第四話 札差との戦い

四話 札差との戦い

  寛政三年(一七九一)八月十三日。定信は、田村時代の勘定奉行の青山喜内を閉門蟄居に押し込み、そして、久世広民を勘定奉行に採用した。

 登城した十郎右衛門たち勘定役四人と組頭の広田はすぐに、久世に呼ばれた。

「早速集まってもらったのは、松平様から武家への借金棒引き、定信さまは棄捐と言われていたが、そのご提案があった。その内容だが、二十年以上前の借金は棄捐、十九から十年までは二十年賦か無利子、五年前までは十五年賦とするものだ。これによって、札差たちに影響が出るのは必至だが、どの程度のものか、まずは現在の札差の経営状況を調べて欲しい。町奉行所との共同調査になるので、心してかかってくれ」

「期限はいつまででしょうか?」

 広田が聞いた。

「三月十一日までに結果を持ってこい」

「承知いたしました」

「組頭、これは借金の踏み倒しではありませんか。こんなことあっていいのでしょうか。借金棄損などしたら、札差との信頼関係が損なわれます」

「坂部、札差と我々の同輩の武士たちとどちらが大事だ。お前も武士なら、文句言わずにお奉行様に従え。まずは、札差の経営状況を調べるのだ。おまえたちも分かったな」

 十郎右衛門たちは、翌日から、手分けして、朝から晩まで札差たちをまわった。

 まだまだ朝晩は寒く、十郎右衛門はとうとう風邪をひいてしまった。

「あなた、無理されないで、今日はお休みになったらいかがですか」

 富子は、心配そうに咳をする十郎右衛門に声をかけた。

「皆に迷惑をかけられない、行ってくる」

 三月十一日を迎えた。

 十郎右衛門は、やっとのことで登城した。 

「坂部、おぬし顔色が悪いぞ」同僚が、心配そうにいった。

「大丈夫だ」

寒気に耐えながら十郎右衛門は広田たちに続いて、久世の部屋に入った。

広田は、調査結果を説明し始めた。

「お奉行、百軒ほど調査した結果ですが、自己資金で運営しているものは七軒、そこそこに営業しているものは二十二件、残りはすべて、よそから資金調達しながら何とか営業をしているのが現状です」

「何、ほとんどが弱小ばかりではないか」

「仰せの通りです。このような状況では、借金を棒引きしたらほとんどの札差は潰れてしまうでしょう」

「また恨みを買って、今後武家に金を貸すところは皆無になってしまいます」

 十郎右衛門が、急に声を上げた。

 久世が十郎右衛門を睨んだ。

「分かった。広田、この二日間で何とかうまく施行する方法を考えてくれ」

「承知いたしました」

 早速、広田以下は職場に戻り、皆に考えを述べるよう促した。

「会所をつくって、全国の富裕な商人に出資させて、札差が融資していた分をすべて肩代わりさせるのです。その資金を武家へは一割で貸し、札差はその利息の一分を取って、会所が九分を取ることにすれば、問題なく、札差は営業を存続できるだけでなく、社会に金が周り武家にも資金が行きわたる一石三鳥の案と思いますが、如何でしょうか」

 十郎右衛門が早速今まで考えていたことを述べた。

「しかし、商人が、すぐに出資するだろうか?」

 同期の戸部武之進が、心配顔で言った。

「そうだな、彼らとてすぐにはこのやり方を信用しまいな。誰ぞ、ほかに妙案はないか」 

 広田が言った。

「公儀の資金を幾ばくか札差に無利子で貸し付けたらいかがでしょうか。損をこうむる札差も、納得するでしょうし、富豪の商人たちも安心して出資すると思います」

 十郎右衛門より三歳年上の片野鉄之助が、言った。

「それは妙案だ。この案で行こう。坂部、公儀の資金がどれほど出せるか調べてくれ。戸部、おぬしはどれほど商人たちから資金が集められるか予測してくれ。片野は、この案を報告書としてまとめろ。良いか明日いっぱいまでだ」

 広田は皆に向かって言って、席を立った。

三日後。勘定奉行の久世広民及び久保田政邦、町奉行の初鹿野信興及び山村良旺(やまむらたかあきら)が、定信のもとに集まった。

久世は、案を四半刻(三十分)かけて説明した。

説明を聞いた後、定信が口を開いた。

「公儀からの出資は、五万両では多すぎる、減らせ。そして、この案をしっかりつめてくれ」

 定信を見送り、久世の部屋で、久保田、町奉行の初鹿野及び山村たちはこの案を評議した。

「樽屋与左衛門にも参画してもらったらいかがでしょうか」 一番年下の初鹿野が言った。

「それがいい、儂が樽屋に頼もう」

 山村が答えた。 

 今後は、久世が中心になって取り勧めることに決まり、一刻半(三時間)ほどかかった評議は終わった。


 蝉の鳴き声が府内のあちらこちらで聞こえ始めていた。定信のもとに久世達奉行の四人とその供たちが集まった。そして、久世の供をしてきた十郎右衛門が、恐る恐ると定信の前にすり進み、書類を渡した。

 しばらく定信は、その書類に目を通してから言った。

「始めるがよい」

はっと言って、久世はやや緊張気味に説明し始めた。

「まずは、救済内容ですが、六年前までの借金は返済免除、五年以内は利子を六分に減らす、直近は一割二分とします。原案の二十年以前を棒引きということにしていましたが、それでは古い借金がなかなか解消できません」

 一息ついて、定信に目をやった。

「次に今回の棄捐令は札差のみで、他の町方の取引は全く関係ない旨の御触れを出し、他のものを安心させることにします」

 さらに詳細について、四半刻ほど説明を続けた。

「以上、この棄捐令は、九月に公布、十月施行としたいと考えますが如何でしょうか」

 久世は、書類をたたみながら言った。

「傲慢奢侈な札差たちを武家達皆が憎んでおる。その輩に、五万両ものの公儀の金を無利子で貸与するのは甘すぎるのではないか。二万両ぐらいにしてはどうか。またこのての法が施行され、公儀が出資すれば、御家人に直接公金を貸し付けるようなものだ。だから、札差に融資している者たちは、金元は公儀ですと宣伝するものが出るであろう。よって、公儀の出資は施行後の3か月後にいたそう。では九月までに準備を頼む」

(定信さまは、先の先まで読んでいらっしゃる)十郎右衛門は感心した。

「承知いたしました」久世が答え、そして皆低頭した。


 八月の末、ほぼ公布の準備が整った。久世達が、至急とのことで、定信に呼ばれた。

「今後、分限高に応じて貸付の金額を定め、それ以上は絶対に貸さないと定めてしまうと、分不相応に借金した者は返さなくてもよい道理になってしまい、今まで貸してきた分が道理に外れたことになってしまわないだろうか?近頃、人情が薄くなり、利に敏くなって自分が貧乏であることを公然と吹聴しても構わないと思い、それを恥と思うことがなくなってきている。札差からの借金を今後は公儀の役所に申請して借りることにすれば、制限以上の額の借金ができなくなって景気の悪化の原因になるかもしれないし、特に公の場へまかり出て借金するようになっては、世間の目を恥じることもなくなるきっかけになってしまわないだろうか?または、恥を重んじて借金できなくなってしまわないか?」

 定信が、憂鬱そうに言った。

(今頃になって何を)久世は怒りが顔に出るのを何とか抑えた。

「久世、なにか」

「いいえ、なにもありません。ご心配の件、ごもっともでございますので、検討いたします」

一か月後、久世達が定信に再度上申した。

「貸出金については、禄高百俵に三十両を基準として運用したいと思います。また、取引のある武家の名前と切米高を貸付金がある者もない者も書面で出すようにさせます。これでいかがでしょうか」

「もういい、借金する武士に恥だと自覚させることだ」


 九月十六日。勘定奉行所の白洲に札差たちが集まっていた。 しばらくすると、十郎右衛門たちが出てき、後から久世が出てきて座った。

「皆に申し渡す。・・・・・・・」と言って、折りたたんだ紙を広げ読み始めた。

 最後に、「本日より棄捐令を施行する。これは老中筆頭、松平定信様の命だ、分かったか」

 一方、町奉行所では、奉行の初鹿野信興が、七人のご用達商人を集め浅草猿屋町の会所に出資するように命じた。

 棄捐令が出て七日後。二十八人の札差が町奉行所を訪れ、この棄捐令によって、家業を続けることができなくなると嘆願書が提出された。

 すぐに初鹿野は、定信に報告し、他の奉行を集めた。

「松平様、二万両を下賜してもよろしいでしょうか?」

「ちと早すぎるかもしれぬが、やむを得ぬ。明日にでもそのように札差どもに伝えよ」

 定信が、言った。

 翌日、初鹿野は、奉行所に代表初を呼び、二万両を下賜することを告げた。

 札差たちは一様納得して引き下がった。

しかし、十月になると、今までの借金の一部を秋の切米で清算して新規に借りる‘借り貸し金’を貸し渋るようになったため、定信は、奉行たちをあつめた。

「札差の奴ら、今までは、暮れには借りた二十両は返すことができたが、今年はなんと四両、同心などは、一両。これではみな年が越せぬわ。札差の自己資金が足らねば、会所から借りさせろ。久世、すぐにあたれ」

 定信は、もみあげに青筋を立てて言った。

勘定奉行の久世広民は、「はい」と言って、頭を下げた。勘定書に戻って、久世は十郎右衛門に命じた。

「すぐに、樽屋に札差たちの意向を聞き出させろ」

 十郎右衛門は、承知いたしましたと頭を下げ、席を立ち、槍持ちと草履取を従えて、城を出た。樽屋に着き、草履取が坂部の名を告げると、十郎右衛門は手代に客間に案内された。

 十郎右衛門は樽屋を前に、今回の件で定信が怒り心頭していることを伝えた。

「定信様が、お怒りになってもこの問題の解決はなかなか難しいですぞ」

 樽屋は平然と答えた。

「樽屋殿、札差たちの本音を聞き出してもらえまいか」

 十郎右衛門は、予期した通りの答えを聞いてからいった。

「ここ二日ほど、時間を下され」

 承知したといって、十郎右衛門は、自宅に戻った。

「帰ったぞ」

「おかえりなさいませ」富子が迎えに出た。

「飯を食ったら、また城に戻る。しばらく帰れないので、泊りの支度を頼む」

「それは大変ですね。ご苦労様です」

 富子は、女中に夕餉の支度を命じ、十郎右衛門の着替えの準備をした。

一刻半ほどで、勘定所に戻った。

二日の間、十郎右衛門は夜も徹して打開策について検討し続けた。

 十郎右衛門の耳に捨て鐘用の太鼓の音が入ってきた。

「もう明け五ツか」

 十郎右衛門は、顔を洗いに部屋を出た。

「坂部様、娘様がお弁当を持ってこられました」小坊主に部屋に戻ろうとしたとき、声をかけられた。十郎右衛門の娘は十五になっていた。

「悪いが、受け取ってきてくれ。頼む」と言って席に着き、書類をめくり始めた。

 しばらくして、小坊主が弁当を持ってきていった。

「むすめ様が、是非お伝えしたいことがあると言って、お待ちになっています」

 十郎右衛門は娘の待っている部屋に行った。

「お父様、おじい様が倒れました。お医者様に診てもらいましたら・・・・」

 娘は泣き顔になった。

「なに、お義父上が。仕事が片付いたら帰るから、それまでしっかり面倒見てやってくれ」

 弁当を食べ終わると、同僚が次々と部屋に入ってきた。

「坂部、昨日も徹夜か」戸部が声をかけてきた。

「まだ仕事が終わらんからな」

「あまり無理するなよ」

一刻ほどたって、十郎右衛門は樽屋に会いに行くと言って勘定所を出た。

 樽屋との話を終え城に戻ると、

「坂部様、お奉行様がお呼びでございます」小坊主から声をかけられた。

 十郎右衛門は皆の視線を受けて、部屋を出て久世の部屋に行った。

「坂部です」

「入れ、松平様のお呼びだしじゃ。十郎右衛門、伴をせい」

 茶坊主の後に久世そして十郎右衛門が続いて、定信の執務部屋に入った。 もうすでに、勘定奉行の久保田、町奉行の初鹿野及び山村そしてその伴たちが座していた。

 定信が、上席についた。皆の者ご苦労といった。みな平伏した。

「いろいろ考えたのだが、札差だけに圧力をかけるだけでなく、不届きな武家の借り手を何人か処罰して、見せしめにしたらどうか。また、札差を一人ずつ呼び出し、利率一割二分では取引できないといった者については、権利を取り上げたらどうか」

 一息ついて、さらに続けた。

「一時的に禄高を増やしているだけの足高については、札差たちの意見を聞いて、担保に含めないようにしよう。もう評議に時間をかけられない、暮れの取引については、足高分は会所の資金を充て、法外の借り手は支配頭から注意させ、来春に札差の賞罰という運びにしたらどうだ。年を越せないような事態になったら、今までの苦労が水の泡だ。意見があれば述べてみよ」

「松平様、樽屋を通して、札差の本音を今探っております。明日にその結果が出ますので、お待ちいただけませんか」

 久世が言った。

「松平様、利率について交渉している最中です。落としどころを模索していますので、しばしのご猶予を」

 十郎右衛門が、続いていった。

「利率はどのくらいを想定しているのじゃ」

「今、四分で折衝しています。もうしばらく時間がかかるかもしれませんが、最悪でも六分で決着させるつもりです」

「わかった、では三日後に再度評定する」定信はムッとした顔をして出て行った。

 定信が退出してから、一刻ほど久世たちが評議した。

「十郎右衛門、札差との利率交渉は大丈夫か」

 久保田が心配そうに聞いた。

 十郎右衛門は、何とか決着させますと緊張した面持ちで答えた。

三日後、六分の利率で幕府と札差たちは合意を得た。

「よかった。これで武家たちも新しい年を迎えることができる」

 

十郎右衛門は、急いで屋敷に帰った。「父上の具合はどうか」出迎えた富子に言った。

「小康状態です」

 十郎右衛門は半の助が臥せっている部屋に行き、声をかけたが、半の助は、鼾をかいているだけで目を開けなかった。

老中の命により、十郎右衛門たちは休む間もなく、次に物価対策に取り組んだ。棄捐令の成功に自信をつけた幕閣たちは、勘定所や町奉行所を総動員させて、高騰する物価を見事に安定させることに成功した。

 定信は、これに味を占め、田沼意次の重商主義政策と役人と商人による縁故中心の利権賄賂政治から、朱子学に基づいた重農主義による飢饉対策や、厳しい倹約政策、役人の賄賂人事の廃止、旗本への文武奨励を勧めた。

さらに、海国兵談を書いて国防の危機を説いた林子平らを処士横断の禁で処罰し、田沼意次が行ってきた蝦夷地開拓政策を中止した。また、朱子学だけを正統とし(現在では、寛政異学の禁といわれている)、昌平坂学問所では朱子学以外の講義を禁じ、蘭学を排除するなどした。結果として幕府の海外に対する備えを怠らせた。

その結果、露西亜が南下政策をとり始めた。

寛政四年(一七九二)九月三日、日本人漂流民である大黒屋光太夫らの返還と交換に日本との通商を求めて、アダム・ラクスマンが根室にやってきた。


ラクスマンからの書状を松前藩が受け取り、定信に持参した。

江戸城では、対応をどうするかで評定が開かれた。

定信は、老中の松平信明、松平乗完(のりさだ)、本田忠壽(ただかず)、戸田氏教(うじのり)そして、寺社奉行・町奉行・勘定奉行に書状の内容を説明し、意見を求めた。

「書状の内容だが、一つは、漂流民を江戸の役人に引き渡したい、二つは、返答がなければラクスマンは船を江戸に向かわせ直接交渉するとのことである。意見を述べよ」

「あくまで江戸への来航を許さず、武力に訴えてでも、根室で打ち払べきです」

「しかし、相手は、我々よりも優れた大砲を持っているようです。負ければ、幕府の権威が失われてしまいます」

「では、こちらの事情を伝え、唯一の外交の窓口の長崎への回航を求めてはいかがでしょうか」

「そのようなことを相手は聞くでしょうか。仕方がないので、蝦夷地の港を開き通商を認めてはいかがでしょうか」

「意見は分かった。使いの者、遅くなったが、経過を説明してくれ」

「はっ、明2二(一七八二) 年十二月,光大夫たちは、伊勢の白子から江戸への航行中,駿河灘で台風にあい,七ヵ月間の漂流を続けて翌年夏,アリューシャン列島のアムチトカ島に着いたようです。それから四年後,彼らはカムチャツカ半島に渡り,帰国を願いシベリアを西に向かうことが許され、そして、偶然にも女帝エカテリーナ二世 に謁見する機会を得ることができ、我が国への渡航が許されたようです。そのようなわけで、この度、遣日使節 ラクスマンに連れられてきました。彼は、光大夫たちの引き渡しと我が国との通交・通商を強く望んでいます」

「光大夫たちは露西亜の隠密になれ果てたかもしれぬので、光大夫の返還も通商もは拒む方が良い」と松平信明がいった。

「いや、露西亜の情報を得るために、光大夫たちを引き取ったほうが良い」と本田忠壽が反論した。一刻かけても結論が出なかった。定信に決めるよう皆がいった。

その結果、光大夫を引き取るが、通商は拒否するよう定信の命が下った。また、こちらにとって優位な交渉場所として松前を選ぶよう命じた。

 交渉の人選は、それぞれ老中たちの管轄する役所から優秀な人材を出すことになった。

交渉人の一人として、十郎右衛門が勘定方から選ばれた。

二日後、定信は十郎右衛門たち交渉人を集めて、訓示した。

「よいか、皆の者。貿易の要求を拒否しないで、長崎のオランダ商館と交渉するように、時間を稼げ。光太夫たちは、引き取るのだ」

十郎右衛門は、屋敷に戻り松前に向かう準備をした。

富子は、支度をしながら心配そうに十郎右衛門にいった。

「あなた、お父様が・・・」

「わかっておる。心配するな、すぐに戻る」十郎右衛門は、声を荒げていった。

 松前藩は、光太夫とラクスマン一行を松前に行くことを了承させていた。

  十郎右衛門たちは、松前に到着すると、松前藩と事前打ち合わせを済ますとすでに来ていたラクスマンとの交渉に入った。十郎右衛門は国法である鎖国令を読み上げた。

他の交渉人は、ラクスマンに、漂流民送還の労をねぎらい、今回に限り松前において漂流民受領の用意がある旨を説明した。また、通商は拒否すらが、長崎への入港許可書は与えるので、長崎に行くようにと伝えた。

数日間の十郎右衛門たちの説得工作も実を結び、光太夫ともう一人磯吉二人が幕府側に引き渡された。

ラクスマンは、長崎へは行かずに帰路に就いてしまった。

対外政策は緊迫した状況にあった。

もし阿蘭陀が仏蘭西に占領された場合、露西亜が江戸に乗り込んで来る可能性があり、あるいは千島領や阿蘭陀商館の権利が仏蘭西に移る可能性、また英吉利が乗り込んで来て三つ巴の戦場となる可能性があった。

定信は江戸湾などの海防強化を提案し、また朝鮮通信使の接待の縮小などにも務めた。

十郎右衛門は、光太夫から露西亜の情勢を聞き出そうとした。光太夫は、露西亜について知っていることをすべて話した。

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がんこ旗本一代記 沢藤南湘 @ssos0402

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