第19話

「ラヌーの猫達は悪くなかったのニャー」

「ルーレの猫達の仕業だと思っていたニャー、反省するニャー」


 私はルーレの街の大きな建物の一室で、猫達と話をしていた。

 ラーカスとギュスクは、お互いに疑っていた事を謝り争わずに済んだ。


「これからはラヌーの猫達と力を合わせて生きていくニャー」

「アリスティア、ルーレとラヌーを繋いでくれてありがとうニャー」


 猫達が集まってきて次々にお礼を言ってくる。

 私は皆の頭を撫でて、ルーレとラヌーの関係を祝福した。


「ルーレとラヌーを繋ぐ迷路を取り壊すニャー」

「もう争いは起きないから迷路なんて必要ないのニャー」


 仲良くなった猫達は、すぐに行動に移った。

 それから――。


「おう、猫達、釣れた魚を持ってきたぜぇ!」

「ありがとうニャー」

「これからは毎日お魚が食べられるニャー」


 私達が海賊と勘違いした漁師さん達も、ルーレとラヌーの猫達の為に、こうしてお魚を運んできてくれるようになった。


「アリスティア、本当にありがとうだニャー!」


 皆の幸せそうな姿を見て、私はとても幸せな気持ちになれた。




 ルーレとラヌーのお魚問題が解決した次の日の朝。

 猫の臭いのするベッドから抜け出して、うーんと伸びをする。

 ホテルの部屋をじっくり眺め、私はまた旅をする為に荷物を整理した。

 お世話になった部屋に別れを告げて、私はホテルのロビーへ向かう。


「アリスティア、またこの街に来た時はご利用してくださいニャー」

「うん、また泊まりに来るからね!」


 最初は驚かされたロビーの猫達にお礼を言って出発する。

 空は今日も真っ青でとても良い天気だった。

 私は少し急ぎ気味にラーカス達のいる建物に向かう。


 建物の前には、たくさんの猫が集まっていて、私を歓迎してくれた。

 猫達に挨拶を済ませると、私は中に入る。

 案内係の猫達に案内されてラーカスとギュスクの待つ部屋へ。


「おはよう、ラーカス、ギュスク」

「おはようニャー」


 挨拶をして私は用意されていた椅子に座る。

 それからこの街に訪れた理由を改めて話した。


「この街に幸せの宝玉……光る玉があるってマッソイで聞いて来たの」

「光る玉かニャー、確かに昔あったと聞いているニャー」

「昔ってことは、やっぱり今はもう無いって事?」

「そうだニャー」


 光る玉はもうルーレには無い。

 私はラーカスの言葉に肩を落とした。

 するとギュスクが、ゆらゆらと尻尾を振りながら聞いてきた。


「アリスティアは幸せの宝玉を探してるのかニャー」

「うん、その為に私はこの不思議の国にやってきたの」


 ラーカスとギュスクは顔を見合わせて頷く。

 何か知っているのかな?

 私はラーカスとギュスクの言葉を待った。


「それなカイムラーバントに行くと良いかもしれないニャー」

「あそこは人がたくさん住んでいるから、色んな話が聞けると思うニャー」



 そういえばルーレに向かってる時に分かれ道があった!

 私はテーブルの上に地図を広げて、ルーレからカイムラーバントへの道を確かめる。

 距離は大体マッソイからルーレくらいの距離だ。

 少し大変だけど歩いていけないことは無い。


「カイムラーバントには大きな図書館があるニャー」

「そこできっと幸せの宝玉の本も見つかるはずニャー」


 ラーカスとギュスクの言葉に私は力強く頷いた。


「困った事があったらいつでも我々の所に来るニャー」

「今度は俺達がアリスティアを助けるニャー」

「ありがとう! ラーカス、ギュスク!」


 私は彼等の小さな前足と握手をして立ち上がった。

 ここに幸せの宝玉が無かったからって、くよくよしていられない。

 次の目的地はカイムラーバントだ!


 建物の中にいる猫達全員と一緒に外に出る。

 外には街中の猫達が集まっていて、私の出発を見送ってくれた。

 猫達に大きく手を振って私は歩き出す。


 カイムラーバントはどんな街だろう。

 大きな図書館で幸せの宝玉の手がかりは掴めるかな?

 色んな事を考えながら、カイムラーバントへ続く道を進んだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る