第7話 新たな仲間

「誰だ? あんたは。俺達は今スライムに苦戦しているんだ。バカにしに来たんなら帰ってくれ」


喋り方がバカにしているようにしか聞こえないので、俺はそう言った。イケメンだし、苦労していなさそうだ。スライムに苦戦しているのは確かにダサいが、こっちは生まれて初めての戦闘なんだから仕方がない。こっちは命の危機なんだぞ!


「いやいや、バカにするなんてとんでもない。何なら手伝ってあげてもいいよ」


話し方はムカつくが、見たところ強そうだ。こいつに手伝ってもらえば俺達はスライムに殺された、という負の称号をいただかずに済むかもしれない。


「助けてくれるならお願いしたいな。俺達は戦闘初心者だから戦い方を教えてくれるとありがたい」

「いいよ、と言っても魂技で倒すだけだから見本にはならないと思うけどね。僕はシアン、よろしく」


シアンと名乗った青年はそう言うと、パチンと指を鳴らした。音が鳴った瞬間、シアンの周りに球体になった水が現れてスライムの方へ飛んでいく。


「チェックメイト!」


そう言い、もう一度指を鳴らすと水はスライムの手前で、バシャア!と物凄い勢いで流れ出す。水道に付けて使うホースのジェット噴射を更に太くした感じだ。流れが止まった頃には、スライムは水に溶けたのか見当たらなかった。スライムは水に弱いのか。俺は弱点を頭の片隅にメモしておいた。


「どう? 片付いたよ」


シアンがドヤ顔でそう言ってくる。


「すごいな、青魂技は威力が出にくいって聞いたんだけど、あんたのは違ったな」


住民から貰った魂技図鑑にはそう書いてあった。この男、話し方はムカつくが実力はあるようだ。


「よく分かったね。僕は才能があったらしくて、青魂技でもあれだけの威力が出るんだ」

「へぇ、そうなのか」

「そうだ、良ければ僕を仲間に入れてくれないかい? 可憐な少女と普通の少年だと危険だ。それに冒険初心者みたいだし、どうかな?」


さっきからホノカの方をニヤつきながらジロジロ見てるし、お前を仲間に入れる方が危険な気がするぞ。


「少し相談させてくれ」

「わかった」


俺は後ろの方にいたホノカに近寄る。


「どうする? あいつを仲間に入れるかどうか考えようぜ」

「私はいいと思うけど…。強そうだから戦力になりそうじゃん」


どうやらホノカはまだ気づいていないようだ。俺には関係ないことだし仲間に誘うか。もう一度シアンの方へ行き


「あんたを仲間に入れることになった。俺はコダマだ。よろしく、シアン!」

「ふーん、よろしく〜」


シアンは気だるそうに言った。


「私はホノカ! これからよろしく!」

「ああ、よろしく!」

シアンは輝くような笑顔でそう言った。あれ? 俺の時とリアクション全然違うぞ? やっぱりヤバイやつだったか。


「さ、さあ、日も暮れてきたし王都で宿を探しに行かないかい?」

「さんせーい! 早く行こ!」

「そ、そうだよね、早く行きたいよね、ホノカちゃん! 早く行くぞ! コダマ!」

「ま、待ってくれよ!」


シアンはさっきから何を焦っているんだろう。だが日が暮れてきたのは本当だ。夕日に照らされた草原は仄かに赤みがかっていてとても綺麗で、同時に何かを暗示しているように見えた。シアンとの出会いが俺達に何をもたらすのかは、今は誰も分からない。

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