精霊界での8日目。
- チュン チュン -
朝になった。鳥のさえずり。目を開けると、そこは宿ではなかった。
そうか、今は戦いに出ているんだったな。戦いに出ているような気がしない。
外では、鳥が鳴いていて平和な証拠じゃないだろうか…。
眠い目をこすりながら起きると、レイもサシャもミリアも寝ている。
ノイルの姿だけが見当たらない。朝のトレーニングとかやってそうだな。
レイ 「あ、おはよう…。」
レイも眠い目をこすりながら、私に挨拶をした。
私 「おはよう。 ノイルが居ない…。」
レイ 「ノイルって?」
私 「いや、ほら…。 料理担当のノイル。」
レイ 「あ~、散歩にでも行ってるのかな? 一人だけ早く寝ていたし…。」
私 「あぁ~、可能性はあるな。」
レイと話をしていたら、サシャもミリアも目覚めてしまった。
私 「悪い。起こしてしまったか?」
サシャ 「おはよ~、うぅん、大丈夫~。」
ミリア 「お、おはようですっ! 目が覚めただけですっ!」
レイ 「おはよう☆」
私 「おはよう。」
皆、眠そうだ。私も眠い。ノイルは、元気だな。
ミリア 「あっ、あわわっ! そろそろ、時間がきれるので建物が消えます!」
私 「えぇ!? そんな、起きてすぐの設定!?」
ミリア 「ご、ごめんなさいっ! 設定ミスです。
今夜は、もっと長く設定します!」
ミリアは、焦って答えた。ミリアが言ったように、建物は消えてしまった。
いっきに消えるのではなく、徐々に消えていく。
それほど、綺麗な建物ではなかったがその風景は幻想的だ。
自然に溶け込んでいくように、スーっと消えていく。
私達は、建物の中に居たのだが、建物が消えて外の風景が映ると同時に、そこにはノイルの姿があった。朝早く、食材をとりに行って料理をしていたらしい。
全員分の朝食が用意されている。が、一つだけどうも悪意を感じる席がある。
その席だけ、食材が適当すぎる。
皆でいっせいに、朝の挨拶をしたら、ノイルは無愛想に挨拶を返した。
レイ 「朝食ですか? でも、材料は何処から…?」
ノイル 「朝早く起きて、そこの森の中でとってきた。
肉が欲しかったが、流石に森の奥に一人で入るには抵抗がある。
肉料理は作れなかったが、軽い朝食くらいにはなるだろう?」
レイ 「ありがとうございます☆」
サシャ 「サラダもある~。 低カロリーですね~。」
ミリア 「でっ、でも…。明らかにこの席だけ、適当な料理ですよね…。
誰が食べるのですか?」
ミリアが良い質問をした。私も気になる。
まさか、自分が食べるものだけ適当に作ってしまったのか?
すると、ノイルが嫌な視線を送ってきた。
ノイル 「お前、人間界で育ったそうじゃないか?
そして、精霊界に来て日が浅い。
どうせ、何がどう言う食材かも分からずに食べているだけだろ?
そんな奴にまともな料理を食わせる訳にはいかない。
その料理は、サリアの分だ。」
流石は、料理人を目指しているだけの事はある。
確かに、私は何がどういう食材なのか全く知らない。
知らないけど、ちょっと心が傷つく。
レイ 「確かに精霊界に来て日は浅いけど、それはちょっと酷くないですか?」
ノイル 「酷い? サリアの心、全く読めないんだぜ?
ギールの術だとは聞いているが、そ こも酷いだろ?」
レイ 「精霊に悪影響が出るから、そうしているだけです。」
ノイル 「何を考えているか分からない。サリアこそ、敵かもしれないぞ?」
レイ 「そんな…。」
私 「まぁ、良い。 食べられない訳じゃないし、良いさ。」
まぁ、適当な料理でも作ってくれただけマシだ。
全く作ってくれなかったら、それはちょっと酷い話だが、適当でも作ってくれている事に感謝する。ノイルの心も少し読めてきた気がする。私に対して、良いイメージを全く持っていない。
ノイル 「皆、食えよ。 さっさと食べて行くぞ。早く終わらせて、解散しようぜ。
俺は好きで 来たわけではないからな。」
皆、うなずいて朝食を食べ始めた。私の料理も適当ではあるものの味は不味くはない。
美味しいくらいだ。
私 「ノイル、適当だけど美味しいが?」
ノイル 「当たり前だろ? まずいものは提供しないさ。」
私 「こういう場合は、不味い物を出すのが普通じゃないか?」
ノイル 「は? 人間界では、それが普通なのか?
それが本当なら、その料理人は、料理 人としての素質はないな。」
私 「適当にしても、味は美味しい物を出すのか。
精霊は、本当に優しいのだな…。」
ノイル 「優しいとかそう言うのじゃねぇよ。 普通だ。」
会話してもやっぱり無愛想。ちょっと、ムカつくし傷つく。
これは、私の心が弱いからなのだろうな…。
食事を済ませると、ノイルが用意した食器も敷物も消えていった。
ノイルも皆も、なんだかんだ言って私よりは思いの力は強いのだろう。
そして、自分達の得意とする術を持っている。
ここでは皆が、私の先輩だな。食事を終わらせ、私達はまた進み始めた。
ここから先は、精霊も徐々に少なくなり山の中に入っていくらしい。
ギールの情報では、そうなっている。
そもそも、ギールの情報がなければ、本体にもたどりつけない。
ギールの精霊選択は、実はミスでも何でもなく、皆で力を合わせれば乗り越えられるメンバーなのかもしれない。それにしても、精霊の住んでいる場所と違い全く景色が違う。
精霊界でないと言われたら、信じてしまいそうな景色だ。
山に入っていくばずつ、木々で空の光りがさえぎられ薄暗くなってくる。
- ギャーッ -
この辺りで暮らしている生物の声だろうか?
なんだか、恐ろしい生物でも出てきそうな感じがする。
ノイル 「悪いが、道中で食材になりそうなものがあれば捕らえる。
食材をとる事に関しては、誰も何も言うなよ?」
ノイルが真剣に話す。皆、うなずくしかなかった。ノイルの心の中が少し読めた。
衝撃的な捕獲をする事もあるみたいだ。
なるほど、その捕らえ方について口出しをするなと言う事か…。
そもそも、こんな山の中に美味しい食材などあるのだろうか?
今朝の朝食も美味しかったし、そこはプロの腕の見せ所なのか?
ノイル 「お前ら、そこで動かずに待っていろ。 獲物がいる。」
そう言うと、ノイルは一人、何処かへ行ってしまった。
ミリア 「こっ…、こんな所に食材があるのでしょうか?」
私 「え? そこですか? こんな所に食材は無いのか?」
ミリア 「わっ、分かりません!」
サシャ 「私は、美味しければそれで良いけどねぇ~。」
サシャって実は、食材が分からないまま食べていそう。
でも、ノイルが普通に食べさせるくらいだから、食材の価値とかは分かっているんだろうなぁ。私は、価値も何も分からないけど…。
むしろ、今、ノイルが捕まえに行った食材の価値も分からないかもしれない。
まぁ、私にも適当とは言え作ってくれているから良いか。それに、美味しいし…。
ノイル 「ちょ…、助けてくれ~!!!」
ノイルの声がした。
動かないように指示をしておきながら、獲物を捕まえるのに失敗して襲われているらしい。私は、レイ達に待っているように指示してノイルの声が聞こえた方に走った。
私の目に、何かの生物に襲われているノイルが映った。
ノイル 「サリア、助けてくれ…。」
私 「食材に襲われているのか…。」
ノイル 「これは、食材じゃない! 精霊界の生物でもねぇよ! 何だこれ!」
どうやら、ノイルを襲っている生物は精霊界の生物ではないらしい。
仕方がないので助ける。私は思いの力で銃を作り出し、謎の生物に銃口を向けた。
ノイル 「おぃ! それ、俺を狙っているのか?
どさくさに紛れて、俺を殺す気か!?
分かっていたさ、お前こそが悪魔のような存在だ!」
私は、ノイルの発言に傷つきながらも弾を放った。
ノイル 「精霊同士は争わない。
お前こそ、悪魔だ! お前は、精霊ではない!」
私 「・・・・・。」
私が放った弾は、ノイルの直前で分散し、ノイルの背後にいる生物に命中した。
謎の生物は、粉々に砕け散った。
ノイルの全身は、謎の生物の血か何かによってべとべとになっている。
全身、緑色になったノイル。
違和感が半端ない。
ノイル 「俺を狙ったわけではないのか?」
私 「何故、狙わなければならない?」
ノイル 「・・・・・。」
私 「精霊同士は争わないのだろ? ギールから聞いている。」
ノイル 「酷い事を言って、すまなかった…。」
ノイルは、小声でつぶやいた。
私 「ほら、皆の所に戻るぞ?」
ノイル 「お前に助けられるとはな…。」
私は、ノイルを連れてレイ達のもとへ戻った。
レイ 「うあぁ…。」
ミリア 「なっ、何があったのですか!?」
皆、驚いている。
まぁ、驚かないわけがない、べとべとな緑色の何かがノイルの全身にまとわりついているのだから…。
私 「サシャの術で、元通りに出来るんだろ?」
サシャ 「はい~。 出発時の状態に戻しま~す。 あぁ、でも…。
昨日、私の料理、誰にでも作れるって言ってましたよね~?
どうしよっかなぁ~…。」
サシャ、実は根に持っていたのか…。
昨日は、華麗にスルーしていたのに実は結構、傷ついていたパターンか…。
しかも、ゆっくり言っている分、普通に言われるより怖い。(汗)
ノイル 「根に持っていたのか?」
サシャ 「冗談ですよ~。 はい、これで元通りですぅ~。」
ノイル 「あ、ありがとう…。」
ノイルは、小声で言った。それより、昼が近いのに食材が無い。
おまけに、水筒の中の飲み物も無くなりつつある。
私 「水筒の中が残り少ない。」
ノイル 「それなら、綺麗な水を探せばいい。 綺麗な水には魚も住んでいる。
ちょうど良い。食材も手に入るからな。」
私 「こんな所に綺麗な水が出ている所があるのか?」
ノイル 「それは、歩きながら探せば良いだろ。
俺も、この辺りは初めて来たんだ。
精霊界に住んでいるからと言って全体を知っているわけではない。」
ノイルを助けた事で、ノイルの中で私に対するイメージが変わったのだろうか?
敵意が消えている。ほんの些細な事で、関係が深まるのか?
ノイル 「ところで、人間界って言うのはどういう世界なんだ?」
私 「聞かない方が良い。」
ノイル 「何だよそれ。 まぁ、心を読めない術をギールがかけるくらいだ。
俺が思うに、酷い世界なんだろ?」
私 「全ての人間が悪いとは言わないが、酷い人間も多い。」
そう、精霊は人間界で育った私の事が気になるだろう。
心が読めないのなら尚更、気になって仕方がないかもしれない。
だが、私は人間界での話はなるべく精霊にはしたくはない。少なくとも、今は…。
いつか、話せる時がきたら話しても良いだろうとは思う。
ノイル 「そう言えば、レイはサリアを人間界から連れてきたんだろ?
どんな世界だったんだ?」
レイ 「それは、サリアが言わないのなら私も言いません。でも、命がけで
連れてきたと言うことだけは言っておきます。」
ノイル 「そう言えば、サリアの武器。 凄かったな…。」
レイ 「人間界では、普通ですよ?」
ノイル 「そんな…。」
ノイルは、驚いていた。まぁ、無理もないだろう。銃口を向けた時のあの焦りよう。
どのような武器か分からないなりにも、自分が狙われているという認識はあったのだから…。私も、弾を分散させて背後の的に命中させるなんて訓練はしていない。
今、思えば失敗しなくて良かった。思いの力って凄いな。
サシャ 「そう言えば、サリアの術ってまだ見てな~い。」
ミリア 「ほんの少しだけ、気になります。」
サシャとミリアは、私の術が気になるらしい。
嫌でも本体と戦う時は、見ることになると思うのに…。
私 「敵が現れたら、嫌でも見てしまうさ…。」
サシャ 「えぇ~、今、見てみたい~。」
ミリア 「わ、私も気になります! 人間界で育った精霊の武器…。」
レイ 「見せてあげたら?」
レイが、軽々しく見せてあげたらどうかと言ってきた。
あまり、敵と戦う場でもないのに武器を作る事に賛成は出来ないが、仕方がないので作ってみせる事にする。
私 「一度だけだぞ?
戦いの場でも無いのに、こんな物騒な物は作りたくないからな。」
そう言って、私は小型の銃を作った。
ミリア 「おぉ~!! 見た事ない武器だぁ!」
サシャ 「珍しい形の武器ですね~。 どうやって使うんですか?」
私 「それは、戦う時までのお楽しみだな。
むやみに、撃って木々を傷つけるのもなんだ し…。」
ノイル 「なるほど、お前は優しい奴なんだな。 それなのに、心を読まれては
いけないって、矛盾にしか思えねぇ…。」
私が優しい? そんな事、自分では思った事はない。
私は、ただただ逃げている弱虫だと思うが、精霊にはそんな風に見えるのだろうか?
- うぉぉぉぉ~ -
突然、変な生物が不気味な声をあげて姿を現した。
高さは2mくらい、横幅もかなりある茶色の生物。
目は、赤色に光っている。攻撃態勢か…!?
私 「で? これも、精霊界の生物じゃないのか?」
サシャ 「見たことないですぅ~。」
ミリア 「あんなの知らない!」
レイ 「敵?」
ノイル 「あれは、精霊界の生物じゃねぇよ!
これでも食材の研究で生物に関しては勉強している。
こんな生物、精霊界の生物じゃねぇよ!」
私 「ちょうど良い。 私の武器は、こういう武器だ。」
謎の生物が大きい分、私も大きい銃を作り出した。
そして、謎の生物に狙いを定め弾を撃った。
弾は謎の生物を貫通し、謎の生物は消えていった。
まるで、何事も無かったかのように…。
ノイル 「消えた? そんな事あるか? 何も無かったみたいじゃないか?」
ノイルが驚くのも無理は無い。私も含め、全員が驚いた。
ミリア 「ちょっと、怖くなってきました…。」
サシャ 「今日の夜は、危険かもね~。」
サシャが、ゆっくりと怖い事をさらりと言う。確かに、今夜は大変な夜になるかもしれない。
本体が近いと言う事だろう。本体を護るために、出てきているのか?
しばらく歩いていると、水の音が聞こえてきた。
ミリア 「水の音が聞こえます。 水分を補給できるかも。」
ノイル 「飲める水なら良いけどな。」
ノイルの発言は厳しいが、確かに水の音はしているが飲める水とは限らない。
水の音がする方に向かっていくと、そこだけ何故か神秘的な光景が広がっていた。
湖とでも言っておこうか?
動物達が水を飲んでいる。
レイ 「こんな所に、こんな綺麗な景色があったなんて…。」
サシャ 「なんだか、落ち着きます~。」
ミリア 「水が透明で綺麗! 魚も泳いでるっ!」
ノイル 「動物達が飲める水。それに、綺麗な水。 魚も泳いでいる。
ここの水は大丈夫だ。飲める。皆、水筒に水を補給しとけ…。
出発前には、水を飲んでから出発だ。
俺は、昼飯の魚でもとってくる。」
そう言うと、ノイルはまた一人で歩いていってしまった。
それにしても、歩きっぱなしと言うのも疲れるな。
束の間の休憩になるかもしれないな。ここは…。
私は、草むらの上に横になった。
この湖の上だけ、空が広がっていて温かい日差しがさしこんできている。
幻想的だ。綺麗な鳥も飛んでいる。
この湖から少しはずれたら、薄暗い山の中だと言うのに…。
何か、別の精霊にでも護られている感じがする。
ノイル 「大漁大漁♪ いっぱい捕れたぞ。」
ノイルの機嫌が凄く良い。ノイルは釣ってきた魚で、刺身や焼き魚を作ってくれた。
ノイル 「今朝は悪かったな。今後の料理は、サリアの分も皆と同じだからな。
安心しろ。」
あー、でも…。この話し方には慣れないな。言葉にトゲがあって辛い。
まぁ、皆と同じ食事が食べられるようになったと言う事は、同レベルとして扱ってくれているって事だな。そう言う事にしておこう。その後、皆で魚を食べて、水分を補給し、水筒もいっぱいで再び歩き始めた。
私 「それにしても、暗いな。」
ミリア 「流石に明かりをつけるのは、疲れます。」
ミリアも慣れてきたのか、普通に話せるようになってきた。
時間って、残酷でありつつ、良い部分も秘めているんだな。
明かりをつける思いって、ずーっと思い続けないといけないから、出来ないなぁ。
私も明かりくらいは、出せるのだろうか?
気になるが、あえてここでは明かりを出そうとはしない私が居る。
なんか、明かりを出せたら頼られそうな気がする。(汗)
- ガルルルル -
また、何かの生物の声がし始めた。今度は、犬みたいな感じの声。
でも、姿は見えない。声からして、何匹か居るような感じがする。
レイ 「あぁ、この鳴き声は、ガロルね。」
ノイル 「あぁ、山奥に生息している生物だな。
美味しくないから食材にもならない上に、精霊 を
襲う事もあると言う。」
ミリア 「あ、あれ…。」
サシャ 「私達、狙われますね~。」
ミリアの指さす方向には、本当に犬に似た生物が4~5匹居て、こちらに近づいてきている。ただし、これはガロルと言う生物で精霊界に存在する生き物。
ならば、下手に攻撃をする訳にもいかない。ここは、皆に任せよう。
レイ 「大丈夫です。全員にシールドを張りますので、このまま進みましょう。
すでに、シールドは張っています。」
なるほど、レイのシールドはこう言う時にも使えるのか…。
犬みたいな生物は襲って来ようとはするが、シールドから中には入れず、弾き返されている。
ミリア 「シールドにこんな使い道があったなんて…。」
サシャ 「驚きの事実ですぅ~。」
なんだろう? 緊張感のある場でも、サシャの話し方のせいで緊張感が和らぐ。
これも、ギールの狙いだったのだろうか…?
レイ 「今日は、何処まで進む事になっているんですか?」
私 「あぁ、今日はもう少し先だな。 もう少し進んだら大きな木があって
そこで、泊まるようになっているみたいだ。」
レイ 「歩き疲れました。」
サシャ 「私も運動不足かなぁ。 かなり疲れてきた~。」
ミリア 「一生分、歩いたような気持ちになる。」
ノイル 「悪いが、俺は泊まる場所に着いたら食材をとりに行くからな。
ろくな獲物が居ない。」
どうやら、ノイルは食材をとりに行くらしい。
私 「また、襲われたらどうする?」
ノイル 「明日は、悪魔のような存在の本体と戦う事になるんだろ?
今夜の晩飯と明日の朝飯、両方分の食材を用意しないといけない。」
私 「一緒に行こうか?」
ノイル 「良い食材を手に入れるには、一人での行動が良い。」
私 「分かった。 無理はするなよ。」
ノイル 「サリアも明日の戦い、無理するんじゃねぇぞ!
全員で帰らないと意味がないからな?」
私 「あぁ、分かってる。」
そんな話をしながら歩いていると、泊まる予定の大きな木までたどり着いた。立派な木。
何百年? いや、数千年の月日を生きてきたに違いない。
精霊界の歴史を背負っていると思えるほどの大きな木。
何か特別な力のような物を感じる。
私 「今日は、ここで泊まる事になっている。」
ミリア 「疲れたから宿泊施設を早速、建てます!!!」
そう言うと、ミリアは宿泊施設をすぐに作り出した。
おまけに、今回は時間を長く設定したと少し自慢げに言っている。
同じ失敗はしないって感じだ。
ノイル 「じゃあ俺は、食材をとってくるから、お前らはゆっくりしてな!」
そう言うと、ノイルは暗闇に消えていった。
サシャ 「それじゃあ、皆さんは並んでくださ~い。 清潔にする時間です~。」
そう言うと、サシャはノイルを除く全員に、出発時と同じ状態にした。
頭皮が痒くならないのは、サシャのおかげだろう。
それに、服も全然、臭くはない。私はすぐに横になってしまった。
結構、疲れている。
ミリア 「それでは、ノイルが戻ってくるまでカードゲームしましょう♪」
私 「ちょ…、疲れたから食後で頼む!」
レイ 「私も食後までは、ゆっくりしていたいかも…。」
サシャ 「食後に賛成~…。」
ミリア 「じゃあ食後! 絶対だよ!?」
ミリアは、楽しむ事の天才だな。
今日は色々とあったのに、何事もなかったかのように楽しんでいる。
しかし、ノイルは食材をとってこられるのだろうか?
そう言えば当初、ファルルで連絡先交換とかするのかと思っていたけど、そう言うものではなかったな。それより皆、ファルルを持ってきていないのか?誰も使っていないけど…。
私 「なぁ、レイ。 ファルルは持ってきているのか?」
レイ 「勿論、持ってきていますよ。 使ってないけど…。」
レイは、ファルルを見せた。一応、持ってきてはいるのか…。
皆も実は、持っているだけで使っていないだけか。
人間界なら、携帯片手に食事とか普通だしな。
その点、精霊界の精霊達は、食事は食事で携帯も触っていない。
- バタン -
建物の外で音がした。また、謎の生物でも居るのだろうか?
- コンコン -
扉をノックする音。 ミリアが扉を開けると、そこにはノイルが居た。
ノイル 「良い食材を捕獲してきたぞ。木の実も色々、とってきた。
ただ、外で作るのは嫌だから建物の中で料理する。 良いな?」
誰も反対しなかった。むしろ、外で料理をしていたら危険だ。ノイルはすぐに料理を始めた。やはり、見た事の無い動物のようなものが捕獲されている。
今夜は、肉料理と木の実のデザートでも出るのだろうか…。
ノイルの心の声がこれなら、肉料理と木の実のデザートだ。
なんか、何が出るのか分かるのは楽しみがないな。
サシャ 「うー…。」
私 「サシャ、どうした?」
サシャ 「ノイルを清潔にしたい。 服がボロボロ…。」
確かに、服は泥だらけだ。動物を捕獲するのに汚れたのだろう。
木の実をとるのに、あんなには汚れないだろう。
私は、サシャに気になるなら今、出発時の状態に戻してあげたらどうか提案した。
すると、サシャはノイルのもとに近づいて少し話をしたあと、ノイルを出発時の状態に戻した。
サシャ 「はぁ…。」
サシャが大きなため息をついて戻って来た。
話を聞くと、ノイルが料理に集中している時は近づくなと言ったらしい。
本当に無愛想で言葉にトゲがあるなぁ。私は、気にする事は無いとサシャを励ました。
しばらくして、ノイルが全員分の料理を持ってきた。
ノイル 「さぁ、明日の戦いに備えて食べるが良い。
まさか、こんな所で高級食材の肉が手に入るとは思わなかった。
皆、味わって食えよ。」
私 「ノイル、もっと優しい言葉遣いは出来ないのか?」
ノイル 「俺は俺だ。この言葉遣いを変える気はない。」
私 「そうか…。」
それにしても良い香りがする。これが、高級食材の肉なのか…。
食べてみると、柔らかく美味しい。鶏肉に近い感じがする。
レイ 「美味しい。」
ミリア 「食べた事の無いお肉です☆」
サシャ 「やわらか~い♪」
皆、私と同じ感想らしい。
ノイル 「で? サリアは、どうなんだ? 美味しいのか?」
私 「ぇ?」
ノイル 「お前以外は、心が読めるから美味しいのが伝わってくるが
お前は心が読めない分、言葉で伝えてもらわないと分からない。」
私 「柔らかくて、かなり美味しい。
でも、正直言うと、精霊界の食材はどれも美味しい。」
ノイル 「お前の心は読めないけど、お前の発言そのまま心だよな。
そのうちお前にも、精霊界の食材の中でもこれは他のより
美味しいって分かる時がくるさ。」
私 「そう言うものなのか?」
ノイル 「知らねぇ~よ!人間界に居た精霊なんてお前以外、知らないからな。
これから先、精霊界で過ごしていて同じ感想だったら俺が許さない。」
料理人として許さないのか、個人的な思いで許さないのか分からない。
まぁ、確かにずっと同じ感想じゃダメだろうな。ちゃんと、食材も覚えよう。
そして、デザートはやっぱり、木の実だった。どれも、甘酸っぱくて美味しかった。
やはり、精霊界の食材に美味しくないものは無さそうだ。
そして、食事が終わるとすぐにノイルは横になった。
ノイル 「俺は今日もゲームはしないからな。 もう寝るぞ。」
自由気ままなノイル。でも、料理の腕は確かだ。
立派な料理人になれる事を陰ながら応援してやろう。
ミリア 「よし!食事も終わった事だし、カードゲームですっ!」
レイ 「今日は、何のゲーム? 簡単なのが良い。」
サシャ 「私も~、疲れているから簡単なのが良い~。」
私 「昨日のは、たまたまルールが覚えられたけど簡単なのが良い。」
ミリア 「えー、皆、頭悪いの?」
あんなに恥ずかしがり屋だったミリアが、大胆にも酷い発言をした。
まぁ、新密度が上がっている事には間違いないけど、精霊って意外と毒舌なのか?
ノイルもそれぽいし…。でも、レイはそんなに毒舌じゃないなぁ。サシャも毒舌ではなさそう。
そして、ミリアがしたいゲームと言うのが、人間界で言うポーカーだった。
ただ、ポーカーはすぐに皆、飽きた。
精霊界でも賭け事を混ぜてやるらしく、何も賭ける物が無い状態では、すぐに飽きても不思議ではない。そして、次にミリアがしたいと言ったゲームは、人間界で言うババ抜きだった。そう言うところを見ていると、人間も精霊も同じだなって思えてきた。人間同士は争うけど、精霊同士は争わない。ただ、それだけの事なのかもしれないな。
そして、一番早く寝落ちしたのは言い出した本人のミリアだった。
そして、次に寝落ちしたのはレイだった。
そして、最後に起きているのは、私とサシャになった。サシャも眠そうだ。
私 「サシャ、眠いなら寝ても良いぞ?」
サシャ 「うー、今夜は私が最後まで起きているのです~。」
私 「え? もしかして、ゲームで勝つより起きていたいのか?」
サシャ 「なんか、最後に寝るとお姉さんっぽぃから~。」
私 「え? そんな理由?」
サシャ 「そう…、だよ~…。」
サシャの最後まで起きていると言う野望は崩れ去った。
言葉を発しながら寝るとは、色々な意味ですごい。
さて、最後に残った私も今日は寝るとしよう。
明日の戦いに備えて…。精霊界での、8日目の夜…。
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