真鱈のタチ

 タチってなんだと思っている人は内地の人間である。

 なんて気取ったところでボク自身、内地の人間。生まれも育ちも東京だ。

 それでもってタチとは北海道弁であり、タラの白子のことらしい。

 北海道の人はタチが大好き。冬場になると味噌汁に入れて飲むとのこと。

 しかし実際出回っているのはスケソウダラのタチが一般的で、真鱈のタチというのは本場北海道でもそうそう食べるものではないそうだ。

 なにせ普段食いするにはかなりお高い。北海道産の生のタチであれば、100グラム1000円とかする。スケソウダラの10倍くらいだ。

 そしてこのタチは12~3月くらいしか手に入らない。今食わずいつ食うというのか。


 こいつにはいろんな料理法がある。先ほど言ったように、北海道では味噌汁の具として使うのだが、他にも天ぷらや炙り、あとはタチポンと呼ばれるタチを軽く湯通ししてからポン酢をかけて食べる方法だ。

 どれが一番美味いかはわからない。だけどボクは鍋を推す。ただの鍋好きだろと言われてしまうとそうなのだが、鍋ならポン酢やごまだれなど色んな味わい方ができるからと言い訳をする。


 まず新鮮な真鱈のタチ、真ダチを手に入れたら洗う。塩水で周りのぬめりを取る。こいつを丁寧に取り除くのを面倒がったりしてはいけない。いいものを手に入れたのだからできるだけ美味くしたい。

 そしてぬめりが排水口を塞ぐことに顔をしかめたところで次の作業、筋切りだ。こいつも綺麗に除去するのだが、あまり切りすぎてもバラバラになってしまう。一口サイズくらいに切り離していこう。

 あとは鍋に入れるのだが、タチだけでは物足りないのは当然。白菜やネギも入れよう。ネギは当然、下仁田ネギか岩津ネギがオススメ。

 それでもまだ欲しいというのなら鱈の切り身がいいかもしれない。親子鍋だ。相性はとてもいい。

 他のもので豪盛にというのならばカニを推す。北海道らしさを考えたらタラバなのだが、ここはズワイだ。味はズワイのほうがいいのだが、鍋で食うとなったらタラバのインパクトのほうがいいのが通常。だが今回のメインは真ダチだ。ズワイでだしを取りつつひっそりと置いておこう。

 そして鍋のだしは薄味。昆布と鰹節くらいにしておく。素材の味を感じたいならこれしかない。


 あとは実食。もちろんポン酢だ。ごまだれも捨てがたいが他の食材のことも考えたらポン酢が鍋では万能。

 世の中にはごまポン酢という、ポン酢とごまだれを混ぜたようなものがある。ポン酢ほど酸っぱくなく、ごまの風味とまろやかさがあり1つで両方を楽しめる。

 しかしボクはそんなもの認めない。どっちも食いたかったら両方用意すればいいんだ。そうは思ってしまうのにごまポン酢を使ってしまう。くやしい! でも美味い!


 それはさておき真ダチだ。ふわふわの食感に、濃厚な味わい。淡白ではあるのだが、スケソウダラのタチとはくらべものにならないほど濃ゆい。それをポン酢がサポートするかのように引き立ててくれる。スバラシイ。

 新鮮であり、且つ下処理をしっかりやっておけば生臭さは全くない。純粋に白子の美味さだけを楽しめる。


 締めはもちろんおじやだ。うどんがいいという人もいるだろうが、せっかくのいろんなだしを全て使い切るにはおじやが一番。米がだしを全て吸い尽くしてくれる。素材がいいならおじや以外の選択肢はない。

 一杯目はそのまま食べる。全ての旨味を感じよう。二杯目以降はちょっとポン酢を垂らしたり、刻んだ万能ねぎを入れてみたり。


 そしていつも食いすぎたと苦しい腹を抱える。しかし後悔はない。なにせ鍋は最後におじやを食べるための布石なのだから。おじや最高!

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