第20話

 ルーレを後にしてまた道を歩いていく。

 今度の行き先はカイムラーバント!

 私は胸を躍らせて進んだ。


 約二時間歩いて、マッソイ方面とカイムラーバント方面の、分かれ道に到着した。

 地図を逆さに持って今いる所と、これから行く所を確かめる。

 この道を左に行けばいいのね。

 地図を片付けて左の道を歩いていく。


 前からも後ろからも大きな荷物を持った人や、旅行者を乗せた馬車、荷物を運んでいる馬車等、様々な人達が行き来している。

 猫達の言っていた通り人の多い街なんだ。

 今度の街は犬の街だったりしないかなと、ちょっと期待していたけど、どうやら私の期待は外れそう。


 しばらく歩いていると景色が段々と変わってきた。

 海は後ろに左右には森や山が見えるようになった。

 道も少し登り坂になっていて歩くのが大変だ。


 すると荷物を積んだ一台の馬車が、私の隣をゆっくりと進む。

 私が顔を上げると、お爺さんが声をかけてきた。


「こんにちは、お嬢さんはカイムラーバントに向かってるのかい?」

「こんにちは! はい、そうです!」

「登り坂が多くて大変だろう、汚い馬車だけど後ろに乗っていきなさい」


 そう言ってお爺さんは馬車の後ろを指差した。

 私はお礼を言って馬車の後ろの部分に乗せてもらった。

 馬車はのんびりとカイムラーバントへ向けて進んで行く。


「そうかそうか、お嬢さんは幸せの宝玉を探しに、この国にやってきたのか」

「はい、幸せの宝玉があれば、パパやママ、それに友達も幸せにできるんじゃないかって」

「優しいお嬢さんだ、女神様もきっとお嬢さんの力になってくれるに違いない」


 お爺さんはそう言って微笑んでくれた。

 私は絶対に幸せの宝玉を見つけようと改めて思った。


「ほら、カイムラーバントが見えてきたよ」


 馬車に積まれている荷物越しに前方を眺める。

 お爺さんが指差す先に、大きな街が広がっていた。

 わぁ、本当に大きな街だ!

 丘の上から見るカイムラーバントは、とてもきれいな街だった。


 それから数十分で私を乗せた馬車は、カイムラーバントに到着した。

 街の中はとても綺麗で、まるでお伽噺の中に出てくるような街並みだった。

 図書館があるという街の中心部で馬車が停車する。

 私は声をかけてくれた優しいお爺さんと、ここまで運んでくれたお馬さんにありがとうとお礼を言った。


 手を振って馬車を見送った後、私はカイムラーバントの街を歩き出す。

 馬車に乗ってきたおかげで、まだまだ空は明るい。

 まずはホテルを探して街を歩いていく。


 カイムラーバントは人で溢れている。

 あっちを見てもこっちを見ても人だらけ!

 不思議の国の人が、全員集まっているんじゃないかと、錯覚してしまうほど人が多い。

 こんなに賑やかな街を見たのは初めてだった。


 この街もマッソイと同じように、お店があべこべだった。

 ホテルに見える建物に入ると、とても広い服屋さんだったり、見た目は大きいのに中は凄く狭い占い屋さんだったり、マシュマロのように柔らかい建物があったり等々。


 ホテルを探すのも一苦労だったけど、私はようやくホテルを見つけることができた。

 見た目はお城、中もお城のように綺麗な造りだ。

 おこづかいが足りるか心配だったけど、受付のお姉さんに話を聞くと驚くほど安く宿泊できるようだった。


 チェックインを済ませて部屋に案内される。

 部屋の中もびっくりだった。

 まるでお姫様の部屋みたいだったから。

 でもお姫様の気分になるのは、少しおあずけにして私はホテルから出た。


 図書館はどこにあるんだろう?

 幸せの宝玉の本は見つかるかな?

 そんな事を考えながら、私のカイムラーバントでの活動が始まった。

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