第12話
猫の街ルーレには本当にたくさんの猫がいた。
あっちを見てもこっちを見ても、必ずどこかに猫の姿がある。
街の造りも独特で道のあちこちが、公園の様な広場になっていた。
猫達はそこで、ごろごろと寝そべったり、他の猫と会話していたり。
私の国とは違う猫達の日常が、楽しくて仕方なかった。
どの猫に話しかけようかな?
広場にいる猫に近づいて行く。やっぱり猫は逃げずにごろごろしていた。
腰を屈めて挨拶してみる。
「こんにちは」
「ニャー? こんにちはニャー」
ごろんと転がって猫は私の顔を見上げた。
私が話しかけた姿を見て、他の猫達も集まってくる。
あっという間に私の周りは猫だらけになってしまった。
「この街に光る玉があるかもって、マッソイの猫に聞いてきたのだけど」
「光る玉ニャー?」
猫達はお互いに顔を見合わせてニャーニャーと鳴く。
誰か知っていると良いんだけど。
その内一匹の猫が話を聞かせてくれた。
「前は確かにあったニャー。でも今は無いかもニャー。」
前はあった!
幸せの宝玉かもしれない光る玉が、前はこのルーレに確かに存在していた!
どうしてなくなったのかわからないけど、猫達は今の話を聞いて少し元気がなくなった。
「今ルーレの街は大変な事になってるニャー」
「大変な事?」
「そうニャー」
何が大変なんだろう?
一見大変そうに見えない呑気な話し方の猫達は、ルーレで起こっている大変な事を話し始めた。
「とてもとても大変なことなのですニャー」
「僕達の生活が脅かされているのニャー」
「え、生活が脅かされて!?」
私は驚いて周囲の様子を見てみる。
話を聞くまではそんな風には見えなかったけど、確かにどの猫もあまり元気があるようには見えない。
一体この街で何が起こっているんだろう?
私はまた周囲の猫達に、視線を戻して話を聞くことにした。
「一体何があったの?」
「ニャー。ここ二週間、僕達はお魚を食べてないのニャー」
「お魚食べたいニャー」
ルーレの猫達にとっては大変な出来事だ!
海が近い街なのに、大好きなお魚が食べられない。
私は元気の無い猫達の頭を撫でてあげた。
「詳しいことは、あの大きな建物の中で聞いてほしいニャー」
「対策本部ニャー」
猫達が腕を伸ばす方向にある大きな建物を見つめる。
人間でいうところの、町長さんがいる所なのかもしれない。
「うん、じゃああの建物を訪ねてみるね」
「どうか僕達にお魚を食べさせてほしいニャー」
「よろしくおねがいしますニャー」
広場の猫達と別れて白くて大きな建物を目指す。
その間に見かけるお店を眺めるけど、確かに魚屋さんは見当たらなかった。
大きな建物の前に立ち大きなドアを開ける。
猫達はどうやってこのドアを開けているんだろう?
不思議に思ったけど、今はそれどころじゃない。
ドアを閉めると二匹の猫がやってきて大きな声を上げた。
「誰だにゃー!」
「何の用だニャー!」
猫達は興奮してふーふーと息を荒げて、背中の毛を逆立てている。
私は猫達を刺激しないように優しく話しかけた。
「この街の猫達が困ってると聞いてここにやって来たの」
「ニャー? 僕達を助けてくれるのかニャー?」
「それなら大歓迎だニャー。さぁ奥へどうぞニャー」
二匹の猫に連れられて奥の部屋へと案内される。
そこでは数匹の猫達が、テーブルの上に座って真剣に話し合ったいた。
「このままでは我々は滅びてしまうかもしれないニャー」
「ルーレを守る為には戦わねばならないニャー」
なんだか物騒な話をしている。
テーブルの上の猫達は、私に気が付くと警戒した様子を見せた。
「む、誰だニャー」
「人間が一体何の用だニャー」
すると私を案内してくれた猫達が代弁してくれる。
「この人は僕達を助けてくれる人だニャー」
「お魚問題の解決策を考えてくれるそうだニャー」
解決策を考える約束はしていないけど、今光る玉の話をしても聞いてもらえないかも。
それならルーレの猫達の為に、私でも手伝えることをしようと思った。
「人間が味方に付いてくれるなら心強いニャー」
「ささ、こっちへ来て座るニャー」
だれも使ってない椅子に座って、テーブルの上の猫達を見つめる。
表情こそよくわからないけど、誰もが真剣なんだと感じさせられた。
「我の名前はラーカス。ルーレの街のリーダーをしているニャー」
「私はアリスティア、よろしくねラーカス」
「よろしくニャー」
ラーカスを筆頭に他の猫達も挨拶をしてくれた。
「それでは引き続きお魚問題対策を進めるニャー。アリスティアはこの問題をどこまで知っているニャー?」
「街でお魚が食べられなくなって、困ってるところまで教えてもらったよ」
「それなら話は早いニャー。そう今我々はお魚が食べられなくなって困っているニャー。でも原因は突き止めてあるニャー」
なんとルーレの猫達はもう原因を突き止めていた。
私の出番があるのかわからないけど、私は黙ってラーカス達の会話を聞く。
「あいつ等が原因だニャー!」
「そうだあいつ等に違いないニャー!」
他の猫達が声を荒げる。
ラーカスはそんな猫達を静かにさせると話を続けた。
「この街ルーレから北西の海を挟んだ先に、ラヌーという街があるニャー」
「ラヌー?」
私はポシェットから地図を取り出してテーブルの上に広げる。
ラーカスは地図の上に乗りルーレに前足を置いた。
そこからつつーっと北西に移動させてラヌーの街の位置を教えてくれる。
「この街だニャー。ここの連中が我々が食べる分のお魚を独占しているんだニャー」
「そうなの、それは酷い!」
「だから我々はラヌーの連中と一戦交えようという計画を立てているニャー」
一戦交える。
相手がどんな人達なのかわからないけど、ルーレの猫達にとってそれはとても危険なことじゃないのかと私は思った。
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