エスプレッソ
食い物じゃないじゃんと言われるのを承知でコーヒーの話。
ボクはコーヒーならエスプレッソが大好きだ。他の選択肢はない。コーヒーではエスプレッソ以外の飲み方が全て滅んでも構わないとまで思っているほどのエスプレッソ好きだ。
エスプレッソマシンまで買ってしまった。パックのを入れて作るやつじゃなく、ちゃんと豆を挽いた粉を入れるやつだ。豆の種類はもとより、入れる量や固める圧力によっても味が変わる。面白い。
元々ボクはコーヒーがそんなに好きじゃなかった。好き嫌いでしか判断できないとしたら好きな部類に入るのだが、他に飲み物があるのならば候補に入れないレベル。
そんなボクが何故エスプレッソにこだわりを持つか。それはちょっと気取ってしまったのが発端だ。
イタリアンレストランに行くと最後にエスプレッソのシングルを頼む。イタリアといえばエスプレッソ。他の飲み方は基本しない。せいぜいカプチーノくらいだろうか。
というわけでエスプレッソで〆るわけなんだが、今までの味が全てエスプレッソに持っていかれる。余韻もなにもあったものではない。実に残念だ。
それにも関わらずエスプるのは、イタリアンとはそういうものだと思っているからで、他意はない。
だがあるときその考えが変わった。最高のエスプレッソに出会ったからだ。
場所は札幌。駅横にある大◯の本屋横にある某イタリアンレストラン。
ボクはイタリアンが特別好きというわけじゃないのだが、前にも言ったようにボクはモッツァレラ教団の団員であり、ここのモッツァレラは地元北海道で育てられている水牛から採れたミルクで作られているという話を聞き、それを聞いたら団員として食うしか選択肢がないのだ。
カプレーゼとはなんてスバラシイ食べ物なのだろう。そう思いつつ食した後、いつものエスプレッソタイムだ。ああ、これで全部持って行かれるんだろうなと思いつつエスプレッソに角砂糖を入れ、かき混ぜ口に含む。
このときボクは覚醒した。エスプレッソとはなんて凄い飲み物なのだろうと。
まず、このエスプレッソはコクの塊……いや液体だから塊とは言い難いが、まるでコクで作られているのではないかというものが口の中に広がっていく。
酸味は大してない。ボクはコーヒーの酸味があまり好きではなく、これのせいであまりコーヒーが好きではないわけなのだが、このエスプレッソはそんなものは感じられず、ただただコクを味わえる。
香りも強い。飲むと鼻から抜けるコーヒーの香りは濃厚だが清々しい。
これがエスプレッソか。ボクはこのときからエスプレッソの魔力に惹かれた。
東京へ戻ってからも様々な店で飲む。しかしボクが欲していたあのコクが味わえる店がなかなか見つからない。実に残念だ。
だからボクはエスプレッソマシンを購入し、豆を求め始めた。そしてとうとうボク好みの豆を見つけることができた。
それはパナマのチリキという地方で取れる豆。こいつが凄い。
本来普通にドリップして飲むような豆であり、エスプレッソ向きというわけではないのだが、こいつをエスプると特有の濃厚なコクが更に映える。元々酸味も少ない豆だからボク好みであるし、香りも強い。
値段は少々高めではあっても大したことはない。いやむしろ安いといってもいい。
1杯辺りの単価で考えれば数十円。店だと400~500円する計算で飲むと、なんと200gのパックを使い切るころにはエスプレッソマシン代が還元できてしまう。後は飲めば飲むほどお得感がする。毎日飲むなら間違いなく買いだ。
もしこれから本格エスプレッソを始めようという人は、物足りないだろうが量が少なくてもシングルにして欲しい。なにせこれほどエスプレッソ好きなボクでさえ、ダブルはきつい。それと砂糖だけは忘れないように。
ミルクは入れない。邪魔なだけだ。ミルクがないとコーヒー飲めないという人はエスプレッソも飲めないと思ったほうがいい。奴は香りとコクを殺す魔獣だ。
あと空腹時に飲んではいけない。エスプレッソは濃縮されたコーヒーであり、そんなもの空っぽの胃に流し込んだら荒れる。食後の一杯エスプるのが大人の楽しみ方。
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