音の魔術師 ――唯一無二のユニーク魔術で、異世界成り上がり無双――

第159話 受勲式、開始前

　受勲式の準備とか色々やっている内に、あっという間に当日になった。

　昨日オーダーメイドで発注していた受勲式用の服が完成し、今俺はその服を着ている。

　レミアリアでの受勲式用の服装は、基本的に上下共に白で統一するらしい。まるでどっかのホストみたいだな。

　中のシャツはグレーが好ましいようで、俺はその基本に従う事にした。

　上は厚めの生地で作った白のブレザー、下はぴっちりではなく余裕がある白のチノパンだ。

　しかし、一つ違う点は、両肩にレミアリアの紋章が金色の糸で刺繍されている。

　靴はこれも白に着色された革靴だ。白で統一されている服ってのは前世でも着た事ないから、ちょっとそわそわして落ち着かないな。

　現在俺は、控え室で待機中だ。

　今、俺の傍には、レイとリリルが居てくれている。

「流石のハルも、爵位を賜るから緊張しているかい？」

「珍しくそわそわしてるね、ハル君」

　二人は珍しいものを見ているような目で、小さく微笑みながら俺に言ってきた。

　いやいや、本当に着慣れていないだけだって。

　って反論したら、二人に反論されそうだから黙ってよう。

　さてこの愛しの二人とアーリアは昨日、俺の住んでいる屋敷に引っ越してきたんだ。

　リリルはそんな多くない荷物だったのだけれど、貴族であるレイとお姫様のアーリアに関しては、一家全員で移り住むんじゃないかって位の家財道具を馬車二台分で運んできた。

　流石の俺も驚いた。

　荷物が非常に多かったので、俺は従者さんの手伝いをして、多すぎる荷物を何とか屋敷の中に入れられたんだ。

　一体、あの中にどれ程のものが入っているんだろうか……。

　そうそう、二人も今日の式典に合わせてめかし込んでいる。

　レイは髪を全部下ろして唇に桜色の口紅を塗っており、襟元にパールが散りばめられている白のロングドレスを着ていた。

　さすが貴族だけあって、きらびやかなドレスもしっかり着こなしていて美しかった。

　細く見せる為に体にフィットしたデザインのせいか、体のラインが強調されていて、とても艶かしいし、胸の谷間も強調されている。

　あぁ、眼福！！

　リリルはレイと同じ白のロングドレスなのだが、唯一違う点としては、襟元に大きく切れ込みが入っていて胸の谷間が露出している所だろう。

　大きくたわわに実った素敵な二つの果実に、自然と視線が行ってしまう。

　しかもリリルは肌が白い。あまりにも白いから、自分色に染めたくなってしまう衝動に駆られる。

　それ位危うい魅力を放っている。

　あぁ、俺、結婚したら萌え死ぬんじゃね？

「言い遅れたけど、二人共すっげぇ綺麗だよ」

「ふふ、嬉しいな。ありがとう、ハル」

「嬉しいけど、胸が開いててとっても恥ずかしいよ……」

　レイは照れ臭そうに笑い、リリルは胸元を手で隠して顔を赤くしていた。

　可愛いんですけど、二人共！！

「そういえば、アーリアちゃんは？」

　リリルが首を傾げて俺に尋ねてくる。

「ああ、アーリアは親父と兄貴の隣で一緒に並んで俺を迎えてくれるそうだ」

「陛下と王太子殿下を親父とか兄貴って呼ぶの、世界中で探してもハルだけだろうね……」

　レイとリリルが少し呆れ顔だ。

　本人達が嫌がってないから、いいじゃんかよ。

　そんな雑談をしている時、部屋の扉が開いた。

　入ってきたのは、俺と同じように白を基調にした服装に身を包んでいるニトスさんだった。

「やぁ、ハル君。なかなかいい男になっているじゃないか」

「そういうニトスさんこそ。今日は一緒によろしくな！」

「頼むから、普通に、ふつ～～～に、受勲してほしい」

「努力するよ。まぁニトスさんも俺と一緒に受勲するし、おとなしくする予定さ」

　今日の受勲式の主役は俺だけじゃない。

　部屋に入ってきたニトスさんも、この戦争の功労者として受勲する事になった。

　ニトスさんは軍師職で子爵持ちだったから、今回は伯爵になる事が決定している。

　さらに城の噂によると、軍師職のリーダーになるんじゃないかって話もある。まぁこの人は優秀だから、リーダーになってもいいと思う。

　ちなみに今回の戦争に参加して生き延びた兵士さん達全員に、ボーナス支給と交代で一ヶ月の休暇が与えられたらしい。皆、このボーナスをどういう風に使おうかと楽しそうに相談していた。

　中には昇格する兵士さんもいるようで、皆楽しそうだった。

「ニトスさんがもらう勲章は、金翼武勲章かな？」

「恐らくね。君のは特注だって陛下が張り切っていたみたいだね」

「特注……ね。まぁ俺としては武力だけでなく、音楽関係でも評価されての受勲だったら文句はないさ」

「……武力だけの受勲だったら、また蹴るつもりかい？」

「おう！」

「……恐らく、そこは大丈夫だと思う」

　本当かなぁ？

　王族って色々陰謀張り巡らせてるからさぁ、若干信用できないんだよねぇ。

　でも、貴族にならないとレイ、リリル、アーリアと結婚できないから、相当酷くない限りは断らないつもりだけどさ。

「そうそう、後君のご家族も来ていたみたいだよ。式が終わったら顔を見せるといい」

「おっ、無事着いたか！　了解、ありがとう！」

　この式をどうしても見るという事で、わざわざ父さんと母さん、そして妹のナリアが来てくれたんだ。

　もうナリアとは随分会ってないなぁ。

　何度か帰郷しようと思っていたんだけど、あまりにも忙殺されて時間を作れなかったから、家を出てから一度も帰っていなかった。

　だから二年ぶりに両親と妹に再会する事となる。

　ナリアはどんな子に成長しただろうか……。俺の事、覚えてるかなぁ。

　やべっ、ちょっと不安になってきたわ。

　ニトスさんを雑談の輪に加えて色々話をしていた所に、ついに時間がやってくる。

「失礼致します！　ニトス・レファイエ殿、ハル・ウィード殿、式典の準備が出来ましたので、私の後に続いて来てください！」

　見た事がない兵士さんが、びしっと敬礼をして声を張り上げた。

　多分新人さんかな？

「わかった。じゃあハル君、行くか」

「ああ！　じゃあレイ、リリル。また後でな」

「うん、いってらっしゃい、ハル君！」

「ばっちり決めてきなよ、ハル！」

　俺は愛しの二人に見送られながら、ニトスさんと一緒に待合室を出た。