ロブスター

 ロブスターってザリガニでしょ? と、いちいち余計なことを言う人は、一生食わなくていいと思う。

 生物学的に説明すると、ザリガニ下目というところまでは確かにザリガニと一緒だが、その先のザリガニ科がいわゆるアメリカザリガニなどで、ロブスターはアカザエビ科というものだ。

 この下目というのがどれくらい広い分類かというと、人間の同類にニホンザルやオランウータン、ゴリラが含まれるくらい乱暴なものなのだ。つまりロブスターをザリガニだと言っているのは、人間はゴリラだと言っているのと同じだ。

 だからロブスターをザリガニだと言う人にはこう言ってあげよう。確かにあなたはゴリラみたいですが、それでも一応人間なんですよと。

 ちなみにフランス料理で使われるオマール海老はロブスターと同一生物だ。



 それはさておき、ボクはロブスターが好きだ。たまにしか食べないのだが……いやちょっと見栄張った。たまにしか食べられないのだが、出されれば喜んで食う。

 あいつらはかなり長生きで、しかも一生育つという。毎年脱皮を繰り返し、そのたびにでかくなる。だから大きさを見れば大体の歳がわかるらしい。

 つまりでかいロブスターを食うということは、何十年も生きてきたのをふん捕まえて食ってしまうわけなのだ。といってもそんなことを言い出したらなにも食えなくなる。だが人情的に、やはり命へ感謝して食しよう。


 ということでボクは特にでかいロブスターを食すことができた。重量で言うと5ポンド。キロ換算だと約2.3キロ。もちろんひとりで食えるはずもなく、家族と3人でむしゃぶりつく。


 まずはでかい。とにかくでかい。体がでかいのはわかっていたが、それよりも右手がでかい。爪が6インチ画面のスマホなんかよりもずっとでかい。

 ロブスターは基本的に右手がでかいのだが、3ポンドなどであれば左手とさほど変わらない。だがこの5ポンドのロブスター野郎は半端なく右手がでかい。左手の倍、体くらいあるんじゃないだろうか。上から見るとそうでもないが、横から見ると厚みが全然違う。体のサイズは4ポンドと然程変わらない気がするから、この右手だけで1ポンド増しになっているのではないだろうか。


 そしてうまいことボクが右手をあてがわれる。これだけで腹いっぱいになりそうだ。

 ここまででかいと殻も厚くて硬い。調理用ハサミじゃ無理だ。木槌でも厳しい。金槌にタオルなどを巻いて叩くか、ニッパーのようなものを使おう。

 手の肉ははさみの可動部から伸びる筋にくっついている。食感的にはホタテの貝柱に近いと思う。だが味はやはりロブスターだ。


 尾も食う。調理用ハサミで切って3等分だ。でかいとそれだけ筋力を必要としているから食感はゴリゴリだ。凄まじい弾力はカニじゃ味わえない。


 調理方法はスチーム。茹でるのと違い旨味が流れ出さないうえ、均等に熱が入る。人によっては焼きのほうが好きだろう。確かに焼いたほうが水分が抜け、旨味が凝縮される。だが殻に肉がこびりつき食べづらくなる。そのうえ弾力が高まるから、この高弾力が硬さへ変貌してしまう。だからボクはスチーム調理を好む。


 で、エビカニといえばミソだ。そしてロブスターもミソである。ミソで最も美味いのは毛ガニだと思っているが、だからといってロブスターのミソが駄目というわけではない。これはこれで美味い。身と共に食えば美味さ倍増。

 あとこのサイズになると足の付け根、胸辺りだろうか。そこらへんにもかなり肉があり、分解して食うとこれまた美味い。ここが食えるというだけで、これまた食う分量が増える。ありがとうロブスター。ありがとう命。

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