バレンタイン2017―2話:イケナイコト


「もぉー先輩、何やってるんですかぁー?チョコレートが口の周りについてますよ?」

「お、そうか」


 わたしは先輩が口を拭う。


「おいしい。作ってくれてありがとう」

「どういたしまして。先輩のためなら何個でも作っちゃうよ?」


と言っても、失敗作のものなので沢山作ってある。バレンタイン本番には成功したものをプレゼントするつもりだ。


「それはありがたい」


 先輩はわたしの瞳を見つめる。そして、キスをする。


「ん」


 先輩のキスはチョコレートの味だった。

 先輩の舌がわたしの口に入って来た。わたしは先輩にされるがまま、それを受け入れる。


「せん、ぱい・・・んっ・・・」


 先輩はわたしに覆いかぶさる。


「好きだよ」


 先輩は耳元でそう囁いた。くすぐったくて、小さく震える。


「かわいい」


 わたしは照れくさくて、顔を背ける。けれど、先輩は顔を正面に向けた。つい、見つめ合って、先輩の瞳に飲まれそうになる。


「・・・いい?」


 先輩は同意を求めた。何を求める同意かはすぐに分かった。わたしはコクリと頷く。そして、先輩はキスをして、わたしの服を脱がし始めた。セーターの下に着ていたワイシャツのボタンが、ひとつひとつ外れていく。ボタンが外れる度にわたしの胸の鼓動は高まっていく。すべてのボタンがはずれ、ワイシャツを脱ぎ捨てる。スカートを脱ぐ。残ったのは、パンツとブラジャーだけ。先輩はじっと、わたしの体を見つめる。


「そんなに見つめないでください・・・」

「いつ見ても綺麗だから、つい見惚れちゃった」

「もぉ」


 先輩はブラジャーのホックを外した。わたしの胸は先輩の目に晒された。何度も見られているけど、未だに慣れない。勝手に腕で隠してしまう。


「隠さないで」

「・・・はい」


 わたしは腕を広げた。


「・・・先輩。あなたの好きにしてください」


 


 ―――わたしが先輩と付き合ってから、1年が経った。



 先輩は未だに彼女と別れていない。けれど、わたしと付き合っている。こんなこと、誰にも知られてはいけない。これは、秘密の関係。世間ではこれを浮気と言うだろう。でも、わたしは先輩を愛している。先輩もわたしを愛している。そして、先輩は彼女を愛しているし、彼女は先輩を愛している。

 わたしと先輩の関係は、去年のバレンタインから始まり、もうすぐ1年を迎えようとしていた。そして、1年を迎えると共に、先輩との関係がバレてるんじゃないかと不安になる。


「先輩、気持ちよかった?」

「気持ちよかった」


 そう言って先輩はキスをして、わたしの胸に弄り入る。くすぐったいけど、凄く先輩がかわいく見えて、抱きしめる。


「先輩、わたしたち―――」


 この関係を続けるんですか?

 その言葉は喉に引っ掛かって、飲み込んでしまった。


「どうしたの?」


 先輩は不安そうに顔を上げた。

 そんな顔しないでください。わたしが悲しくなっちゃう。


「もう一回、シてもいいですか?」



 先輩が彼女と楽しそうに話している。わたしはそれを羨ましく眺める。2人きりの時でしか幸せを噛み締められない。そんな苦しみが、徐々にわたしの感情の受け皿に溜まっていた。学校でも、2人きりの時みたいにイチャイチャしたい。けれど、それはできないから、2人きりになった時はお互いの感情が爆発を起こして、激しく愛し合う。


 ―――それがイケナイコトでも。


 





 





 




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