第16話
ルーレの街は朝から慌ただしかった。
ホテルから出ると街の猫達が走り回っていた。
皆寝ずにお魚を独占してる誰かを探していたのかも。
私もすぐにラーカスのいる建物に向かった。
その間にもすれ違う猫達は、あっちに行ったりこっちに行ったりしている。
ラーカスがいる大きな建物に到着すると、二匹の猫が出迎えてくれた。
「おはよう、皆忙しそうだね」
「アリスティア、おはようニャー」
「お魚の為に皆頑張ってるニャー」
二匹の猫に連れられてラーカスの元へ。
ラーカスは次から次へとやってくる猫達に指示を与えていた。
「おはようラーカス」
「おはようニャー、残念ながらまだ手がかりは見つかってないニャー」
一晩ではさすがに見つけられなかったみたい。
私は自分も何か手伝えないか聞いてみた。
「私にできる事は何かない?」
「そうだニャー、ラヌーの猫達に我々が集めた情報を伝えに行ってほしいニャー」
ラーカスはそう言うと、一通の手紙を咥えて私に差し出した。
私は手紙を受け取りすぐに暖炉からラヌーへと向かった。
ラヌーの猫達も朝から大忙しのようだ。
子猫から大人の猫までたくさんの猫が走り回っている。
私は猫達を踏んでしまわないように、気を付けながらギュスクのいる建物に向かって走った。
ギュスクは赤い建物の前で猫達と会話をしていた。
「おはようギュスク、ルーレのラーカスから手紙だよ」
「おはようニャー、手紙ニャー?」
ラーカスの手紙をギュスクに渡す。
ギュスクは器用に手紙を広げると内容を見て頷いていた。
どんなことが書かれてあるのか気になり覗いてみたが、猫の言葉で書かれてあって内容はわからなかった。
「なんて書いてあるの?」
「ニャー、ルーレ方面では手がかりが全然見つからないそうだニャー。そこで四方を海に囲まれているラヌー方面を徹底的に探す方針を固めているらしいニャー」
ラヌーは小さな島にある街だとギュスクは教えてくれた。
「ルーレの猫達も一緒なら捜索も捗るニャー。ぜひ手伝ってほしいとラーカスに伝えて欲しいニャー」
「うん、わかった!」
私はまたルーレに戻るために走る。
壺の小屋に入ると、今度は迷うことなくルーレに繋がる壺に飛び込んだ。
通路を通ってルーレに戻った私は、急いでラーカスにギュスクの返事を教えた。
「ニャー、それじゃあこれから捜索隊を編成してラヌーに向かうニャー」
ラーカスが指示をすると数匹の猫が建物を飛び出していった。
たくさんの猫達が建物に集まり、部屋の中から廊下まで猫だらけになった。
「それでは、これからラヌーに向かうニャー! 準備は良いかニャー!」
「ニャー!」
猫達は返事をすると次々に暖炉の中に入って行く。
捜索隊のメンバーが全員入った後、ラーカスと私も暖炉に入った。
通路を抜けて真っ直ぐ進もうとしたが、いつの間にかフクロウがまた寝ていて、私達は迷路を抜けてラヌーに向かう。
「ここはどうして迷路になっているの?」
「ルーレとラヌーは昔から縄張り争いを続けていたニャー。その際にお互いの縄張りに簡単に入ってこれない様にこの迷路が作られたそうだニャー」
そういえばラーカス達は、最初はラヌーに攻め込むなんて物騒な話をしていたっけ。
もう少し遅れていたらここが、猫達の戦いの場になっていたかもしれない。
そうならなくて良かったと心の底から思う。
私と猫達は迷路に迷いながらも、なんとかラヌー方面へとたどり着いた。
今度は私とラーカスが先頭になりラヌーへ続く通路を進む。
壺の小屋ではラヌーの猫達が、ルーレの猫達の到着を待っていた。
「よく来たニャー、ラヌーのリーダーをしているギュスクだニャー」
「ニャー、歓迎感謝するニャー。ルーレのリーダー、ラーカスだニャー」
ラーカスとギュスク、はお互いに体をすり寄せて挨拶をする。
それから街の広場に向かって歩き出した。
私はルーレから来た猫が全員出てくるのを待つ。
壺からぴょんぴょんと飛び出てくる猫達が可愛かった。
ラヌーの街の広場に集まった猫達の数えきれない程だ。
どの猫がどっちの街の猫か私にはわからなくなったけど、猫達にはちゃんとわかるようだった。
「これよりラヌー周辺及び島全体の捜索を行うニャー!」
「怪しい者や建物を見つけたら、近づかずにまず報告するニャー!」
ラーカスとギュスクが捜索の説明をする。
集まった猫達は皆真剣に話を聞いていた。
「それでは、捜索開始ニャー!」
ラーカスとギュスクの合図と共に、猫達が広場から駆けていく。
何かが見つかればいよいよ私の出番だ!
私はぐっと手を握りしめてその時を待った。
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