第27話 SOS ②
「!」
唐突に、リーファちゃんが普段より更に鋭い目つきになった。
「どうしたの?」
「うごくな。しずかにしろ」
小声で言われた。凄まじい緊張感と真剣さが伝わってくる。周囲の様子を
そういえば、よく見てみると、壁を2枚挟んだ向こうの窓際と玄関と裏口にそれぞれ2人、今私達がいる空き家は2階建てなのだが2階の窓際と屋根裏にそれぞれ1人、合計8人……いや、空き家から結構離れた所にも2人いたので合計10人に家の周りを囲まれていた。全員老若男女揃ったごく普通の人々に見えるが、どうも気配を殺してこちらになにかちょっかいを出そうとしているようだ。何だというのだろう。怪しい。リーファちゃんはこの気配を察知したのだろう。
と、向こうの窓際の2人に動きがあった。なにか手榴弾のようなものを振りかぶって投げるような素振りをしている。窓ガラスを割りつつそれを空き家の中に投げ込むつもりだろう。これはいけない。指を差してリーファちゃんに伝えた。
「あっちの人、何か投げてきそうだよ」
「!?」
リーファちゃんは一瞬当惑気味の表情をした。そしてまだ当惑が混じった半信半疑の表情のまま、床に並べられたうちの2枚のタロットカードに一度ずつ素早く触れながら、
『AK377 Yesod-Malkuth』
と言った。同時にそのタロットカードは蒸発するように消し飛んだ。ワンテンポ遅れて、向こうの窓際からドサッという音。見るとそちらの二人が地面に倒れていた。
「どういうコトだ?」
リーファちゃんは私に訊いた。質問の意味がわからない。
「どういうことだって、何が?」
「……もういい。わたしはにげる。おまえはまもられろ」
ますます意味のわからないことを言われ、立たされてドアの方に背中を押された。転びそうになる。
抗議しようと振り向くと、リーファちゃんはいなくなっていた。
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フリークスレギオン構成員、
彼女の家族の中で唯一特筆すべき点があるとすれば、それは両親が魔法使いだったということだろう。
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リーファちゃんがいなくなった直後。
「我々はウィッチシーカーです!この空き家で立てこもっている魔法使いに
家の周りを取り囲んでいた人の内の一人からそう呼びかけられた。声が家の中だけで反響している。そういう魔法なのだろうか。
それにしても、話が大事になってしまっているらしい。どうやらウィッチシーカーの人達は、リーファちゃんが私を人質に取った立てこもり犯だと思っているようだ。そんなあらぬ誤解は解かないと、と思い呼びかけに応えようとしたが……
「……大体あってるじゃん」
目的も要求もいまいち不明とはいえ、リーファちゃんが私を銃で脅してこの空き家まで連れてきたのは間違いない。誘拐犯か立てこもり犯かの違いである。このままではリーファちゃんが警察にもウィッチシーカーにも追われる身になってしまう。それはあまりに可哀想過ぎる。
「リーファちゃんを追わないと……」
とりあえず合流しよう。何故こんなことをしたのか、話せばわかるはずだ。私は周囲に目を凝らした。
もちろん本人は影も形もないものの、僅かではあるが痕跡は残っていた。言葉で説明するのは難しいのだが、リーファちゃんには、この世の万物にあるはずの気配が完全に無い気配と言うか、『無』の気配があって、それが周りの空間の気配を削り取るように作用しているので逆に目立つのだ。私はその痕跡を追ってリーファちゃんを探すことにした。
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