第19話 FREAKS' SHOW ②


(せんだいメディアテークの屋上に、『魔法管理機構 ウィッチシーカー様へ』と書かれた封筒がいつの間にか落ちていた。以下はその封筒の中に入っていた書状の内容。日本語の手書きで書かれている)



 魔法管理機構 ウィッチシーカー様



 拝啓 時下ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。


 貴機構におかれましては、弊団体に多大なるご支援を頂いている終野黒枝様のお孫様に保護をお受けいただき、誠にありがとうございます。しかしながら、弊組織は残念ながら、貴機構においてお孫様を保護していただいている際、非人道的な監視・監禁を受けているとの情報が入っております。


 当該お孫様は終野黒枝様及び弊団体にとって極めて重要な人物であり、また、今後の弊団体において重要な役割を担うことが予想されております。そのため、弊団体としては、貴機構においてお孫様に対して行われている監視・監禁の状況について、深刻な懸念を抱いております。終野黒枝様もさぞかし悲しんでいることと存じます。


 このような人道的非難に直面している状況下において、弊団体はお孫様の引き渡しを貴機構に求める次第でございます。貴機構におかれましては、弊団体の要望を真摯に受け止め、適切な対応を取っていただけますよう、お願い申し上げます。


 今後とも、弊団体との良好な関係を維持していくため、貴機構との協力を望んでおります。何卒、ご検討を賜りますようお願い申し上げます。



 敬具


 魔法使い互助団体 フリークスレギオン(FREAKS' LEGIONと書かれた赤い文字をそれぞれ別の種類のモンスターの笑顔の頭部が取り囲んでいる、ストリートアート風の画風のロゴが印刷されている)



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 私は、魔法の気配を追ってハピナ名掛丁なかけちょう、アーケード街の方まで来ていた。灰谷君の時とは違って、近くにショートカット出来そうな『隙間』が見当たらなかったので、普通に歩いて行った。


 やはり仙台最大のアーケード街なので人でごった返していた。そこのど真ん中に、魔法の発生源とおぼしき場所はあり、そして一人の少女がいた。


 その眼鏡をかけたおさげで胸の大きな女の子は、路上にしゃがんでタロットカードを並べ、チョークでなにやら魔法陣のような物を書いていた。


 そして不思議な事に、その女の子が奇妙な事をしているにもかかわらず、周りの人は誰一人気に留めていない────というより気付いていないように通り過ぎて行った。


 どういうわけだろう。話し掛けてみた。


「あのー、こんにちは。そこで何してるんですか?」


 女の子は自分に話し掛けられているとは思わなかったのか、一瞬不審そうな表情をした。直後そしてバッと振り向き、二、三歩後ろに下がり、何故か右腕をこちらに向けた。そしてこう言った。


「你能看到我吗?」


 ……中国語?


 私は日本語しか分からない。なので当然何を言っているのか分からなかった。


「あのー、出来れば日本語で」「なかまはいるか?アナタダレだ?」


 女の子は食い気味に言う。奇妙なイントネーションだった。可愛い女の子だったが、その顔色は青ざめていた。落ち着かない様子で辺りをきょろきょろと見渡している。


「落ち着いて下さい。大丈夫ですか?」「私にほんごチョットダケ!かんたんにいえ!」


 女の子は叫ぶように言った。


「えーと、私は終野澄香って言いま……」


「…………!!!」


 女の子は息を呑んだ。右腕をこちらに向けたまま小走りでこちらに駆け寄って来て、私の真横にくっついてきてこう言った。


「ついてこい。いうとおりにしなければころす」


 私の腕に胸の柔らかい感触が、脇腹に金属の硬い感触があった。女の子の右手を見る。


 女の子に突き付けられていたのは、よく見ると小さな拳銃だった。


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