第6話 スライム戦

「この服、サイズ合ってていいなー」


俺は住民に貰った服の裾をつまみながらそう言った。異世界に馴染むにはこれがいい、と言われ着たものだ。異世界っぽくてなかなかいい感じだ。


「そうだね〜。そういえばこれは何なの?」


ホノカはそう言って銀色の金属で縁取られた手鏡とビンのような物を見せてきた。やれやれ…。こいつ説明聞いてなかったのか。


「住民の人達が言ってたじゃないか。その手鏡は写した物の魂の残量をパーセントで表してくれたりする物だ。後は…、魂技の質と体の運動力をランク付けしてくれたはずだ。そのボトルは倒した敵の魂が液体化してちょっとずつ貯まっていく物ならしい。それを飲むことで自身の身体能力を強化できる」


俺が長い話をしたが、ホノカは


「ふーん、ま、どうでもいいや。早く行こ!」


と、超ノロい走りで王都の方へ走り去っていく。ちくしょう、俺が頑張って説明してやったのに。

まあいいや、とヤケクソになり、走り出そうとした瞬間視界の端に黄緑色の何かが見えた。


「あれはまさか…」


そっちに駆け寄ってみると黄緑色のジェル状の物体はスライムだった。メジャーなモンスターだよな。ゲームに必ずと言っていいほど出てくる。


「おーい! ホノカ! スライムだ! スライムいるぞ!」


やっぱりこの世界にもいるのか、と感動しもう少し近寄る。やっとこっちに来たホノカは


「わ〜、ホントだ。でも私こういうのあんまり好きじゃないや…」


と遠くから見ていた。何で、可愛いじゃないか。


「お〜、よしよし〜」


俺は可愛いスライムを撫で撫でしていた。するとスライムが小刻みに痙攣し始めた。


「ん、なんだ?」


するとスライムの口からブシャァ!と謎の液体が発射された。


「うわブハァ!」


俺はその液体が顔にかかってしまった。臭いがヤバイ…。いつの間に近くに来ていたのかホノカが


「うわっ…。ちょっと30分くらい近づかないでくれる?」


と言ってきた。思いっきり引かれてしまった…。


「そんなに引くなよ〜。ほらほら〜。」


嫌がらせとしてそう言いながらホノカにも近づいてみる。


「うわぁ! ちょっ、来ないで!」


計画通り…! ん? 顔の液体が動き出した…?


「動いてる動いてる! 生きてるよ、そいつ!」

「マジかよ!?」


その液体は顔から地面にべチョンと降り立つとスライムになった。


「可愛いと思って油断してたら…! 倒すしかない! ホノカ、スライムはどんなゲームでも雑魚と決まってる。俺達でも絶対勝てる!」


「分かったわ! 戦闘準備!」


あの臭いは二度と嗅ぎたくない! 俺達はカチャンと住民から貰った短剣を抜く。


「近づきたくないから支援するね!」

「おい、汚れ役を俺に押し付けるな」


何を言っても無駄そうなので前衛に出る。


「とりゃあ!」


俺の魂技は風を出すだけなので、スライムに向かって短剣を突き刺そうとするが、スライムは短剣が刺さる寸前で2つに分裂し回避する。1つに戻って踊っているのが妙にムカつく。


「ダメだ! こいつ、物理攻撃は聞かないタイプだ。ホノカ、赤魂技頼む! 俺に当てないように」


「りょーかい!」


ホノカは手から火を出すと、それをオーバースローでスライムに投げつける。


「やった! 直撃したよ!」

「殺ったか!?」


フラグを建ててしまったのがダメだったのか、一度は粉々になったスライムは高速で1点に集まり、一回り小さなスライムに変化した。


「ダメ! 威力が足りないみたい!」

「スライムに殺されるなんてダサすぎる! 絶対嫌だ!」


だがどうする…? もう打つ手がない…!


「ふふ、困っているみたいだね。可愛い初心者ちゃん」

「だ、誰だ!? その気持ち悪い喋り方の奴は!?」


俺が振り向き見た場所にいたのは、本当に振れるのか分からないような大剣を背負った、青い髪に蒼い眼の青年だった。

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