タコしゃぶ

 タコしゃぶとは名前の通りタコのしゃぶしゃぶだ。薄切りにしたタコの足をしゃぶしゃぶして食する。北海道ではそこそこ知られている料理だが、都内ではあまり見かけない。


 タコの足なんて大して太くないと思っていたらとんでもない。たまにスーパーとかで酢だこの足が売られているだろう。あの赤くて酸っぱいやつだ。それにとんでもなくぶっといやつがある。直径で4~5センチくらい。それの未調理の足だと思ってくれればいいと思う。そいつを薄切りにしたものをしゃぶるわけだ。

 もちろんモノは生だ。じゃなければしゃぶる意味がない。


 更にこいつのしゃぶり方は牛や豚をしゃぶるのとは違い、一瞬でも躊躇したら途端に食感が失われる。数秒でも駄目だ。

 これに失敗するとタコしゃぶは途端にただの茹でダコになってしまう。そのせいで食べたとき『こんなものか』と思われるのは悲しいことだ。


 薄さにもよるが、しゃぶる時間は大体5秒まで。

 『もう少し火を通したほうがいいかな』なんて思った瞬間終わる。薄くスライスしたタコは凄い勢いで熱を吸収し固くなる。半生くらいで食べるのがベスト。

 ただこの時間は何度か食べて勘を得るしかない。牛や豚などのように色が変わるわけではないから、見た目ではそう判断できない。数回は食べて試そう。


 で、そいつをポン酢かごまだれでいただくわけだが、ポン酢教に入信しかかったボクでもここはごまだれを推す。タコは基本淡白で油分がないため、調味料の味がストレートに口中へ広がる。ポン酢ではちょっときつい。まろやかなごまだれを使うことでタコの旨味を味わうことができる。

 タコの旨味はもちろん噛めば噛むほどだ。もちろん限度はあるが、それなりに噛めばタコは応えてくれる。美味い。


 あとはいつもならばしゃぶしゃぶでも多少だしを使いたいところだが、こいつにはそれをあまり考慮しなくてもいい。先に言った通り、しゃぶる時間はほんの数秒。しかも熱は吸収するがあまり水分は吸収しない。だからだしの恩恵を大して受けられないわけだ。昆布だし教の信者のボクが言うのだからきっと間違いないはず。


 その分また逆の恩恵も得られない。そう、タコの旨味が溶け出さないんだ。

 これには鍋の後のおじやを愛するボクとしては少し残念。その分具材を色々入れ、しゃぶった後のおじやを楽しもう。


 最近寒いからまた仕入れに行こう。こっそりと蟹も入れて贅沢に。

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