EVE-n

盛元聡

Prologue

今宵はクリスマス・イヴ。

君の19歳の誕生日だ。


おめでとう。


本当に、おめでとう。


君は今、赤い三角帽子を被って洋服屋の棚に並んだ毛糸のマフラーをたたみ直しながら…或いは、店先に立ってカップルで来たお客さんに笑顔を振りまきながら、心の奥底にある小さな喜びを、噛み締めているのだろうか?


君はまだ19歳、でももう19歳だ。


ー今しかできないことをしたい。


君は何度もそう口にした。

一度きり、二度と戻れない時間の流れを、君は肌で感じていた。

決して雑多な刹那主義ではなく、大きな人生の中で何かを見出そうとしていた。


どうか、大袈裟にデコレートされた煌びやかさより、その外に立って小さな孤独と戦っている自分のことを、誇りに思って欲しい。


君の笑顔は、多くの人を笑顔にしてきただろう。

笑顔に裏なんてないよ。

君がこれまで考えてやってきたことが、君自身の笑顔を彩る糧になっているんだから。

誰にもない美しい笑顔を持つ大人の女性に、一歩ずつ近づいていると、僕は確信している。


誰に何を言われたって、どう思われたって、君は君なんだ。

そのことを忘れないで欲しい。



そしてそんな君が、僕は好きだ。

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EVE-n 盛元聡 @som

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