第3話 恋活アプリ

恋活アプリをはじめてみると、自分が構えていたほど堅いものではなく気軽にやり取り出来るものだった。そのアプリを通してメールが出来た。簡単に気軽にやり取り出来るからこそ、軽々しい男もいた。2、3通やり取りをして「今日ドライブいかへん?」。こいつは馬鹿なのかと思った。そういう男の考えてることは一つだろう。純粋な女心を踏みにじる野郎は最低だ。


男という生き物は「毎日中華料理を食べてたら飽きるやろ?」という感覚で浮気をするらしい。昨日中華料理だったから今日は和食。明日はフレンチ。食べ物に関しては共感の出来る話だ。男は女を食べ物という目でしか見ていないのかと思った。だから恋活アプリにも、既婚者や彼女がいる人もたくさんいるのかもしれない。今となってはそう思う。


アプリをはじめて色々と話をしてくれる人が一人現れた。彼のプロフィールは他の人とは違い、自分のことを丁寧に書いていた。だからわたしも興味を持った。


「僕はマリッジリングを作る仕事と作家をしています。高校生の頃まで、オーストラリアで住んでいました。音楽はaikoさんが好きです。本も好きで、主に西加奈子さんが好きです。」


わたしの話になってしまうが、わたしは歌手のaikoさんが大好きだ。彼女の歌う曲も、歌詞の世界観も、人柄も、ファッションも、すべて大好きだ。ファンクラブにも入っている。だからこの「aikoさんが好き」というところだけでわたしの中で好印象だったのだ。


わたしはプロフィールには「水族館や動物園、ディズニーランドとシーも好き」ということを主に書いていた。だから彼は気を使ってその話をたくさんしようとしてくれた。だけどわたしが話をしたかったのは「aikoさん」なのだ。


「aiko好きなんですか?」そう聞くとやはり話が弾んだ。近々行われるツアーのこと、好きな曲、ラジオのこと。話が尽きなかった。楽しかった。そして「よかったらごはんでも行きませんか?」と。一度食事くらいしてみよう。わたしもそう思った。


食事に行く日を決めた。彼が会うときに緊張してしまうので、緊張を和らげるために何回か電話をしようと言って電話をすることになった。電話では思った以上に話が弾んだ。さらに色々話をした。仕事のこと、過去の恋愛のこと。わたしは嘘をつけないタイプで、すらすらと自分の話をした。


過去の恋愛といえば、金貸せバンドマンに浮気男。ろくな恋愛をしてこなかった。だから今となっては駄目なことだと気付いているが、この時は自分の弱みを握られるとは考えておらず、簡単に弱さを相手に出してしまっていたのだ。


そして、それからも何度か電話をして、はじめて会う日がやってきた。

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