第3話 異世界人との遭遇
「ていうか、ここどこなんだ? 全然頭の整理できてないんだけど…」
俺は展開についていけずに仄華に聞く。
「知らないわよ。私だって初めて来たんだから」
お前…、いつでも冷静だな…。もっと慌てふためいたりしないのか…。仄華が使えないなら、この場所をよく知っている人に聞くしかない。俺は周りを良く見る。すると遠くの方に緑のテントを見つけたので仄華に
「おい、あそこにあそこにテントあるから行ってみないか?」
と言った。すると仄華は
「仕方ないわね。行く宛が無いからついて行ってあげる」
と言ってきた。いつもイラッとした言い方だな…。
「なんでお前はいつもそんなに上から目線なんだよ…」
俺は不満を呟きテントへダッシュで向かう。仄華へのせめてもの嫌がらせだ。走って1分くらいでテントについた。テントは柵に囲まれていて、周りを1周してみると、木で作られた門があったのでそこから入ることにする。
「お邪魔しまーす」
と言ってから俺は絶望した。ここは異世界だ。俺の言葉は通じないだろう…。言葉が通じなかったらどうすればいいんだ…。だが俺の考えとは裏腹に
「何だ、お前は」
と、警戒したような声が聞こえ、テントから緑の狩人が着ていそうな服を着たゴツい人が出てきた。絶望したのがバカみたいに喋りかけてきている。まあ言葉が通じて損はないだろう。そう考えていると後ろからも声が聞こえてくる。
「ちょっと! おいてかないでよ! 迷ったらどうするの!?」
ザマァ、と心の中で笑いながら
「あ、仄華か。ちわっす。やっと追いついたか」
と煽っておいた。それよりも俺は、ここの住民の話が聞きたいんだが…。
「あ、ごめんなさい。ちょっとこいつがうるさくて。俺はコダマです。
寝ていたら突然ここに来てしまっていて…」
俺は会話の中でちゃんと自分の名前を異世界風にアレンジしておいた。これは異世界系ライトノベルでもよくあることだろう。俺は小声で仄華にも
「お前もホノカですって言っとけ」
と言っておいた。
「わ、私はホノカです…。どうぞ…、よろし…くです…」
何でこんなに詰まっているんだ。まさかこいつ…。俺達の自己紹介が終わった後、住民は
「そうかい、私はしがない狩人崩れだよ。よろしく。どうだ、飲み物でも飲んでいくか?」
怖い人だったらどうしよう、という心配は無用だったようだ。喜んでもらっておこう。
「お願いしますー」
テントの中は意外と広かった。部屋へ繋がる通路を歩いているとき、ホノカに
「なんで喋らないんだよ? ちょっと気まずいんだが」
と聞くとこんな返事が返ってきた。
「知らない人と喋るの苦手なのよ…」
俺は確信した。この女、使えない、と。
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