第11話

 ルーレの街に到着した。

 白いレンガが使われた建物が多くとても綺麗な街並みだ。

 歩いていると猫とすれ違った。人間に慣れているのか、猫は逃げようともせずに堂々と私の横を通り過ぎていく。


 他にも道の脇や屋根の上で眠る猫、お店の前にちょこんと座っている猫の姿が見られた。

 その代りに人の姿は少なく、少し寂しい雰囲気も感じられる。

 光る玉がこの街にあるという話だけど、誰に話を聞けば良いんだろう?

 とにかくまずはホテルを探して荷物を置きたい。

 幸せの宝玉の情報を集めるのはそれからだ。


 マッソイの様に、見た目と中身が違うかもしれないから注意深く観察していく。

 しかし、服を扱っているお店にはちゃんと服が。野菜を扱っているお店にはちゃんと野菜が置かれていた。

 あれー、ここはあべこべじゃないのかな?

 他のお店も調べたけど、やっぱり扱ってる品物と看板に違いがあったりはしなかった。


 ただどのお店にも店主さんが見当たらない。

 買い物する時はどうすればいいんだろう?

 不思議に思いながらホテルを探していると、大きな建物を見つけることができた。

 看板にはホテルと書かれているから、きっとここがルーレのホテルなのだろう。


 中に入ってみると、白い壁に赤い絨毯という、ホテルらしいホテルだった。

 でもホテルで働く人の姿は見えない。

 受付へ向かうと、カウンターの上に白い猫が一匹丸くなって眠っている。

 どうしよう、ホテルの人は留守なのかも。

 私が困っていると、カウンターの上の猫が、顔を上げてこっちを見つめてきた。


「いらっしゃいませニャー」


 私は自分の体が固まるのがわかった。

 え、今この猫喋らなかった?


「お客さんじゃないのかニャー?」

「ね、猫が喋ったー!?」


 私はびっくりしてまじまじと猫を眺める。

 喋ったよね、間違いなく今この猫喋ったよね。

 ホテルの人が隠れている雰囲気も無いし、絶対間違いない!


「何を驚いているニャー。あ、お客さん海外の方かニャー? それなら仕方ないニャー」


 受付の猫は納得してうんうんと頷く。


「猫が喋るなんて普通の事だニャー」

「ふ、普通なのかな……?」


 驚いた! まさか猫が話しかけてくるなんて思わなかった!

 後ろを振り返るとたくさんの猫達が、ホテルのロビーを行き来している。

 あの猫達も皆喋るんだろうか?

 もしそうなら、この街はすごく楽しい街だと思った。


「宿泊するならこちらにサインを書いてニャー」

「あ、うん!」


 宿帳にさらさらと自分の名前を書いていく。

 猫だから文字が書けないのかもね。

 ベルボーイらしき黒猫が現れて部屋へ案内してもらう。

 辺りをよく見ると、他のお客さん達が、猫と会話している姿があちこちに見られた。


 案内された部屋は、猫が掃除をしているとは思えない程綺麗だ。

 でも真っ赤な絨毯の上に、若干の抜け毛が落ちているところが少しおかしかった。


「ではごゆっくりどうぞですニャー」

「ありがとう」


 ベルボーイの猫は足音もなく部屋から出ていく。

 今日は朝から歩きっぱなしだから足が痛い。情報収取はもう少し後からにしよう。

 ぼふっとソファに座ると猫の臭いがした。


 街に人が少なく感じてたけど、猫が喋れるとなると最初に感じた印象とは正反対になる。

 本当はすごく賑やかな街なんだと気付いた。

 私はソファから立ち上がって、窓からルーレの街の様子を眺める。

 道にはたくさんの猫が歩いたり寝ていたりしたいる。


 途端に胸がわくわくと躍り出す。

 猫達はどんな暮らしをしてるんだろう?

 こんなに立派な建物を猫達が立てたのかな?

 どうして猫達は喋ることができるんだろう?

 疑問で頭の中がいっぱいになる。


 それにこの街で幸せの宝玉が見つかるかもしれない。

 猫が幸せの宝玉を持っている。そう考えると素敵だなと思った。


 私はしばらくのんびりと部屋の中でくつろいだ後、情報収集の準備をして部屋から出た。

 どんな話が聞けるか楽しみ!

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