のスー。



試験官 「終了です。筆記用具を置いてください」

   へなへなになっているスー。

   回想から戻ってエルが話す。

エル  「つまり、スイッチが入らないのよ」



エル  「ご家族も、スーはそういう子だって思ってるし、成績悪いの全然気にし

     ないから、治らないのね」

グレイス「おおらかなよいご家族ね」

サクラ 「よくねぇよ部の危機だよ!」




○7


サクラ 「だいいち、そんなんでどうやって受験通ったんだよ! ポーカーのとき

     は、いつもスーが一番冴えてんのにさ?」

エル  「それなんだけど」



エル  「聞いてみたら、入試前日におじいちゃんとポーカーをしまくってたらし

     いわ」

グレイス「頭が冴えてるからポーカーが強いんじゃなくて、ポーカーを始めると頭

     が冴える、……ってことですの?」

サクラ 「だけどあたしらの場合、試験前は部活禁止だから、スイッチがオフのま

     んまだった、と」



エル  「だから、ニナとクリスはまとめて私が引き受けるから、あなたたちはス

     ーをお願い」



エル  「スイッチが入って覚醒したスーは、潜在能力を最大限マックスまで引き出せるわ、

     覚醒スーを可能な限り短時間で発動し、可能な限り長時間維持する実効

     性のある手段が必要よ。残された時間は3日。3日以内に見出さなけれ

     ば、私たちの楽園は潰える」

グレイス「まるで厨二病男子の会話ですわね?」




○8


   職員室。

   タンポポの席に、サクラとグレイスがしずしずと現れる。ふたりはわ   

   ざとらしく白衣とサングラスをかけている(謎の研究員風)。サクラ   

   は紙の束を持っている。

タンポポ「御用ですか?」



   サクラ、無言で紙束をタンポポに提出。

タンポポ「?」



   最初の1ページにタイトル『人間の潜在能力をポーカーにて顕在させ   

   る実証試験とその考察』



   タンポポ、目がテン。




○9


   以下、レポートの記述と回想。

記述  「[被験者Sに対し、ノーリミットテキサスホールデムのオンラインプレ

     イ10分間を投与後、外国語ペーパーテストを実施]」

   パソコンに向かいクリックを繰り返すスー。嫌そうな顔。

スー  「オンライン苦手ですぅー」



記述  「[……効果なし]」

   スー、テストを前に、ペンを握りしめながらスヤスヤ寝入っている。   

   謎の研究員姿のサクラとグレイス、難しい顔をしつつ、結果を記録。   



記述  「[被験者Sに対し、レートを上げて再びオンラインプレイを投与」

   パソコンに向かいクリックを繰り返すスー。嫌そうな顔。

スー  「ふええぇぇん」



記述  「[……効果なし]」

   やっぱり寝入るスー。サクラとグレイス、同様に結果を記録。

タンポポ「(声だけ)レート上げるって、リアルマネーじゃないでしょうね!」




○10


記述  「[被験者Sに対し、ノーリミットテキサスホールデムのヘッズアップに

     よるライブプレイ10分間を投与後、外国語ペーパーテストを実施]」

   スーとサクラが楽しそうにヘッズアップ勝負(グレイスがディーラー)。



   スー、ペーパーテストに向かうととたんにへなへな。少し頑張るが、   

   すさまじく眠そう。

記述  「[……若干の効果を認む]」



記述  「[ライブプレイ30分間に条件を変更]」

   スー、少し頑張る。眠そうだが前回よりマシ。サクラとグレイスが変   

   化に気づいた様子。

記述  「[……効果の向上を認む]」



記述  「[ライブプレイ60分間に条件を変更]」

   スー、頑張る。眠そうだが前回よりさらにマシ。サクラとグレイスが   

   親指を突き上げGJのしぐさ。

記述  「[……さらなる効果の向上を認む]」




○11


記述  「[……ここで、想定外の条件が加わる試験中のアクシデントにより、以

     下の知見を得る]」

   今回はスーとグレイスがヘッズアップ勝負中。フロップ ♡A♣K♢Q。

   グレイス ♢A♠9。

グレイス「どーんとオールインですわ!」



   スー ♠A♡10。

   スーの体内でカチカチと歯車が動き出す描写。



   2つの歯車がカチンと噛み合う描写。

スー  「そのオールイン、コールです!」



   スーがものすごい勢いでペーパーテストをこなしていく。

記述  「[オールインとドミネイトの相乗により、劇的な覚醒時間の向上を認む]」




○12


   タンポポ、目が点のまま、レポートを読み終える。



タンポポ「とてもよくわかりましたが……それで僕になんとせぇと……」

   しずしずと立ち去る研究員姿のサクラとグレイス。



   部室。研究員姿をやめたサクラが、スーに以下の宣言。グレイスは負   

   けっぱなしなので疲れた表情。

サクラ 「というわけでスーはこれから追試まで、あたしらとひたすら勝負だ」

スー  「わーい」



   隣のテーブルは勉強中。スーらがポーカーに興じる様子を、いいなぁ   

   と見つめるニナ、「よそ見しない!」と定規で叩くエルネスタ、すで   

   にグロッキーになって目を回しているクリス。




○13


   時間経過。

   スー、クリス、ニナが教室で追試を受けている描写。



   さらに時間経過。追試後、部室。

タンポポ「お疲れ様でした。追試の結果はみなさん良好です。なんとか面目が立ち

     ました」

   胸をなでおろす部員たち。



タンポポ「むしろ、スーさんが逆に学年トップクラスに躍り出たので、怪しまれる

     ほどでした」

サクラ 「どう切り抜けたんだ?」



タンポポ「……まさかあのレポートが本当に役立つとは思いませんでした……」

   2年生組納得の表情、1年生は頭上に?を浮かべる。




○14


タンポポ「でもよかった。もし追試でもダメだったら、部だけでなく一生徒として

     もいろいろ面倒があったはずですから……」



サクラ 「具体的にどんなヤバいことになんの?」

タンポポ「たとえば親を交えて面談とか」



   ニナが、親を交えてタンポポと向き合って座っている≒お見合いのよ   

   うな妄想を始める。



   赤面するニナ。

サクラ 「おいなに考えてる」

エル  「面談するとしたらクラス担任よ、タンポポ先生じゃないわ」




○15


   ニナ、妄想をかき消して。

ニナ  「そうじゃなくて、その、ありがとうございました。親の呼び出しとなる

     と、私、少し困ったことになるので」

サクラ 「なんで困る?」



エル  「ニナは独りで寮住まいなのよ」

サクラ 「この学校、寮なんてあったの?!」

グレイス「ご実家はどちら?」

ニナ  「500㎞先の山の中です」



クリス 「寂しくないですか?」

スー  「こんど遊びに行きますよ!」

ニナ  「いえあの、お気遣いなく……」



 陰でこっそり、サクラとエルネスタが以下の会話。

サクラ 「よその出身なら、ニナはこの町の地理と歴史を知らないのか」

エル  「これ、次回へのヒキね!」


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