幕間

真純陽香




 あの日の事を、私は恨んでなんていない。

 今はただ、別の事を考えている。そもそも幽霊の私が考えたところで、どうもしないのだけれど。

 幽霊。

 その存在は、私本人もよくわかっていない。どういう原理で死んだ人間がこうやって現世にいるのか、その事を理解できる人間はいないだろう。

 でも構わない、それよりもっと大事な事がある。

 あの日。

 私は深く傷ついて、そして悲しみを背負った。ただいじめられただけなら、深く悲しんでしまえばそれで終わる話なのかもしれない。しかし私の場合は少し違う。私は人を、傷つけてしまったのだ。

 勿論、向こうが私を傷つけたのだ。私がやり返した事を気に病む必要なないのかもしれない。しかし心の問題は、そう簡単に見切りをつけられるものでもない。ましてや小学生の自分である。

 私の心には、どうしようもない程の罪悪感が生まれた。罪悪感、つまりは罪が生まれた。

 ―――――りょーたんは、私を嫌いにならないよね?

 ―――――りょーたんだけは、私の事をずっと見ててね。

 そんな言葉をりょーたんに言った。今思えば、それは小学生にしてはやや重い言葉だったろう。

 でもりょーたんは、そんな言葉に正面から向き合ってくれた。そして私に、言ってくれた。

 その言葉は、私の希望に変わった。その言葉があったからこそ、今まで生きてきたといっても過言ではない。

 私はこうやって死んでしまった。それに対しても、後悔はない。りょーたんの言ってくれたあの言葉が、私の胸で生きている限り。




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