刺激、求めてる?

休みの日の、少し遅い昼御飯。


あなたと私は納豆を混ぜる。


私はいつものようにカラシを2つ入れて、箸でかき混ぜた。



「ホントに辛いの好きだよね。」


納豆を混ぜながらあなたが言う。


「うん。カラシ2つとキムチいっぱい入れたのは、もっと好き。」


「辛口のカレーに辛くするスパイスもかけるしな。」


長年一緒にいるあなたは、私の食べ物の好みをよく知っている。


「刺激物が好きなんだよね。辛いのとか酸っぱいのとか。カラシ、唐辛子、生姜、ワサビ…それから、梅もレモンもミントも好き。」



温かい御飯の上に納豆をかける。


二人して、納豆の糸が扇風機の風に流されないように気を付けながら、納豆御飯を口に運ぶ。



なんてことのない、質素な昼御飯。


これと言っていつもと変わりのない、他愛ない会話。



「刺激求めてるの?」


予想外のあなたの言葉に、私は首をかしげた。



刺激ってなんだ?


ハラハラドキドキ、胸キュンキュンのあれ?


夫以外の人にときめいちゃったりとか?



ないない、有り得ない。


今更、あなた以外の人と出逢いたいとか、新しい恋がしたいとか全然思わないし。



「結婚生活に刺激は求めてないよ。平凡で平和なのが一番。」


なんだそれ、とあなたは笑う。



確かに、恋人同士の頃のようなドキドキはないかも知れないけれど、多分私は、一緒に歳を重ねた今の方が、あなたを好きだと思う。



手を繋いだり抱きついたりすると少し照れ臭そうにするけれど、毎朝行ってきますのキスは欠かさないあなたが好き。



恋愛ドラマやマンガみたいな甘い言葉はないけれど、あなたと一緒に過ごす時間は、穏やかで優しい。




特別な事はなんにもないお昼時。



結婚生活に刺激は要らない。


むしろ、ほんのり甘いくらいがちょうどいい。




「だからあなたがいいんだよ。」



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