01.白紙のページ
ここに白紙のページがあります(正確にはありました、ですね)。
私がこのページにこの文字を書き込むまで、このページにどんな言葉が書き連ねられるか、その可能性は幾多もあったことでしょう。
実際にはこのページに記されるべき言葉が決まっていたとしても、私の実感としてはそこには無限大の可能性があったのです。
私はこのページに全く別の話題を記していたかもしれませんし、あるいはいつまでも何も書かなかったかもしれません。
もしくは文字ではなく絵を描いていたかもしれませんし、あるいはこのページそのものを破り捨てていた可能性もあります。
そういった可能性がなかった、とは神ならざるこのチュニィには判断出来ないのです。であるからには、チュニィにとってはまさしく無限の可能性がそこにあったのでしょう。
無論それは、白紙のページに限った話でもありません。私の行動全てには、取り得ることが可能なありとあらゆる可能性が存在しているのです。
それは善くも悪くも、です。
明日私は誰かを殺すかもしれません。事実それは可能な行動です。可能な行動であるということは、そうする可能性もまた存在しているのではないでしょうか。
確率的に言って、現存する人類は全て人殺しの子孫でしょう。どうして私だけにそうなる可能性がないと言えるでしょうか。
しかし、私は昨日人を殺すことはしませんでした。昨日私が誰かを殺してしまうという可能性は、今日になった時点で潰えてしまいました。
生きていくということは、可能性を限定していく行為なのでしょう。可能性が増える、なんていうことが普通に生きていてあり得るでしょうか?
私の持つあらゆる可能性がなくなる時、それは私が死ぬ時でしょう。
私は死に向かって生きています。私の持つ、あらゆる可能性を少しずつ、けれど確実に減らしながら。
今やこのページは白紙ではなくなりました。このページが白紙であるという可能性は、残念ながら失われてしまったのです。
それが本当に残念な出来事なのかどうかは、吟味が必要なのでしょうけど。
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