第9話
ノーニャちゃんは嬉しそうに本を胸に抱き歩いている。
無事に本が戻ってきて良かった。
嬉しそうな彼女の姿を見ていると私まで嬉しくなってくる。
後ろではホルン君が口元を綻ばせて歩いていた。
素直じゃないけど、ノーニャちゃんを心配する辺り悪い子ではないのかもしれない。
私達は満点の星空の下で、お互いにお互いの無事を喜びあって、色んなことを話ながらマッソイの街へ戻る。
「そういえば聞いてなかったけど、アリスティアちゃんはどうしてこの国に?」
「私は幸せの宝玉を探しに来たんだぁ」
「幸せの宝玉だって? そんなものお伽噺の中の話じゃないか」
ホルン君が私の言葉を聞いて笑う。
不思議の国の子にとっても、やっぱりお伽噺の中だけの存在みたい。
「その為に一人でこの国に? すごいね、アリスティアちゃんは」
「えへへ」
褒められると照れてしまう。
私とノーニャちゃんを交互に見て、ホルン君はため息をついていた。
「ノーニャもこのくらい行動派だとな」
「そうね、私もアリスティアちゃんを見習わないと」
「でもホルン君、ノーニャちゃんがいなくなったら寂しいんじゃないの?」
「なっ!? んなことねーよ!」
ホルン君は顔真っ赤にして否定する。なんともからかい甲斐のある子だ。
不思議の国に来たばかりだけど、友達ができて良かった。
幸せの宝玉が見つかれば、この二人の事も幸せにできるはず。
私は絶対に見つけようと改めて心に誓った。
マッソイに帰って来た私達は、案内板の前で今後の事を話し合う。
「じゃあ明日にはまた旅立ってしまうのね」
「うん、ルーレの街で、光る玉が見つかるかもしれないって教えてもらったの」
「そんなに寂しがるなよ、ノーニャ。ルーレまで半日くらいの道のりだ。またすぐ会えるだろ」
私とノーニャちゃんはホルン君の言葉に頷く。
少し寂しいけどすぐに会える距離だから大丈夫!
「また会いに来るよ!」
「その時はまた一緒に遊ぼうね、アリスティアちゃん」
「もちろん!」
「気を付けてな、アリスティア」
「うん、ありがとう!」
私は二人に大きく手を振って二人と別れる。
明日には一度マッソイから離れるから、今の内にマッソイの夜の風景を楽しんでいかないと。
街並みとすれ違う街の人を眺めて、のんびりとホテルへ戻った。
「おかえりなさいませ、アリスティア様。浴場の準備が整っております」
本当に私のしたい事を先読みしてくれるホテルだ。
私はお礼を言って部屋に戻り、旅行鞄から着替えを取り出すと、ホテルの浴場に向かった。
脱衣所で服を脱ぎ用意されていた籠の中に放り込んで、いざお風呂へ。
入ってみて驚いた。浴場は広く開放的で床も柱も真っ白だ。
「わぁ、広い!」
他の旅行客がいる事も忘れて、思わず大きな声を上げてしまう。
お風呂のお湯で体を流して、体と髪を洗った。
その後、浴槽のお湯に体を浸し一日の疲れを取っていく。
この瞬間がすごく幸せに感じる。
ゆったりとお風呂に浸かり、時に観光客の小さな子と一緒に遊んだりして、お風呂の時間を楽しんだ。
「あー、気持ち良かった!」
お風呂から出た私は、部屋に戻るとそのままベッドに倒れ込む。
そして今日の出来事を思い出していた。
「今日は色んなことがあったなぁ」
長い船旅を終えて久しぶりに大地に足を着いた。
不思議の国の港町マッソイの風景を楽しみ、自国では食べたことの無い料理も食べた。
それからノーニャちゃんと友達になり、二人で怖がりながらも森の中にある洞窟に行った。怖かったけどすごく楽しかった。
その後私は穴に落ちてボルドさんと出会った。あそこはどこだったんだろう?
無事にマッソイ北東の洞窟に帰って来て、ホルン君という友達ができた。
幸せの宝玉の在りかはまだわからないけど、ルーレの街に行けば何かわかるはずだ。
明日からまた頑張ろう。
必ず幸せの宝玉を見つけて、皆で幸せになるんだ。
考えていると段々目の前が暗くなり私はそのまま眠りについた。
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