第29話しびれくらげ=カツオノエボシ?

 ったく、温泉っちゅーとなんでモンスターがよってくるんだ。

 独りで行こうと思ったのに、さまようよろいがかぎつけてきて、洗面器にタオルと歯ブラシを持ってついてくる。ホイミスライムはなんの気もなしにふよふよと触手を泳がせて、期待した目つきでじっと見つめてくる。

「入館料はご自分で払ってね」


 そんなわけで露天風呂である。

 腰湯で、でっかいTVを横目に、ホイミスライムがゆだっている。

 そのとき、なんらかの過去の映像とそいつがリンクした。

 こちら→ http://dic.pixiv.net/a/%E3%82%AB%E3%83%84%E3%82%AA%E3%83%8E%E3%82%A8%E3%83%9C%E3%82%B7


 カツオノエボシ。別名しびれくらげ。猛毒を持ったそいつらが、生きたまま浜にさんざん打ち寄せられていた。シュールだったなあ。小学生のときだ。

「痺れクラゲがいるからねー。触ったり踏んだりしちゃだめよー。死者も出ているからねー」

と、引率の先生は言ったが、なぜそんな危険地帯を歩かされねばならなかったか?

 林間学校だったかな? とにかく予定通りにちゃっちゃと進んだわたくしたちだったが、中には刺されてウナコーワを処方された子もいた。資料によるとそんなものでは足りない猛毒のはずだが……まあ、学校の死亡者が報告されてなかったから、生きてはいたんだろうな。

「しびれくらげかあ。踏んだ?」

 興味津々のホイミスライムはなんなんだ。

「踏んだよ」

 わたくしが淡々と答えると、ホイミスライムは頭かわいそうなモンスターのように、お湯に頭頂部まで浸かってみたり顔だけ出してみたり、ということをちゃぷちゃぷやった。

「どうだった?」

 どうだったって……えーと、そうだな。

「風船みたいだったよ。パンパンって割れたよ」

「ふーん」

 そうなのだ。カツオノエボシってクラゲだとは言われていたけれど、水クラゲなんかとは違っていて、打ち上げられててもぱーんと空気が張っていて、踏むと音を立ててつぶれるのだ。危険だからやめろと言われたが、つい余計に五、六匹は潰したきがする。

「貴重な体験をしたね」

「ああ、そうね」

 なんか気持ち悪い会話だった。

 しかしまあ……腰湯にザーンとくるぶしまで浸かってもじもじしているさまようよろいがちょっとおかしかった。

 君、でかすぎ。

 さまようよろいとならんで、コーヒー牛乳を飲む。

 あ~、うんまい。

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