第37話 大戦終結。そして・・・の回

「じゃあ、決着をつけてくる。」

 エファは靴に生えた羽の力で空へ飛ぶ。フェリックスも背中の羽を使って空へと飛んだ。


「これで決着だ。ゆくぞ」

「きなさい、女子学院の勝利、という未来を見せてやる」


 二人は、極大魔法校歌、の魔力が付与された剣で相手に切りかかる。ここに至っては二人とも小細工は弄さず、正面からぶつかり合った。

 エファの剣とフェリックスの剣が激突し、大爆発が起きる。爆発の中心にいた二人は地面に落下する。


 よろめきなが立ち上がったエファの戦闘衣は見るも無残な状態だった。一方、身軽に立ち上がったフェリックスの戦闘衣に、校歌による損傷は見られなかった。

「為替の分、俺達の校歌の威力が上だったな」

 エファもフェリックスも校歌に手持ちの全資金をつぎ込んだ。残高は無い。つまりお互いに攻撃できない状態だ。この場合、戦闘衣に残っているお金が多い方、今ならフェリックスが勝利者の権限を持っており、勝利を宣言すればその場で勝者となる。

「この勝負、俺達のか……」

「待ちなさい。あんたが勝利宣言したら私は敗者として破産する。それでもいいの」

 エファの言っている意味が分からずフェリックスは怪訝な顔をする。

「当然だろ。それがヴァルキリーシステムの仕組みだ。今更何を言っている」


 ヴァルキリーシステムの勝者には自分が攻撃と防御に使ったお金が返ってくる。敗者には何も与えられない。フェリックスが勝利を宣言した瞬間、エファは敗者となり破産する。

「ふふふ。私はガゼルトを集める為、そこにいる男子学生達の大半からお金を借りてるのよ。一人頭だいたい一ヶ月分の生活費をね。私が破産したらそれが返せなくなるな~」

 エファは他人事のように楽しそうに告白する。エファの言っていることの意味が分からず、怪訝な顔をするフェリックスだったが、突然青ざめる。

「まさか!?」

 フェリックスはクラスメイトが集まっている所に走る。


「皆、借金頼りに、さっきの校歌に手持ちのお金を全額投じてないだろうな」

 一人の男子学生が、全額投じたけど、と手を上げる。それを機に他の男子学生も、俺も僕もと、手をあげる。その数は三十三人にのぼった。

「な、なんということだ。あの女の毒がここまで回っていたとは……」

 フェリックスは力なくよろめく。

「どうしたんだフェリックス。俺たちが勝ったんじゃないのか」

 クリストフが茫然自失としているフェリックスを支える。


「皆があいつにお金を貸しているんだ。俺に勝利宣言はできない。俺達の負けだ……」

「あいつ…… エファ クレディオンにか……?」

 クリストフが、本当か、と問いかける視線で同級生達を見る。

「俺がお金を貸したのはエファさんじゃない。ユーディットさんにだ」

 最初に告白した男子学生が言った。

「それは確かなのか。本人に直接渡したか、振込なら、受取人を確認したか」

 クリストフが問いただすと、男子学生は口ごもる。


「ハンドルネームのランドグスしか確認してないけど、ユーディットさんのはずだよ……」

「ランドグスは私よ」

 エファが意気揚々とフェリックス達に近づいてくる。

「なんだと!?」

 ハンドルネーム、ランドグスにお金を貸した者達が驚愕する。

「分かっただろう、クリストフ。おれが勝利宣言すれば、あの女を負かし破産させられる。しかし、そんなことしたら、ここにいる仲間は貸したお金を返してもらえず、今月の生活費を失うんだ。そんなこと……俺にはできない」


 フェリックスが多機能携帯魔機スマホを取り出す。画面に敗北宣言のボタンを表示する。

 悔しさのあまり、プルプルと震える手でフェリックスは、敗北宣言のボタンを押した。その瞬間、エファの勝利が確定した。

 勝利を目前にしての勝利放棄。その悔しさに耐えきれず、フェリックスは慟哭するように、くそぉ! と吠えた。


 勝利者のエファには戦いで消費したお金が返金された。ボロボロだった戦闘衣も完全回復する。団体戦の場合、勝利に貢献したとヴァルキリーシステムが判断した者に返金される。一般に一人に限るわけではないが、今回の場合、エファだけだった。


「貴様、この終局まで読み切っていたのか」

 クリストフがエファに問う。

「別にこんなの読み切るようなことでもないでしょ。単にどんな事態になっても勝てるように準備しただけよ。一騎打ちで勝てればそれでよかった。校歌で勝てればそれでもよかった。その二つで勝てなかったから次の策を使っただけよ」


「エファちゃん、おめでとう」

「完全勝利でござるな、エファ殿。その智謀、神の如くでござる。拙者、感服いたした」

「エファ、やったわね」

 駆け寄ってきたユーディット、コリュウ、ソフィアがエファを賞賛する。他の女子学生もエファの周りに来て、わいわい騒ぐ。

「へいへーい、エファ様の勝利だぜお前達、勝利のサンバを歓喜のリズムで踊ろうぜ」

 チョーさんがサンバを踊りだす。


 女子学生達が勝利に沸く中、ソフィアが失意のどん底にいるフェリックスに近づく。

「フェリックスさん。無礼かつ非礼な攻撃に対しては正式に謝罪をしてもらいます。また、どうしてこのような行動に出たのか、納得のいく説明を求めます」

「……分かっている。敗者として勝者には従う」 

 フェリックスは大きく頷いた。その仕草には潔さがにじみ出ていた。

「ガゼルト男子学院がフローナ女子学院と友好的な関係を望らな、今回のことは水に流して、私は今までと同じ関係を維持するつもりです」

「温情ある言葉、痛み入る」

 フェリックスはソフィアに頭を下げた。


「ちょっと、ちょっと、勝手に話を進めるんじゃないわよ」

 エファがソフィアとフェリックスの会話に口を挟む。

「でも、これは、生徒会長の私の役目でしょ」

 ソフィアがエファに答える。しかし、エファは首を横に振った。

「そんなことの前にやることがあるでしょ」

 エファは大剣振り上げ、ソフィアを切りつけた。

 不意打ち、奇襲、だまし討ち。そんな言葉が似つかわしいエファの攻撃だった。無警戒で無防備だったソフィアが避けられはずも無く、まともに攻撃受ける。全壊寸前だったソフィアの戦闘衣は消滅し、メイド服に変換される。


「ちょ、ちょっとエファ、どうしたの…… これは、どういうこと」

 ソフィアが驚愕する。周りにいる女子学生も男子学生も驚いている。

「さっき言ったでしょ。私は入学した時から、両学院を制覇するつもりだったて」

 エファは大きくジャンプし、ソフィア達から離れた所に着地する。

「資産没収!」

 フローナ女子学院の学生達の体が光る。その光がエファに吸収されていく。


 資産没収は強制徴収の強化版で、相手が戦線離脱していようとも口座にお金があればそれを没収するという技だ。ソフィアが持っていた管理者権限を取得したエファはそんな反則的な機能まで使えるようになっていた。

 女子学生達のほとんどが戦線離脱したとはいえ、それは戦闘衣に貯めていたお金が尽きただけで、各人の口座には、日々の生活費等の資金が残っている。その資金を奪うエファは実に極悪非道で悪辣だった。


「エファ! 私達を騙したわね!」

 ソフィアがこめかみに青筋を立てて怒鳴る。

「騙してなんてないわ、利用しただけよ。皆うまく踊ってくれたじゃない」

 あーはははは、とエファが悪魔のように笑う。


「私に女子学院の仲間だって言ったあの言葉は嘘だったのか」

 エンリカも怒りに顔を真っ赤に染め、叫ぶ。

「嘘じゃないよ。大嘘よ。このお馬鹿の貧乏人」

 エファはこれ以上ないというくらい嫌味な口調でエンリカを馬鹿にする。


 フェリックス達のフローナ女子学院への攻撃を知ったエファは、この混乱こそ両学院制覇の好機と考えた。そして、水面下で策を巡らせてきた。ヴァルキリーシステムのフローナ女子学院の管理者権限の大半を取得する為、フローナ女子学院の勝利を目指しているように見せかけてソフィア達の信頼を得たのも、策の一つだ。


「エファ殿。ご学友を攻撃するなんてやめるでござる。エファ殿は仲間との友情の尊さと重要さに気づいてくれたのではなかったでござるか」

 コリュがエファに問う。

「仲間とか友情とか、本当に重要だと思ってるよ。だって、口先だけ友達とか仲間とか言えば、皆、馬鹿みたいに信じるんだもん。ソフィアでさえ私に気を許して、ヴァルキリーシステムの管理者権限を無警戒に売るくらいだしね。仲間て、本当にいいよね、ただ、くさい言葉を使わなくちゃいけないのは鳥肌が立つけど」

 エファは首をすくめて、ぶる、と小さく震える。


「エファ殿の考えは間違っているでござる。そんなのは仲間とは言わないでござる」

「そうだぜエファ様。友情と正義と努力の組み合わせが成功の方程式なんだぜ。今のエファ様はにはどれもありゃしない。そんなんじゃ天下を取っても三日天下で終わっちまうぜ」

 コリュウの横に来たチョーさんも口をそろえてエファの説得を試みる、。

「ああ、うるさい。随分と生意気な口を利くじゃない。二人ともつけ上がり過ぎよ」

 エファがコリュウを睨みつける、が、コリュウも引かない。

「主人の間違えをただすも忠臣の仕事。このコリュウ、エファ殿を主人と思うからこそ、エファ殿の暴挙は止めさせていただくでござる。奥義! 忍法 朱雀」

 コリュウが奥義の一つ、朱雀、を使った。しかし、何も起こらなかった。


「あんたも大馬鹿ね。私は女子学院の管理者権限の大半を持ってるのよ。女子学院に属しているあんたの魔法を止めるくらい造作もないのよ。そして、攻撃を当てることだってね」

 エファは手にした指揮棒を一振りする。

 天空より飛来した大きな天使の子豚がコリュウに体当たりする。激しい攻撃を受け、コリュウは気絶する。天使の子豚は、ぶう、と勝利の一鳴きをして、消えた。

「さすがエファ様。そのお力は神の如し。このチョー、地獄までもお供するぜ」

 長い物には巻かれろ、を地でいくチョーさんなので、コロリ、と態度を変え、媚びる。


「エファ、おふざけはここまでよ」

 無傷の戦闘衣を着たソフィアがエファに近づいてくる。ソフィアの後ろには、やはり無傷の戦闘衣を着たフローナ女子学院の学生と、ガゼルト男子学院の学生がついてきていた。

 エファがヴァルキリーシステムの管理者権限を買うときに女子学院の生徒会に支払った七千万フローナをソフィアはクラスメイトに配分した。これにより、戦線離脱し、メイド服を着させられていた女子学生達が戦線に復活したのだ。

「ここにいる全員で、あなたの愚行を止めるわ。覚悟なさい」

「コリュウがやられたのを見てなかったの、ソフィア。私はあんた達に魔法を使わせないことだってできるのよ」

「それはどうかな」

 男子学生の集団の中からフェリックスが出てくる。


「貴様を除くフローナ女子学院の学生はガゼルト男子学院が管理するヴァルキリーシステムに属した。これで、貴様が持っているフローナ女子学院の管理者権限は無力化した」

 ソフィア、フェリックスが並び立ち、巨悪と化したエファと対峙する。

「あらあら、さっきまで敵同士だったのに仲良くしちゃって。節操がないわね」

「あなたという巨悪を打ち破るため、両学院は協力することにしたのよ」

「そういうことだ。覚悟しろ」

 エファを取り囲んでいる男女の学生が、いつでも攻撃できるよう身構える。

「烏合の衆がいくら集まっても、所詮、烏合の衆なのよね」

 エファは深紅のドレスのポケットから多機能携帯魔機スマホを取り出して操作する。

「さてと、それじゃあ、その他大勢の烏合の衆を一掃しようかしら」

 エファは多機能携帯魔機スマホをしまい、指揮棒を一振りして呟いた。


「資産没収」

 男女の差なく、学生達の体が淡い光で包まれる。その光がエファに吸収されていく。

 驚愕が学生達の間を波紋のように広がる。ガゼルト男子学院のヴァルキリーシステムに属しているのだからエファの資産没収が作用するはずがない、と全員信じていた。それが作用したのだから驚天動地の事態だ。

「まさか!? 敵対的買収か……」

 フェリックスが多機能携帯魔機スマホでヴァルキリーシステムの管理者権限の状況を調べる。

 フェリックスは自分の目を疑った。

 なんと、ガゼルト男子学院の生徒会が所有していた管理者権限の七十%がエファに買収されていた。

「馬鹿な…… この量の管理者権限を買収するには八千万ガゼルトは必要なのだぞ」

 あり得ない、あってはならない現実を目の当たりにし、フェリックスは顔面蒼白になる。横から多機能携帯魔機の画面を見ていたソフィアも言葉を失っている。


 超金持ちの子息が集まる両学院であっても、八千万ガゼルトは大金だった。しかし、資産没収、の機能で女子学生から資産を根こそぎ奪ったエファは一億ガゼルトをゆうに超える額のお金を獲得していた。そのお金を使い、先ほど多機能携帯魔機スマホを操作したときにガゼルト男子学院の管理者権限を買収していたのだ。


「揃いもそろって甘ちゃんね。会話なんてしないでさっさと攻撃すべきだったのよ。なのに私に敵対買収する時間を与えるからこうなるのよ」

 エファの高笑いが星降る館の庭に響く。

「フェリックスさん。一斉に攻撃をしましょう。三十%の管理者権限を持っていれば攻撃はできます。全て買収される前にあの悪魔を倒しましょう」

「了解した。この一撃に全てを賭け、巨悪を打ち倒す」

 ソフィア、フェリックスが魔法を詠唱する。男女の学生達も合わせて魔法を詠唱する。


 約八十の魔法がエファに放たれる。エファに管理者権限を買収され、校歌、が使えない状態では最高の攻撃だった。エファを巨悪とするなら、その魔法は両学院の良心と言えた。


「ふん、しゃらくさい。天使の子豚、乱舞モード」

 エファは指揮棒を一振りする。

 上空より、天使の子豚の大群が降り注ぐ。天使の子豚は、両学院の学生達の希望ある未来を紡ぐはずの魔法に突っ込み、食べ始める。そして、一分も経たない内に魔法を食い尽くした。さらに子豚達は華麗に乱舞しながら、学生達に襲いかかる。

 女子も男子も、天使の子豚に、むぎゅう、と押しつぶされる。


「あーははは、どうよ。この圧倒的な財力。そして、まだ終わらないわよ」

 エファは指揮棒を一振りして、資産没収を強化する。学生達のお金がエファただ一人に流れ込む。資金が無くなった学生達は戦闘衣を消滅させられ、メイド服に変換させられる。


「そのだっさいメイド服も消してやる」

 エファが指揮棒を振る。学生達が来ていたメイド服が消滅する。当然、下着だけの姿になる。男子はパンツ一丁だし、女子はブラジャーとパンティだけというあられもない姿だ。


 女子学生の悲鳴がそこかしこであがる。


 ソフィアの真横にいたフェリックスは、ソフィアの下着姿を間近で見て、鼻血をブー、と噴水のように吹き出し、出血多量で気を失い倒れる。


「あーはははは。私の完全一人勝ちよ。両学院の制覇よ」

 エファは高らかに完全勝利を宣言する。

「いよ! エファ様天下一」

 五色の紙吹雪が舞う。チョーさんが小さく切った五色の紙を空中からまいているのだ。

 学院の制覇というものは明確に定義されるものではないが、誰も対抗できないのであれば、実質上両学院を制覇したといってよいだろう。誰も対抗できないのであれば……


 勝利を宣言したエファの前に、一人の女子学生が立ちはだかる。ユーディットだった。

「エファちゃん、こんな酷いことはやめて。皆から奪ったお金を返してあげて」

 ユーディットは無傷の戦闘衣を着ていた。

「邪魔よ、どきなさい、ユーディット」

「考え直して、エファちゃん。こんなことしても皆の恨みを買うだけだよ。そんなのエファちゃんだって嬉しくないでしょ」

「私はお金があればそれで十分嬉しい。誰に恨まれようとも痛くも痒くもないよ」

「そんなこと言わないで、お願いだからもうやめて、エファちゃん」

 ユーディットが必死に懇願するが、エファは首を縦には振らなかった。


「私を止めたければ力づくでやってみることね。ドジでのろまで鈍くさいあんたが、私を止められるわけないけどね」

「ドジでのろまで鈍くさいけど、私にだってできることがあるんだよ」

 ユーディットが強い決意に満ちた表情になる。

「転ぶ意外にあんたにできることがあるんなら、見せてもらおうじゃない」

 エファが指揮棒を振る。天使の子豚が一匹、ユーディットに突進する。

 ユーディットはヴァイオリンを具現化し、演奏を始める。

「愛と平和のパストラーレ」

 天上の調べとでも言うべき、たおやかでのんびりした音楽が庭にいる全学生を包む。驚天動地の混乱の中にいたにも関わらず、音楽を聞いた学生達は穏やかな表情になっていく。

 エファでさえ、日向でまるくなって寝る猫のような、平和でのんびりした表情になっている。そして、ヴァルキリーシステムは戦いを引き分け、とみなし、結界を解除した。


「はっ?!」

 ヴァルキリーシステムの結果が解除されたことで、ぼー、としていたエファが我に返る。ソフィアやフェリックスその他の学生達も我に返る。

 学生達は自分の身に起きた変化に気づく。エファに奪われ、0になった資金が増えているのだ。皆、よかった、と安堵する。そんな中、エファ一人だけが青ざめていた。

「お金が…… 管理者権限が…… なくなってる……」

 エファが皆から奪い取ったお金も、買収した管理者権限も無くなっていた。

「ごめんね、エファちゃん」

 すまなそうな顔をしながらユーディットがエファに近づく。

「あんた、いったい何をしたの。何が起きたわけ」

 えっとね……、とユーディットが説明を始めた。


 ユーディットが母親から受け継いだ特殊技、愛と平和のパストラーレ、はヴァルキリーシステムの戦いに参加している者達の資産を全員で等配分する、というものだった。

 エファが吸い上げた全員の資産や、買収した管理者権限は全員に平等に配分され、エファ一人勝ちの状態から全員が平等な、勝ち負けの無い引き分けになったのだ。


「私の天下が、私の天下が…… 三日天下どころが三分天下になっちゃったじゃない」

 エファはユーディットをぽかぽか殴る。

「ご、ごめんエファちゃん。でもエファちゃんが力づくでっていうからしょうがなく……」 

「もう大人しくしなさい、エファ」

 ソフィア、フェリックス、クリスティナ、クリストフがエファを取り囲む。

 四人の生徒会関係者に囲まれ、エファは仕方なくグーにした両手をおろす。ヴァルキリーシステムの外に出ればただの女子学生であり、四人に囲まれては為す術がない。

「ユーディットさん、あなたのおかげで両学院は悪の手から救われましたわ」

 ソフィアがユーディットにの手を両手で握る。

「ユーディット殿、よくぞエファ殿を止めてくれたでござる。心から感謝するでござる」

 気絶から復活したコリュウがユーディットに頭を下げた。

 ユーディットの周りには男女の学生が集まり、エファという極悪な悪魔のような存在から救ってくれたお礼を口にする。

 一躍、ユーディットは英雄になっていた。

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