幕間
真純陽香
あの日の事を、私は恨んでなんていない。
今はただ、別の事を考えている。そもそも幽霊の私が考えたところで、どうもしないのだけれど。
幽霊。
その存在は、私本人もよくわかっていない。どういう原理で死んだ人間がこうやって現世にいるのか、その事を理解できる人間はいないだろう。
でも構わない、それよりもっと大事な事がある。
あの日。
私は深く傷ついて、そして悲しみを背負った。ただいじめられただけなら、深く悲しんでしまえばそれで終わる話なのかもしれない。しかし私の場合は少し違う。私は人を、傷つけてしまったのだ。
勿論、向こうが私を傷つけたのだ。私がやり返した事を気に病む必要なないのかもしれない。しかし心の問題は、そう簡単に見切りをつけられるものでもない。ましてや小学生の自分である。
私の心には、どうしようもない程の罪悪感が生まれた。罪悪感、つまりは罪が生まれた。
―――――りょーたんは、私を嫌いにならないよね?
―――――りょーたんだけは、私の事をずっと見ててね。
そんな言葉をりょーたんに言った。今思えば、それは小学生にしてはやや重い言葉だったろう。
でもりょーたんは、そんな言葉に正面から向き合ってくれた。そして私に、言ってくれた。
その言葉は、私の希望に変わった。その言葉があったからこそ、今まで生きてきたといっても過言ではない。
私はこうやって死んでしまった。それに対しても、後悔はない。りょーたんの言ってくれたあの言葉が、私の胸で生きている限り。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます