第13話
「待って!」
私は咄嗟にそう声を上げていた。
猫達は私の顔を見て首を傾げる。
「どうしたんだニャー?」
「一戦交えるって……戦うってことだし、その危険だと思うの!」
「危険は承知の上ニャー」
ラーカスの言葉に他の猫達が同意する。
でも、私はルーレの猫達がケガをしてしまうのが嫌だった。
だからこう提案してみる。
「いきなり戦うのは危ないから、まずは私がラヌーへ行って話をしてくる」
猫達は顔を合わせ、私の方へ向き直った。
「話してどうにかなる相手だとも思えないけどニャー」
「それでも、いきなり争うのは良くないと思うの」
そんな危険な相手なら、尚更ルーレの猫達に行かせるわけにはいかない。
ラーカスは相談し合うと私にこう言った。
「ニャー、じゃあアリスティアに偵察をお願いするニャー」
「うん、わかった!」
これでひとまずルーレの猫達の危険は先延ばしにできた。
でもラヌーの人達というのはどんな人達なんだろう。
怖い人達じゃなければいいんだけど。
「ラヌーは海の向こうにあるニャー」
「どうやって海を渡ればいいの?」
舟で渡るのかな?
でも私、舟なんて漕いだことない。
ラーカスは立ち上がると私に手招きする。
「こっちニャー、ついて来るニャー」
テーブルからぴょんと飛び降りて、ラーカスは部屋から出ていく。
私も椅子から立ち上がりラーカスに続く。
その後ろから他の猫達もついて来ていた。
辿り着いたのは隣の暖炉のある部屋だった。
「ここから行くニャー」
そう言うとラーカスは暖炉の前に座った。
どう見ても暖炉だけど、ここが入口らしい。
「それじゃあ、お願いするニャー」
「うん!」
私は四つん這いになって暖炉の中へと入った。
暗い暖炉の中を少し進むと、立ち上がれるくらい天井が高くなった。
私は立ち上がって、ぱんぱんとスカートに付いたほこりを払う。
進む程暗くなっていくと思っていたけど、暖炉の中には所々に明かりが灯されていてあんまり怖さは感じなかった。
中は広い部屋になっていて通路がいくつか存在する。
その中の一つに、何故か大きなフクロウが通路を塞いで眠っていた。
私はフクロウに近づき頭を撫でてみる。
しかしフクロウが起きる気配はなかった。
通路の奥を見ると、やはり部屋がありその奥に、私がいま通ってきた暖炉の通路と同じような通路がある。
きっとあそこがラヌーへ繋がる道なんだと思った。
フクロウが退いてくれないと向こうに行けない。
しばらくフクロウを揺さぶったりして起こそうとしたけど、気持ち良さそうに眠っているフクロウに悪い気がしてきて、私は違う道を探すことにした。
通路は二つ。どっちにしようか少し迷ったけど、まずは左の通路に入ってみた。
人ひとりが通れるくらいの通路を抜けると、少し広めの部屋に到着する。
がらんとした部屋には、特に何もなく先へ続く通路も見当たらなかった。
一度最初の広い部屋に戻って、今度は反対側の通路に入る。
今度は部屋ではなく、通路がずっと続いていた。
通路は右に曲がったり左に曲がったり、他の通路と交差していたり、まるで迷路だ。
何度も行き止まりに突き当り、通路を引き返しては違う通路に。
ずっと出られなかったらどうしよう。
そんな不安な気持ちにもなってくる。
時間にして二十分くらい迷って、私はようやく迷路から解放された。
ふぅと息を吐き出して、私は更に先に進む。
次は小さな部屋で、部屋のから水が湧き出ていた。
ここは迷路に疲れた人が休憩する部屋なのかも。
私は湧き水を飲んで喉を潤す。
一息ついた後、水が湧き出ている部屋の、奥にある通路を進んで行く。
するとまた通路は迷路になっていた。
こんな造りになっているのは、どうしてだろうと疑問に思いながらも私は先へ先へと進んだ。
時間はかかったが迷路を突破した私は、とうとうルーレの暖炉から来た部屋の反対側へと到着した。
大きなフクロウは相変わらず同じ場所で眠り続けている。
部屋の中を見回すと、どうやらルーレ側と同じ部屋の造りになっているようだった。
迷路のある通路の反対側にも通路があるけど、おそらく部屋になっていて特に何かがあるわけじゃないだろう。
念の為に調べてみたところ、やはり何もなかった。
再び隣の広いへやへ戻ってラヌーへ続く通路を歩いていく。
明かりの灯っていた通路から、明かりの無い真っ暗な通路を通って、私はラヌーへと向かった。
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